Sponsored by DJI
マダガスカルの遺体を掘り起こす村、バヌアツの全裸裸族、ギリシャの人類最古のコンピューター、ミクロネシアの呪いの遺跡—これら秘境・狂人・奇習は世界にちゃんと実在するし、我々はそれを実際の写真作品で見ることができる。ネットで簡単になんでも閲覧できるこのご時世、ちょっと忘れがちになるが、それはもちろん実際に現地に赴いて写真を撮り続ける人間がいるからに他ならない。
写真家・佐藤健寿(さとう・けんじ)は、すでにこの10年で300を超える「奇妙」の現地に足を運び、ドローンを飛ばすだけでなく人工衛星も用い、世界の新しい姿を写真におさめてきた。ただ見るだけならググれば済む話だが「いや、実際の姿が気になるじゃないですか」と自ら足を運ぶのを好む。海を越え山を越えこの星の奇妙を巡る佐藤さん、正気と狂気の境界線、世界と日本の境界線って一体、どこなんですかね?
佐藤氏がDJI Mavic Proで撮影した長崎県の端島、通称「軍艦島」。
Photo via Kenji Sato
子どもの頃にみた奇妙な世界は「本当に実現するのか?」
信じられないもの、信じたくないもの、いずれにせよ佐藤の写真に写る被写体は測定不能なものばかりだ。なので、「いままででどこが一番ぶっ飛んでました?」というこちらの気楽な質問は、佐藤を困らせた。「いや、どれがぶっ飛んでいるというか、みんなそれぞれ違う方向にぶっ飛んでいるんです。そもそも、ランク付けが通用する規格内の話ではないんですよ。こうなってくると、どれが一番狂ってるかなんて決めるのは無理なんです」。世界で唯一の洞窟村に、諸葛孔明の子孫が暮らす風水村(中国)、50年間一人で大聖堂を作る男(スペイン)などの“世界の狂気”を巡っては一冊の本にして出版。続けて、ノアの箱船の末裔(イエメン)、変態住居(イスラエル)などを綴じ続編として出す。写真家である佐藤を、そのベストセラーとなった写真集『奇界遺産1,2』や、テレビ番組「クレイジージャーニー」をきっかけに知る人も多いかもしれない。彼が追う規格外の世界は、しかしながら紛れもなく我々と同じ人間の手で作られた世界であり、その事実こそが色濃い狂気の表情を見せる。
佐藤健寿氏
Photo by Kohichi Ogasahara
アメリカでの学生時代、子どものころに興味のあったアメリカ空軍施設「エリア51」(*1)を実際に訪れたことをきっかけに「だんだんとエスカレートしていきました」。ヒマラヤの雪男やチベットのシャンバラ(*2)にはじまり、チェルノブイリなどの世界の廃墟、インドの不食男やインドネシアの風葬の村まで、「自分の目で見たい」という初期衝動そのままに旅に出て写真におさめてを繰り返し、もう10年以上が経つ。撮りはじめて数年後には、それらを「もっとよく撮るために」とドローンによる空撮をいち早く取り入れた写真家でもあり、奇妙のさらなる新しい一面を引き出した。
「2013年ですかね、バヌアツの火山で、僕が重たい望遠レンズで写真撮ってるのに、隣のイギリスのクルーはドローンで僕の撮れない角度からも写真をおさえていた。いま振り返ると、そのドローンは、たぶんDJIのS800あたりだと思うんですが、それを目の当たりにして『これは悔しい…』と。と同時に『ドローンはこれから当たり前の存在になる』と直感し、それがドローンをはじめるきっかけとなりました」。帰国後すぐに、ドローンを調べはじめ、数あるドローンの中から撮影性能が高いDJIのPhantomとMavic Proを愛用するようになる。佐藤は、ドローンでの空撮を取り入れたことで、撮影の可能性が拡大したことに純粋な楽しさと喜びを覚えるという。
Photos by Kohichi Ogasahara
「それまでであれば、たとえば廃墟や遺跡を自分の身体の限界で撮っていたけれど、見たこともない真上からも撮れるようになりました。僕からしたら、テクノロジーといってももう少しフィジカルな感覚。特にDJIのドローンは、飛行性能だけでなくカメラ性能も高いので、フライングカメラといいますか、カメラが空を飛んでいるという感覚です」。これまでの100ヶ国以上をまわるなかでも、DJIのドローンがなければ撮れなかったものも少なくない。
「国によって規制もありますからドローンの使用にNGを出されること、スパイだと思われて撃ち落とされるからやめろと警告された地域もあります。紛争地帯では軍隊がいて、『飛ばして映す向きを、こっち(のどかな川の風景)はいいけどこっち(紛争地帯が見える)は絶対ダメだ』、なんていうのもありましたよ」。今年、日本でのトカラ列島での撮影では、はじめて地上の撮影よりもDJI Mavic Proでの空撮数が上まわった。
