私が死んだら「キノコにあげて」エコ時代、最後の選択は〈キノコ葬〉 。キノコに食べられて、きれいに地球の土に還りたい

遺体を凍らせるフリーズドライ葬、釘も蝶番も使わない段ボール製の棺桶…。そして…
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死者を川や海に葬る「水葬」に、ハゲワシに食べさせる「鳥葬」。遺体を自然のなかに安置し風化を待つ「風葬」。世界各地には、文化や慣習によって守られてきたさまざまな葬り方がある。

近年、この仲間入りをしたのが「エコ葬」だ。「この世から去ったあとも環境にいい自分でいたい」という思想があるらしい。なかでも、突飛なアイデアで世間の度肝を抜いたのが「キノコ葬」。キノコが、埋葬された自分を食べて成長する、というものらしい…。

「死ぬときもエコ」。遺体の堆肥化も合法に

 
 葬儀の多様化がさらに進んでいる。葬儀中にリアルタイムで故人にまつわる写真やビデオを壁に送信し映し出す「オランダの建築デザイン事務所が考案した新感覚の葬儀場」。壁龕(骨壷を置く棚)にあるQRコードをかざすと故人の歴史や思い出にまつわる動画をスマホで閲覧できる「ニューヨークの納骨堂」。親族たちが自ら故人の墓を手掘りしたり、親族たちの手で故人の遺体を火葬炉に投入したりと、葬儀での“体験”を重視するスタートアップ葬儀屋たち。死=タブーを払拭しようという「デス・ポジティブムーブメント」がその流れの後押しにある。米国での葬祭業は、およそ200億ドル(2兆円、2017年)の市場価値ともいわれ、「死」は一大ビジネスだ。

 こうしたデス・ポジティブ・ムーブメントの流れに乗るのが、環境に考慮した「エコな弔い方」だ。「エコ葬」「グリーン埋葬」とも呼ぶ。欧米で主流の土葬も、日本で一般的な火葬も「環境にとって負担になる」というのだ。土葬の場合は、棺桶とその装飾物に含まれる化学物質や遺体をきれいに保つための防腐液が、土壌中に流出。火葬の場合も、1体を焼却するのに100リットル以上の燃料が必要なうえ、一酸化炭素や煤煙(ばいえん、煙とすす)、くわえて歯の詰めものの水銀など、環境有害物質がすべて大気中に放出されてしまう。
 死ぬときもエコロジーでいたい、というエコ葬では、土葬では天然の防腐剤で処理し、遺体をお棺に入れずオーガニック・無漂白のリネンやコットンで包む。今年5月には、ワシントン州にて米国初の遺体の堆肥化*が合法化されたことが話題に。

*木材チップや藁(わら)が入った容器に遺体を入れると、30日以内に自然に分解されるという仕組みだ(堆肥化された土は遺族に渡され、花や野菜の栽培に使用できる)。

死後、キノコの餌食と化す? 青春ドラマの故人気俳優も「キノコ葬」で天国へ

 日を追うごとにさまざまな「エコに死す」方法が考案されているが、まだ“デス・ポジティブ・ムーブメント”などと声高に叫ばれていなかった10年ほど前から考案されたのが、キノコ葬。「Infinity Burial Suit(インフィニティ・ベリアル・スーツ、“永久埋葬スーツ”)」という名の怪しげな全身スーツを着て埋葬される方法だという。




スーツのサイズはS、M、Lの3種類で、人間用だけでなく、ペット用(スーツというより、巾着袋のような形状)も販売中。

 スーツはオーガニックコットン製で、化学物質や保存料を一切使用しない。100パーセント生分解性だ。頭からつま先まで網羅する白い刺繍はキノコの胞子を植えつけた糸で、スーツを遺体に着せ土葬すると、遺体を餌にキノコが発芽し成長。このキノコが同時に人体に含まれる環境有害物質を吸収・分解除去し、土に人体の毒素が流れ出るのを最小限に抑えてくれるという仕組みだ。開発したのは、ニューヨークのスタートアップ「Coeio(コエイオ)」。
「使用するキノコにもこだわりました」と話すのは、試作品の永久埋葬スーツを着てファッションショーに参加し、TEDトークにも登壇した共同設立者のジェー。彼女は、自分の抜けた髪の毛や剥けた皮膚、爪をキノコに餌としてあたえてトライ&エラーし、分解能力の高いキノコを“インフィニティ・キノコ”として選別。

 個人的に、いまいち奇妙さを払拭し切れないキノコ葬だが(だって、キノコに食われて土に還るって…)。驚くことに、今年3月に急死した俳優のルーク・ペリー(大ヒット海外ドラマ『ビバリーヒルズ高校白書/青春白書』のディラン役で知られた)は、実際にこのキノコ葬スーツを着用して埋葬されたと娘が明かした。また末期症状が進んでいたある男性が「死後は永久埋葬スーツを纏って眠りたい」と名乗り出てその希望は叶った、と需要もしっかりあるもよう。


末期症状のデニスさん。キノコ葬の存在を知り、自ら連絡したという。

 コーヒーを淹れたあとの“かす”で栽培できるキノコや、コーヒーやスムージーに入れる健康にいい薬用キノコパウダーなど、キノコの万能性や順応性はすでにいろいろな形で証明されている。埋葬方法が多様になり、人生最期に自分らしい選択をしたいと“終活”の動きも活発になるいま。万能キノコが「死んだあとも環境にいい自分でいたい」という願いをも叶えてくれるらしい。

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All images via Coeio
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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