インディレーベルが構える、昔の音楽発掘専門〈再発レーベル〉が好調。当時のライナーノーツ、貴重な音楽書物も“再発”

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近年のインディレーベルは〈再発レーベル〉を構える動きが顕著だった。昔リリースされたあまり知られていない音楽の発掘と紹介に力を入れていていたわけだが、さらにいまその再発レーベルが仕掛ける音楽体験の工夫が着々と進んでいる。かつての“伝説のレコード屋”もそこに一枚噛み、再発レーベルならではのイベントも好調だ。

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古いもの発掘専門の再発レーベル

 近年の巷は「昔のもの」に騒がしい。80、90年代の服の人気は言わずもがな、かつての漫画やアニメが映画化し、80-90年代のアニメのグラフィックを現代風にしてTシャツにシルクスクリーンする。その波際にいては音楽だって古いものに注目が集まる。「あ、レコード流行ってますよね」という話ではない。インテリアのおしゃれアクセント(聴かない)にすり変わってしまったお飾りレコード人気の話では今回はない。昔のレコードが聴くために求められ、さらに「昔のレコード出します」にくわえて、それら昔の音楽を“生でも聴きたい”“もっと知りたい”という人間が増えているとし、音楽インディレーベルがこぞって「再発レーベル」を構えながら、さらに“聴ける”以上の再発体験を音楽好きに向けて工夫して発信しているようだ。

 さて、まずは「再発レーベル」とはなんぞや。端的にいえば「昔の音楽を引っ張り出してくる」音楽レーベルのことで、リイシューレーベルとも呼ぶ。彼らは、広くは聴かれないで埋もれてしまった過去の良レコードを発掘し再発盤としてリリースするのを専門とする。
 たとえば、60年代にでまわっていたレコードはなかなか手に入らないし、たとえ見つかったとしても高値がついていたり、傷んでいたりして聴けないものもある。また、あるジャズレコードのオリジナル盤は20万するが再発は2,000円で手に入ったり。それら悩みを解決してくれるのが再発レーベル、音楽好きには強い味方だ。
 再発レーベルには、「再発専門レーベル」として独立しているものもあるが、既存のレーベルにくわえて再発レーベルを運営しているところも多い。「このレーベルが出すアーティスト好きだし、ここの出す“再発盤”にも期待できる」という気持ちも働くのが音楽好きなので、後者の方がリスナーにリーチはしやすいといえる。

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NYのレーベル「キャプチャード・トラックス」店舗の再発コーナー。

 また、再発レーベルにもそれぞれカラーがある。たとえば、USインディレーベルの一人者、マック・デマルコでも有名な「キャプチャード・トラックス(Captured Tracks)」は、ポストパンクやドリームポップ、ニュージーランドに強い。ポップカルチャー色の強い「メキシカン・サマー(Mexican Summer)」は、サーフ・ミュージックやシネマ・ミュージック、シアトルの「ライト・イン・ザ・アティック(Light In The Attic)は、“ジャパン・アーカイブシリーズ”として、日本のシティポップ、細野晴臣なども出す。UKのチェリー・レッド(Cherry Red)は、ギターポップやトゥイーポップに長けていて、パッケージやライナーノーツ、マスタリングに優れているなどなど。再発盤もレーベルによって個性はいろいろだ。
 いまから何十年も前に作られたカバーを眺めたり、当時のライナーノーツを読んだり、音質を比べてみたりしながら再発盤を聴くのは、スポティファイやアップルミュージックにはない新しい冒険なのだ。

“元ネタ”が聴きたい音楽好き

 また、最近の音楽は、昔の伝統的音楽に現代的な要素をくわえてパッケージされている物が多い。インディアーティストにその節は強く見られ、インディロックに人種混合×R&B、ローファイ×ガレージロック、70年代クラシックロックソウル×R&Bなど、ロックというベースに多彩なジャンルをミックスするミュージシャンがよく見られる。そこで、音楽好きは捻りのないストレートな昔の伝統的な音楽を聴いてみたくなったりする。まず行き着くのは有名な名前だが、それ以外も聞いてみたい。そんなリクエストに応えるのも、昔にリリースされたあまり知られていない音楽の紹介に力を入れている再発レーベルだ。新譜ですでに信用のあるレーベルは強い。上でも述べたが、再発盤の“レーベル買い”が起こるからだ。