*1:アメリカの空軍施設を指す隠語。UFOや宇宙人についての噂や陰謀論について最も有名な場所のひとつであり、「UFOの聖地」といわれている。
*2: チベット仏教の経典に理想郷として記された、伝説上の仏教王国。
突き詰めれば「この世に奇妙なものなんてないです」
この日の取材の少し前はインドにいたという佐藤。そこで出会った少数民族のおばあちゃんは、なぜか首に2キロの鉄の首輪を、それも二つも身に付けていた話をはじめた。「いつから身につけてるの? と聞いたら、『20歳になって結婚したときから』って。寝るときも外すことなく、首に4キロの鉄を常にぶら下げてるんですよ。しかも、だいぶ痩せてるおばあちゃん。理由を聞いたら『かっこいいから』。これはこれで相当奇妙じゃないですか」。だけど、「別にこの民族の生活からしたら何にも奇妙なことではなく、フツーです」。佐藤は海外各地だけでなく、日本国内の奇界遺産もこれまで数え切れないくらい巡ってきた。
Photo by Kohichi Ogasahara
「岡山に被仏(ヒブツ)という日本でも珍しいお祭りがあります。お坊さんが体にスポンと仏様を被ってお辞儀しながら練り歩くんです。仏像も鎌倉時代から伝わるもの。パッと見は地味なんですが、よく見るとかなりシュールで、静かに狂っている。でも地元では長い歴史のある、すごく真面目なお祭りなんですよ」。それから、日本の結婚式、「それまで人生にまったく関わりのなかったキリスト教の文化に、人生の一番大事なタイミングを委ねる。これ、海外の人からすると変ですよね。僕らにしたらフツーですが」。極端にいうと立ち所を変えれば世界の奇妙なことはすべて正気で、「結局、全部普通で全部奇妙。この世に奇妙なものなんてない、くらいに思っています」。とりわけ新しい考え方ではない。が、これを身を以ての感覚として備えている人間はそういないだろう。奇妙なものを“異世界”と捉えるのではなく自分のいるところから「地続きの世界」と考える佐藤の感覚は、世界と日本の捉え方も変えていく。
Photo by Kohichi Ogasahara
渋谷スクランブル交差点とインドの山奥の接続点
「本当の景色はどんなものだろう?」。メディアの編集された情報からは見えない、実像への好奇心から訪れた国の数は100を超え、正気と狂気の境界線が曖昧に溶けていく一方で、輪郭を表したものもある。それは、「国境や海に分断された、文化のグラデーションです。文化は地続きになっていて、日本が単一文化だなんて幻想だと感じます。文化圏としての国境はありますけど、文化や民族って、実際には国境を越えますから」
先日訪れた鹿児島と奄美諸島の間に位置するトカラ列島の、「ボゼ」(*3)と呼ばれる奇祭を例にあげた。葉でできた腰蓑と大きな鬼の仮面を身につけた格好は、「完全に東南アジアなんです。それにこの文化のルーツを現地の人間も誰も知らないんですよ。知らずに、ずっと続けているわけです」。約50年前の写真には、まさにパプアニューギニアのような茅葺き屋根の世界で、言語もかなり独特。他にも沖縄や北海道、東北など日本の様々な土地を訪れては「あ、これはあの国のあれと似ている」とピンとくる。国境と距離に遮られた、日本各所とたとえば東南アジアやロシアとの文脈が浮き出てくる。世界を細かく踏んできたことで、世界と日本が確かに地続きに接続されて見えるようになった。
佐藤氏がDJI Mavic Proで撮影した長崎県の端島、通称「軍艦島」。
Photo via Kenji Sato
*3: ボゼと呼ばれる仮面装束をまとい、男根を模した棒(ボゼマラ)に赤土をつけて悪霊払いをする。ボゼマラにお腹をつつかれた女性は子宝に恵まれるとも言われている。
最近では、 「自分とはまったく接点のなさそうな若い子が『奇界遺産買いました』っていってくれることもあって」という。これも佐藤のいう、ひとつの「地続きの文化」ということになるのかもしれない。「最近よく考えるんですよ。渋谷のスクランブル交差点にいる若者と、インドの山奥で鉄をぶらさげてるおばあちゃんの繋がりはなんなんだろうって。恐ろしく断絶してるようにみえるけど、同じ時代に存在していて、絶対何かしらで繋がってるはずなんです。そういう文化の衝突というか、まず僕という撮影者と被写体との衝突があって、それが本になると今度はそこに映った文化と読者が衝突する。そういう、まったく違う文脈の異物同士が、衝突して何かが生まれることにとても興味があります」
土星探査機(NASA)に悔しいと思うことがある
