「声にできなかった想い」。たとえば、誰かを愛する想いであったり、どこか遠くへ行ってしまった人に焦がれる想い、あるいは他人に対する激しい怒り。
　理由はさまざま、けれども誰にだってあると思う、口を噤（つぐ）んでしまい、想いを声にできなかったこと。

　今週紹介するのは、世界中から届く、行き場を失った想いが集約されたジン『Dear Anonymous（ディアー・アノニマス）：匿名のあなたへ』。

　作者はオーストラリア在住の女性、Jaime Nyx（ジェイミー・エヌワイエックス：ペンネーム）。5年前から世界中の「声にできなかった想い」を集めている。

「自宅の郵便受けには世界中からの“声にできなかった想いが、途切れることなく届いたわ」

　恋の話だけではなく、ヤブ医者へ向けた怒りのメッセージだとか、旦那の同僚へだったり。シリアスなものから、クスッとしてしまうような少しふざけたものまで、あらゆるものが届くという。声にできなかった理由や想いなど、内容に制約は一切ない。

　記念すべき『ディアー・アノニマス』第1号の冒頭で綴られたのは、

One of the hardest things in life is having words in your heart that you can’t utter.
「生きていく中で一番難しいことの一つ。それは、あなたの心に“声にできなかった想い”があり続けること」

　本来、声として発せられるはずだった想いを心の内に溜めてしまうなんて不健全。世界中にある、行き場を失ってしまった想いの最終終着駅が、『ディアー・アノニマス』なのだ。

　あなたの行き場を失ってしまったあの想い・この想い、終着駅はこちら。

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All images via Jaime Nyx
Text by Shimpei Nakagawa