現代っ子の遊び方を変える、現代の〈AI・虫眼鏡〉。外に出て自然にかざせば「僕はミツバチで…」と虫や動物が話しだす

のぞけば大きく見えた虫眼鏡。かざせば虫や動物にどんどん詳しくなれるのが、現代っ子の〈虫眼鏡型ツール〉だ。
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「デジタルテクノロジーと教育ツールを掛け合わせた、子どもたちの“発見”を促す道具です」。いまじゃこんなに進化していた、虫眼鏡。虫や動物にかざすと、内蔵AIが瞬時にその生き物を認識し、あたかも生き物自らが“自己紹介”してくれるかのように話し出す。そんな子どものためのハイテクツールが開発中だ。

百科事典にもなる、眼鏡型ハイテクツール

 筆者が子どもの頃といえば(かれこれ25年ほど前。あ、歳バレた?)、遊びといったらもっぱら「外」だった。校庭でドッジボール、公園でケイドロ。虫や動物を捕まえては観察。時にトンボの羽をむしったり、巣から落ちたスズメのひなを棒でツンツンしたり…(だいぶ残酷なこともしてきた…いまとなっては反省)。梅雨の時期にアマガエルを捕まえて手のひらに乗せたり、道端で得体の知れない赤い木の実を試食、ツツジの蜜を吸ったりと、自然との交流を日常的にたのしんでいた記憶がある。

 さて、時は経ち。テクノロジーが劇的に進化した現代の子どもといえば、虫よりもスマホの画面に夢中で、自然界の生き物と戯れることは激減したと心配する声は多い。もちろんスマホにも、子どもの学習を補助してくれる利点はある。知らない言葉について数秒で調べることができたり、難解な歴史や仕組みなども写真やイラスト、動画などのヴィジュアルコンテンツで理解できたり。そのメリットでも替えがたいのが、自然の中でしか学べないこと、だ。

「現代の子どもたちが、虫よりスクリーンにのめり込んでいるのが心配で」。スマホやゲーム機などのデジタル画面から子どもたちの目を離し、外の世界を駆け回りながら自然を学ぶ機会をあたえたいと、今年6月に発表されたのが、テクノロジーと教育ツールを組み合わせた虫眼鏡のような「Spot(スポット)」だ。テクノロジーといっても、人差し指でスクロールする画面は一切なし。この虫眼鏡型ツールを5本の指でしっかり掴み、虫や動物にかざすと、その生き物に関する情報が音声として流れてくる。ツールはデジタル、体験はアナログといったところ。サンフランシスコにある世界有数のハイテクデザインスタジオ「NewDealDesign(ニューディールデザイン)」が開発した。


 ヘッド部分には3Dカメラと小型軽量なピコプロジェクター、持ち手部分にはマイクとスピーカーを搭載。子どもでも簡単に片手で持てる重さ・形状だ。対象年齢は5歳から9歳。ジェンダーニュートラルな黄色であしらわれた現代版“虫眼鏡”、目に止まった虫や動物にかざしてみれば、こんなふうに教えてくれる。

「私はコマツグミ。お昼ご飯のために、おいしいミミズを探しているの」
「オイラはネズミ。普段は一日中寝てるんだけど、目が覚めちゃったから走り回ってるってわけ」
「僕はミツバチ。この蜂の巣で、女王蜂と一緒に住んでるんだ」

 その生き物自身が子どもたちに語りかけているかのような、一人称の語りが特徴だ。「子どもたちの自然に対する好奇心を育てたかったんです」との思いから設計されたスポット。ゆえ、認識するのは生き物のみで、たとえば車に向けても反応しないのであしからず。

 外の世界でさまざまな生き物と出会ったあと、帰宅後にもおたのしみが。部屋の白い壁をスクリーンにしてヘッド部分のピコプロジェクターを起動させると、その日見つけた生き物たちが壁に投影される。初めて出会った生き物たちをおさらいできるのだ。たんなる投影ではなく、子どもたちを主人公にしたストーリー仕立てという工夫がたのしい。

 たとえば、マックスという男の子がロビンという鳥を見つけたとする。すると昔々あるところに、マックスという男の子がいました。ある日マックスが森のなかを歩いていると、ロビンという鳥に出会いました…という具合。
 年齢に合わせてストーリーの入り組み具合を調整可能で、9歳以上の子ども用にはより詳細なコンテンツを追加することもできる。ニューディールデザインによると「自分自身を物語の主人公にすることが自信に繋がる。さらに、自分の一日をおさらいすることは疲れを癒し、睡眠を改善するのに役立つ」のだという。

「デジタルネイティブの子どもたちが、オフスクリーンでもアクティブに」

 スポットよりも早くに登場していた「グーグルレンズ」も、植物や動物にカメラを向けるとその情報を即座に調べてくれるツールだった。が、グーグルレンズはスマホ用のアプリで、向けるのはスマホのカメラレンズ。機能自体は似ているものの、スマホ画面からは逃れられない。スポットは「家にデジタルスクリーンを置いて、自然の世界を探検しようという目論見です」。しかも「はい、デジタルは手放して外へ駆け出そう!」と背中を押すのではなく、あくまでもAI搭載のハイテクツールを持たせるというところに、デジタルに慣れ親しんだ子どもたちへのアピールが光る。「AIという冒険仲間との探検を通して、デジタルネイティブの子どもたちがオフスクリーンでもアクティブになれるようにしました」。

 現段階では社内プロジェクトのコンセプトとして考案されている段階で、販売は未定。今後は、生き物を識別するアルゴリズムを強化し、性能を向上させたいと話している。
 テクノロジーを積極的に駆使しながらも、子どもたちの目をスマホの画面から離し、彼らが外の世界を探検し学べるよう設計されたハイテクツール。「デジタル体験において『(画面を)眺める』ではなく『(外に出て)行動する』。スポットは、そんな変化への大きなきっかけになると思うんです」

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All images via NewDealDesign
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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