ドローンの空撮をいち早く取り入れ、2年前には人工衛星を使用して世界各地を撮影した写真集『SATELLITE』も出版。地上600キロメートルから見下ろす世界各地は、誰もが見たことのない奇妙な姿を見せた。
空からの視点を柔軟に取り入れた佐藤だが、「ドローンに負けている」と思う瞬間もあるという。「ドローン飛ばして、予期してない画角に『おお!』となった時点で『負けた!』って思う。それって、ドローンにシャッターを切らされたということですから」
テクノロジーが人間の身体を凌駕し、人間の能力では見えなかったもの(画角・解像度)が見えるようになることで、極論は「使い手は何もしなくてよくなりますよね」。その流れの中で、作家はどう表現を追求していくべきなのか。「結局手探りでやっていくしかなくて、一番重要なのは技術に使われてはいけないということです。ドローンの場合、最近は飛ばす前に空撮の画がイメージできて、そのまま思い通りに撮れていることが増えました。それって、テクノロジーを自分の感性で制御できている、ということでもあるし、テクノロジーによって感覚が拡張されたということでもある」
佐藤氏愛用のDJI Mavic Pro。
Photos by Kohichi Ogasahara
カメラはそれそのものがテクノロジーで、「そもそも機械芸術だと思っています」。写真が機械芸術であるとすれば、テクノロジーが感性の幅を規定することもある。原始的なフィルムカメラだって、レンズからフィルムサイズからと規格づくめ。だから、新しい規格の可能性を自ら縮めてしまうのは違うと考える。
「僕の意見ですが、選択肢が多いのはいいこと。可能性へのキャッチアップは、やっぱり早くあろうと思ってます」。数年前、ドローンに悔しさを感じたように、いまはNASAをうらやましく思うという。「火星の風景写真を撮りたいと思っても、いまは誰も撮れないですよね。でも、NASAはマーズ・ローバー(火星探査車)で撮影ができる。カッシーニなら土星まで撮れる。それを作品にできるじゃないですか」。突拍子もない話に聞こえるかもしれないが、かつては特定層の特権だったドローン撮影がこの数年で民間に浸透したように、技術の進歩次第で宇宙撮影も当たり前になる時代がすぐに来ると、佐藤は思っている。
先述の、DJI Mavic Proでの空撮が地上撮影よりも上まわったトカラ列島での撮影。見たことのないアングルに最も驚いていたのは、誰よりも身近な地元の人々だった。見慣れた風景にさえ、さらなる奇妙を発見させる。「いつか南極の廃墟に行きたい」と、自身が見たいと願う奇界遺産も未だ尽きない。「昔の探検隊が貯蔵庫とか小屋を作るんですけど、ミッションが終わると、次の人が使えるように置きっ放しにしていくんです。最初に南極を目指したスコット隊が作った小屋なんかは、当時の地図とかがそのまま残されてるらしいんです」。
ネットですべてが閲覧可能な(気がする)いまにあっても、そんな幻想には目もくれず、その目で奇妙を確かめるために淡々と旅に出続け、作品追求に繋がるなら今度はNASAにも純粋に嫉妬する。佐藤自身も、静かに狂った奇界遺産なのかもしれない。
DJIが現在展開しているキャンペーンでは、
佐藤氏がこれまでに撮影した軍艦島やトカラ列島の空撮写真を見ることができる。
自分たちの視界が限界の写真で育ってきた私たちにとって、
空撮写真は日本という国のカタチや文化のグラデーションが
どのように形成されているのかを気づかせてくれるかもしれない。
Photo by Kohichi Ogasahara
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DJIについて
民生用ドローンと空撮技術で世界をリードするDJIは、リモート操縦できるマルチコプターの実現に情熱を注ぐスタッフにより創業、運営される、飛行制御技術と手ぶれ補正のエキスパートです。DJIは、プロ、アマチュアユーザーのために、革新的なドローンとカメラ技術を開発、製造しています。DJIは、世界中のクリエイターやイノベーターにとって、空撮技術とツールがより身近で使いやすく、安全になるよう取り組んでいます。現在、北米、ヨーロッパ、アジアに拠点を構え、世界100ヵ国を超えるユーザーが、映画、広告、建設、消防や 農業をはじめとする多くの産業分野においてDJIの製品を愛用しています。
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Text by Takuya Wada
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine