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  • Mar 9, 2016
21世紀のパンクスは、ゴミに中指を突き立てる
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街の通りを清掃する彼らの姿を、あなたは思わず二度見るだろう。なぜならそれは、エキセントリックで厳つい風体をした、とってもパンキーなお兄さんたちだから。

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パンクスたちの定例集会

 奇抜な髪型にバンドTシャツ、スタッズ付きの革ジャン、タトゥー、ピアス、バギーショーツにコンバットブーツ。パンクロックやその思想、それに派生するファッションなどのサブカルチャー愛好家たちのことを指すパンクス。

 世界中にあるパンクスコミュニティーだが、ペンシルベニア州ヨークのパンクスたちの週1回「定例集会」はちょっと変わっている。パンクライブに連れ立って行くでもなく、マリファナを吸いに仲間の家でたむろするでもない。集会の目的は、「ゴミ拾い」。ゴム手袋をはめ、腰を折り曲げながらひたすら拾う。
 彼らは「Punks for Positivity」、自分たちの街の美化を目指して“清掃活動”をする、前向きで意欲的な若きパンクスたちだ。

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左からダスティン、スティーブ

「12歳の時、叔父を訪ねにロサンゼルスに行ったんだ。初めてパンクロッカーたちを見た。モヒカン頭や、七色に染め上げたつんつんヘアの兄ちゃんたちだった」と、人生で初めてパンクスを見たときのことを回想するのは、同団体創設者の中心人物、スティーブ・クリネディンストだ。
「14歳のときに友だちに連れられて、生まれて初めてパンクバンドのコンサートへ。で、気づいたらパンクスの世界にいたんだ」という筋金入りのパンクス。

空軍帰りの男、右手に箒、左手にちりとり

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 ペンシルベニア州南部に位置する街、ヨーク。「白バラの市(The White Rose City)」の別名(15世紀のイングランドで起こった薔薇戦争に由来)も冠するこの都市は、米国独立戦争や南北戦争にも名を残す歴史ある街である一方、銃犯罪や麻薬問題、貧困なども蔓延るのが現状だ。

 空軍にいた父親の従軍先ドイツで生まれたスティーブは、5歳のときにそのヨークに移る。ティーンエイジャー期を同地で過ごし、高校卒業後は空軍に入隊。暴力事件が横行し、荒んでいた当時の街を去った。

「銃がらみの事件は毎週のこと」。4年間の兵役を終えて帰ってきた故郷は、依然としてそんな街だった。子どもの遊び場には荒廃しすぎている空き地、割れたガラス片、当たり前のように通りに散乱したゴミ。「薄汚れた生まれ故郷を見るのは、もううんざりだ」。10代のときにはなかった感情が沸いた。2015年4月、スティーブ30歳のとき、右手に箒、左手にちりとりを握りしめ、ひとり立ち上がった。自分の街を美しくしたかった。

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「変な髪型してドラッグをキメて、物を破壊する」というステレオタイプ

「『パンク』とは何かに対して情熱を持つことだ。俺にとってその情熱というのが、この街を綺麗にすること」。ダスティン・ヒルデブランド、スティーブの友人であり、同団体の創設メンバーの一人である彼も、もちろんパンクスだ。街の持つネガティブなイメージを払拭すべく、街が秘めている可能性を信じ、草の根運動に精を出す。
 彼らの活動拠点はセーラムスクエア、低所得者が暮らす地区だ。市の整備が行き届いておらず忘れ去られたエリア。だから彼らが、毎週ゴミを拾い、建物の落書きを消してまわる。

 いまでは地域におなじみとなったパンクスたちだが、活動をはじめてすぐの頃は、その外見からか近隣住民に怪訝な顔をされたという。
「『パンク』って聞くとさ、皆よくこう考える。変な髪型してドラッグをキメて、物を破壊したりするキッズたちって。でも、本当のパンクやその歴史っていうのは、何かを変革したり、それに向かって立ち上がったりすることなんだよ。ダスティンと俺は、そんな一般社会が持つ『パンク』に対する烙印みたいなものを、この活動を通して拭い去りたいとも考えているんだ」とスティーブは話す。

パンクス、子どもたちとチキンの骨も拾う

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 最初こそ好奇の目にさらされていた彼らだが、ある地元メディアが取り上げてから知名度も徐々に広まり、フェイスブックでの告知やちらし配布活動も功を奏し、いまでは毎回の活動に20人以上の地域住民のボランティアが参加する団体へと成長。市からも金銭援助を受け、団体のオリジナルTシャツの売上金を元に活動する。

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「通りで清掃する俺たちの姿をたまたま見かけて『何やってるの?』って声を掛けてくる子どもたちもいるんだ。一緒に手伝ってくれるんだよ」。6歳から12歳の子供たち、ボランティア、スティーブの友人たちの手によって、お菓子の袋や雑誌、新聞、チキンの骨などがゴミ袋に次々に放り込まれ、一回のゴミ拾いでゴミ袋は20個以上にも及ぶ。
「この活動が、パンクキッズや地元の子供達が街の美化について考えるきっかけになってほしいね」という希望がある。

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 寒い冬が明けたら、コミュニティーガーデンをはじめるという。市の職員のつてで譲ってもらった場所に、来月からトマトやナス、とうもろこし、キュウリなどを栽培。採れた作物は地域民に販売し、その売上金でさらなるガーデンの整備、改善費用に充てる予定だ。

「実のところパンクスにはね、2種類のタイプがいる」

「アルコールやドラッグ漬けで奇行を繰り返す奴らと、単純にパンクミュージックが好きで、何か変革を求める者。

俺がよく聴くザ・クラッシュは後者だろ?常に社会の現状を捉え、いい方向に変えていこうとしていた。洗脳ってほどではないけどさ、彼らのような音楽や思想に耳を傾けることが、自分の人生の中を見つめるきっかけになったんだ」スティーブは、パンクのスピリットと地元美化活動をこう関連付ける。

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 最後に、「Punks for Positivity」が目指すものについて、こう話した。
「俺たちの活動をどんどん広げていきたいし、市内で他の支部も立ち上げたい。俺やダスティン、ボランティアの皆は世界を変えることはできないかもしれない。でもさ、自分たちの故郷に、小さな変化を生むことはできると思うんだ」

 かつて1970年代のロンドンで、パンクロックバンド、セックスピストルズが失業者の溢れる理不尽な社会体制に中指を突き立て、ザ・クラッシュが人種差別や警察の不正などを糾弾し、社会の底辺にいる市民の代弁者となって、彼らのよりよい生活のために声を荒げた。2016年のペンシルベニア州ヨークのパンクスたちも、自分たちの街の美化活動を通し、地元民の生活を改善しようと、今日も通りのゴミと格闘する。

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Punks for Positivity / punksforpositivity.com
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Photo credit: Travis “the Featherhawk” Snyder
Text by Risa akita

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