 先述のインディレコードレーベル「キャプチャード・トラックス」、彼らはオムニアン・ミュージック・グループというレーベル・グループを2014年に設立し、インディレーベルに、再発レーベルパートナーシップレーベルを設けて、幅広い音楽ファンにリーチできるよう、かつ彼らに最新のインディ音楽から再発まで、幅広い音楽が伝わるように扱う音楽を広げている。ちなみにこのオムニアン設立以降、各所で再発の盛りあがりに勢いが見えはじめている。

オムニアン・ミュージック・グループの三位一体
▶︎インディレーベル(キャプチャード・トラックス、シンダリン、2MR)
▶︎再発レーベル(マニファクチャード・レコーディングス)
▶︎パートナーシップレーベル*(フライングナン、ドットダッシュ)

*海外のレーベルと業務提携をすること。個人レーベルだと大きな流通はできないが、パートナーシップを結ぶことで、より大きなレーベルの流通に乗せてもらえより多くのオーディエンスに届けることができる。

伝説のレコード屋の“再発”はリアルでも

 惜しまれながら閉店したニューヨークの伝説のレコードショップ「アザーミュージック」は、昨年記事にした(▶︎帰ってきたレコード名店。彼らの時代に対応するサバイバルガイド)ように、実店舗は閉店したものの、「レーベル業」を継続して「音楽好きのための場所をつくる」という長年のビジョンを打ち出し続けている。

 昨年には復活第一弾としてMoMA PS1*と合同で、アートブックフェアと同等の規模でミュージックフェスティバル/レーベルマーケットのイベント「カム・トゥギャザー」を開催し、大盛況に終えた。2年目となる今年は、終了時刻を18時から21時に延長し、70年代に活躍したエチオピアのバンドハイル・マージア(Hailu Mergia)をヘッドラインにした。これもアザーミュージクが仕掛けた「再発」の試みだ。さすがアザーミュージックなのは、老若男女が集っていたこと。先日のフジロックに、青春時代聴いたボブディランを一目見ようと集まった中高年の男性らの姿がメディアに取り上げられていたが、このエチオピアバンドもかつてのファンを「あのバンドがもう一度見たい」と集めつつ、「アザーミュージックならいいバンドに違いない」と、当時生まれていない若い層まで時間を共有したということだ。老舗ならではの再発の仕掛け方。新しいレコード体験の一つだ。

*実験的な現代美術の企画を開催するオルタナティヴ・スペースの先駆的存在であった「PS1」、2000年にニューヨーク近代美術館と合併して「MoMA PS1」に名称を変更、活動を継続している。

 この「カム・トゥギャザー」には他にも再発レーベルが2社参加し、おもしろい試みをしていたので紹介する。上で述べたインディレーベル「メキシカン・サマー」は、10周年を記念して同じ親会社(Kemado Records)が運営する再発レーベル「アンソロジー・レコーディング」と共同で、昔の音楽の再発だけではなく、限定盤やテスト盤などにアクセスできるセクションを設置。いまは手に入らない当時の書物も“再発”(たとえば、ルー・リードがヴェルベットアンダーグラウンドをやめて、詩や写真など作家の方向にシフトした転換期の書物など)。「昔の音楽を聴く」以上のさまざまな体験を提供し、オフラインでしかできない再発の楽しさを発揮した。

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 イベントに行くと、70、80、90年代など、かつて聴いた音楽で共感を共有して盛り上がるこが多く、また一方で現代はコアなインディ・ファンでさえ、ビヨンセやリアーナを聴いていたり、歴代のヒット曲が好きだったりと大衆音楽を楽しむ。デジタル世代は、インターネットやストリーミングというインフラによって、新旧とジャンルが入り混じる“オススメ”に触れ続けているため受け入れの姿勢がどんどんフラットになっていく。だからこそ、新しい・古いで判断せず、良いものをどれだけだせるかがレーベルのキーになっている。一緒くたになった音楽の海から、良いものだけを選び出しオーガナイズしてくれる人としてレーベルが求められているように思う。最新の音楽も埋もれた未知の音楽もフラットに評価されるいま、インディレーベルが再発レーベルを運営するのは自然な流れのようだ。

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Photos by Kohei Kawashima
Text by Yoko Sawai, edited by HEAPS
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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