【Editor’s Pick】D.I.Y.TATTOO 刻んだスピリットは、“てめえでやる”

酔って、笑って、タトゥーガン握りしめて。

通常、大きさやデザインによって何万、何十万円と決して安くはないタトゥー。しかし、どんなタトゥーをいれようと無料という場所がある。ただし、それにはたった一つだけ条件が…。「道具は貸すから自分で入れろ」。当然、素人が自分で入れたタトゥーは、危険を伴うだけでなく、落書きレベル。だが、彼らはこういう。その“shitty ghetto tattoo”(不格好でへなちょこなタトゥー)こそが、カッコイイのだと。

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 マリファナか煙草か…。なんだか煙たい10畳程のリビング。窓辺に猫。ソファーではもう一匹の猫が丸くなる。その隣に座りギターを弾く者、パソコンに向かう者、ビール瓶が雑多に並ぶキッチンテーブルでカップラーメンをすする者、携帯ゲームに興じる者、その隣で自らタトゥーを入れる者…。

ここは、『No Class』という無料タトゥーパーラー。ルールは三つ。

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1. Do it yourself(自分で入れること)
2. Avoid cat hair(針に猫の毛がついていないか確認すること)
3. Be drunk(ま、とりあえず酔っぱらっとけ)

 線はガタガタ、色合いの濃度もマチマチ。それでも「自分で入れたタトゥーは、どんなデザインよりもカッコイイんだ」と豪語するのは、コロラド州に住むスケーターたちだ。彼らの住むフェアプレイという田舎町は、あの社会現象にもなった米国アニメ『サウスパーク』の舞台。“レッドネック”(首筋を赤く日焼けした白人農夫の蔑称)を自称する彼らは、小さなコミュニティの中で、密かにD.I.Y.タトゥーカルチャーを育む。その実態を取材したフォトグラファー、Peter Garritano(ピーター・ガッリターノ)に話を聞いた。

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スケーターたち。

ゲトーなイラストが愛おしい

『No Class』のオーナーJesse Brocato(ジェシー・ブロカート)39歳が、自宅のリビングでタトゥーパーラーをはじめたのは、友人の一人が「タトゥーガン(タトゥーを入れる機械)を持っている」といいだしたことがきっかけだった。「だったら、今度持って来いよ」。いつものように家に集まり、酒を飲み酔いが回ると、ジェシーはこういった。「そのタトゥーガン、ちょっと貸せよ」。そして、下書きもせずに、いきなり自分の脚にタトゥーを入れはじめた。

 出来上がりを見て、ジェシーはニンマリ。「なんだよ、最高じゃないか。もう二度とタトゥーになんか金は使わねぇ」。この日を機に、仲間たちとムーンシャイン(自宅で作った密造酒)を飲み酔っぱらっては各自、自分でタトゥーを入れるようになった。ジェシーの言葉を借りると、「そんな感じで、No Classは極自然な流れではじまったんだ」。
 彼らがスケートパークに行くと、「そのタトゥー、ヤバい」と他のスケーターたちを惹きつけた。口コミで広がり、いつしか10代の若者たちの中には、「人生初のタトゥーはNo Classで入れる」と意気込む者まで現れるようになった。

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失敗しても死にゃしねぇよ

 気になるのは、危険性と衛生面。素人がやって大丈夫なのだろうか。「慣れるまでには時間はかかる。最初は、針を深く入れ過ぎて、骨まで削っちまったり。中には、傷跡がいまもハンバーガーのミンチ肉みたいなっている奴もいる。ま、それでも生きてるけどさ」と、過去の失敗はもはや武勇伝の域。
 さらに、注意点はもう一つ。「俺の飼い猫の毛がついてないか、確認すること」。針は消毒されているのかが気になったが、「そういったことも、もう少し勉強した方がいいなとは思っているんだけど、とりあえず、針の使い回しはしないように気をつけている」のだそう。それでも、酔っぱらってると「たまにミスも(使い回しを)やっちまう」と、視線をそらす。

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瞬間を謳歌するために

 クドいようだが、ここではどんなタトゥーを入れても「無料」。「みんな、仲間の家に遊びに行く感覚で、ビールとか食べ物を持ってくる。ま、それらがドネーションってことになるのかな」
 タトゥーガンや針、インクなど、必要な道具は「すべてオンラインで購入している」とジェシー。価格は極めてリーズナブルだという。「針は1本1ドル(約120円)もしないし、100ドル(約1万2,000円)のインクボトルを買えば、少なくても一年はもつ」
 危険性はあるものの、セルフタトゥーは、彼らにとってリーズナブルでこの上なく刺激的な“遊び”。ジェシーは笑う。「俺はただ、ゲトーで格好良いタトゥーが見たいだけ。これでビジネスしようなんて思ってねぇよ」

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 もはや、彼らにとっては「大怪我をするかもしれない」というリスクさえも、スパイスなのだろう。そして、出来上がったへなちょこタトゥーは、どこか自分らしさが漂うゆえに、一際愛おしい。
「スケボーやって、セックスして、酒飲んで、音楽聴いて、マリファナ吸って、気分がのってきたら、セルフタトゥーを入れる。そうやって俺たちは、刺激と快楽に満ちた毎日を生きたい」

 人生に必要なのは、“Do It Yourself”(てめえでやる)と腹をくくること。その過激で単純明快なスピリットを、彼らは自分の手で身体に刻み込む。

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Peter Garritano(ピーター・ガッリターノ)

ブルックリン在住のフォトグラファー。大学ではビジネスを専攻し「卒業後は証券会社の広報担当だった」という異色のキャリアの持ち主。『No Class』の取材は、「妹がプロスケーターで、その彼氏がNo ClassのオーナーJesseと知り合いだったことから決まった」という。ちなみに、自身はタトゥー未経験だそう。

petergarritano.com
instagram.com/petergarritano
Text by Chiyo Yamauchi Edited by HEAPS

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