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  • Jun 30, 2017
消せない最悪のタトゥーを“隠す”彫り師。足を洗うギャング「過去の烙印に重ねる新たな絵」
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俺の店に、顔にギャングタトゥーの入った男が来て。そのタトゥーを隠したいから重ねるようにして他のタトゥーを入れてくれないかって聞いてきたんだ

タトゥーショップを経営しているある彫り師のもとに訪れた依頼。必死な客に、カバーしても大きなタトゥーが顔に残ってあまりいい見てくれじゃなくなってしまうだろう、と正直に告げると、「男は悲しく傷ついた目をしてね。こっちの心が痛くなった。何かできるんじゃないか、そう思ったんだ」。この一件があるプロジェクトを生む。

消し去りたいタトゥー、無料で“カバー”

 メリーランド州ボルチモア。全米でも屈指の治安の悪さで知られ、キッズを悪道に導かないためのヨガプログラムがあるなど、ギャングや貧困層たちがひしめく街だ。そこで20年以上、街のみんなにインクを入れつづけてきた古株の彫り師、デイヴ・カットリップ(Dave Cutlip)がはじめたのが、「過去に入れた“お困りのタトゥー”、無料でカバーアップするぜ」。

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写真の彫り師がデイヴ

「俺がすることといったら、もっぱら“Eat, Drink, Sleep, Tattoo(食って飲んで寝て、そして彫る)”だ」と笑うデイヴは、半年前にプロジェクト「リデンプション・インク(Redemption Ink)」を立ち上げた。これは、過去のタトゥーの上から新しいタトゥーを彫るというもので、対象は、ギャング時代に入れた地元のチーム名やシンボルタトゥー、また白人至上主義のフレーズなど差別的な意味合いのタトゥーを持つ者。出所して足を洗おうとする者たちだ。

「消したいタトゥーをタダでカバーアップするぜ」とネットに告知したところ、情報はすぐに拡散。地元テレビをはじめ多くのメディアに取りあげられ州外から飛行機で来る者も。現在は、10センチのバインダーいっぱいに予約が詰まっているという。

差別シンボルが鮮やかな薔薇に生まれ変わり

 プロジェクトスタートからこれまでに23人のカバーアップをしてきたデイブ。一週間に一人が目標。ちなみに一回の施術にはだいたい3、4時間かかり、一番長くかかったのは11時間だそうだ。

 カバーアップの例をあげてみると、“white pride(ホワイト・プライド)”や南部連合旗(南北戦争時からの米国南部州の旗で白人至上主義者の多くがシンボルとして使用する)などゴリゴリの白人至上主義のタトゥーが腕に入った青年には、バラの花やハート型、そして鷹(タカ)のタトゥーを重ねた。
 メリーランドの白人刑務所ギャング「Dead Man Incorporated(デッド・マン・インコーポレーテッド)」の頭文字「DMI」を隠すようにしてその上から黒ヒョウを彫り、蓮の花を鮮やかに描いた。チベットの髑髏(ドクロ)なんてコアな申し出もあったとか。

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 デザインは、デイヴがお客の希望も聞いて一緒にアイデアを練る。「いくらカバーアップだからって好きじゃないデザインを入れるなんて、お互い一番願ってもいないことだろう?」。たとえば、鷹のタトゥーを入れた青年は「父親が鷹が好きだから」、蓮の花は「新しい人生や新しいスタート」を意味し、チベットの髑髏(ドクロ)は「死は確かなものであるからこそ、人生は前に進まなければならない」とのメッセージがある。消したいタトゥーを隠せればいい、というフィジカルのみの単純な問題でない。新しく入れ直したタトゥーが、心を入れ替えたその人の人生をこの先どうポジティブに導くか、が最も考慮すべきことだ。

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入れるより難しい、タトゥーの“カバー”

「昔に誤ちを犯した人にだって、子どもができたり、ガールフレンドができたり。新しい仕事を探したり。新しい人生を歩もうとしているんだ。でも“white power”が腕に刻まれてあるだけで、どこも雇ってはくれない。セブンイレブンだってマクドナルドだって門前払いだ

 過去の烙印のせいで仕事が見つからない。人とトラブルになる。体に刻まれたたった10文字、たかが3センチが乗り越えられない壁になってはばかる。ギャングに忠誠を誓うために入れたタトゥーは、ギャング時代こそ自分のアイデンティティや力、特権の象徴だったかもしれないが、違う人生を考えたときには、重たすぎる足枷でしかない。さらにギャングの場合、カバーアップを実行することは足を洗う、翻ることを意味する。血の結束で成り立つ彼らがカバータトゥーを施すことは「身を危険に晒すことと同じ」だそうで、お客の安全を守るためデイヴはリクエストがあれば秘密厳守を徹底する。タトゥーを入れることよりもタトゥーをカバーすることの方が、断然大きなステップであって精神的にも強くならなければならない

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『こいつはレイシスト(人種差別主義者)だ』!と安易に叫ぶような世の中になっただろ。差別主義者だったヤツに第二のチャンス? 新しいタトゥーを入れる価値なんてないと批判だって受ける。でもさ俺は、一週間に一人でもチャンスを与えて、もうタトゥー彫れないぜってなるまで続けたい

タトゥー黄金期。除去せず、あえて被せるということ

 数十年前に比べて、社会的にも文化的にもタトゥーはより一般的に受け入れられ、アイデンティティをカジュアルに表現するツールとなった。タトゥーに対していつになくオープンな時代、ギャングやヘイト、犯罪といったネガティブなアイデンティティを除去するのではなく、再生しようとするポジティブなアイデンティティで“隠す”。昔の過ちを今の決意で消す、つまり生まれ変わった自分のアイデンティティを美しいタトゥーで自己表現、他者に誇示できるということだ。

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 デイヴがカバータトゥーを施したある青年と街でばったり会うと、「『カバータトゥのおかげで、やっと職が見つかった。俺の人生を変えてくれた。あんたがしてくれたことがどんなに大きな意味があるか、言葉では表しきれない』ってさ、涙流して言ったんだ

 最初に目に入る情報だから、外見でまずその人を判断をする。そして、それによって人は一喜一憂する。外からの評価がメンタリティに影響するのはわかりきったことで、それは特に、一度でも道を踏み外した者なら痛いほどわかっている。だから誤ちを忘れないように刻み直したタトゥーは、新たな決心として精神的な支柱になるのだ。

Redemption Ink

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All images via Redemption Ink
Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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