「女装に目覚めたのは2歳、自分がゲイだとわかったのは5歳」。2015年、LGBTQ界にやってきた、虹色のド派手チュチュをまとい小さな身体で大胆なヴォーギング(ゲイカルチャー発祥のダンス)をみせたデズモンド・ナポレス。当時8歳。
一躍セレブ・ドラァグクイーンの仲間入りし、以来メディアに引っ張りだこ、ファンを魅了し続けるデズモンド君、現在10歳になりました。ハッピーを振りまく彼だけど、「思うことはいっぱいあるんだ」。人生に頭を抱えるアダルトの悩みでも、親へのカミングアウトを悩むティーンズの不安でもない。デズモンド君に、言いたいこと・思うこと、10歳のゲイ事情ってやつを聞いてみる。
動画がバズって一躍セレブ。10歳のドラァグキッド、デズモンド君
「最初にパレードに参加するのは、ほんとうは怖かった。ぼくはみんなより若いし、意地悪なことを言う人がいたらどうしようって」。お気に入りのボードゲームカフェでホットチョコレートをフーフーしながら、声変わり前の華奢なふわふわとしたトーンで本音をこぼす。SNS上で見る小生意気なイメージとのギャップに、あら、思わず肩透かし(喋り方がドラァグの様になっているところはさすがだ)。
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その初のパレードから、デズモンド・イズ・アメージング(@desmondisamazine)として「世界最年少のドラァグクイーン」「LGBTQ界の未来」の代名詞とともに、瞬く間にドラァグ界のスーパースターに君臨。いまではパレードをはじめイベントの常連、アーティストのミュージックビデオへの出演も果たし、今年のNYファッション・ウィークではブランドのランウェイを飾り、注目をその小さな一身で浴びた。
女装に目覚めたのは2歳のとき。バスタオルを体に巻き、ぶかぶかのハイヒールを履いて家の中を歩きまわるのが楽しかった(「いまもたのしいよ!」)。ゲイだと自覚したのは「5歳のとき。男の子に一目惚れしたの。女の子より男の子の方が魅力的って思っただけ。これ、変じゃないよね?」。
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「誰にも無理やりやらされてない!」
メディア上ではいつも堂々と振る舞うデスモンド君、弾む声で主張したのは「マミーに無理矢理やらされてるんじゃないもん!」。純粋無垢に“Be yourself, always(いつだって自分らしく)“をしている次世代のゲイユースを快く思わない者は、悲しいかな、やはりいる。「普通じゃないから精神科に連れてけ」「世も末」。それから多いのは、「それってほんとに自分の意思なの?」。「虐待だ。両親は逮捕されるべき」まで行き過ぎるこれらのどぎついヘイターの批判には、デズモンド君、反論も自分でする。「若過ぎるから不適切だって言う人はたくさんいる。でも、ぼく自身がそうは思ってないの。マミーに無理矢理やらされてるんじゃない。ぼくがやりたいからやってるんだもん」。
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「好きな友だちとだけ一緒にいたいな」
10歳ゆえに思うこともう一つ、「大切な友だちだけでいいの」。 デスモンド君の通う学校にゲイはいない。「同年代のドラァグ友だちとはSNSで繋がるの。メッセージ交換したり、おたがいの写真にいいねしたり。んでね、イベントで会ったときに一緒に遊ぶんだ」。
カナダにもひとり、セレブ・ドラァグキッドの名を轟かす少年がいる。9歳のラクテイシア君だ。知ってる? と聞くと「ラクテイシアの話はしたくない!」とプイッ。まさかの反応に思わずえっ(汗)?。「実は2人、あんまり仲良しじゃなくて」。笑いながらフォローするのはマミーのウェンディロー。「存在は互いに前々からSNSで知ってたの。去年のドラァグコンで初対面したんだけど…」。嫌いだけど仲良くしておこうかな、なんてことはどちらもしない。思うままちゃんとバチバチしている。
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「大統領はLoser(負け犬)さ」
LGBTQ界の未来を担うゲイユース、反LGBTQ政策に尽力するトランプについてどう思っているかというと、「大統領はLoser(負け犬)だと思う。みんな、なりたい自分になるべきなのに、我慢させるのはおかしいよね」。と、隣でマミーは心配そうな顔で「“自分らしくいる”せいでイジメられるかもしれないって、不安になることもあるわ」。
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「もしも親が好きなってくれなかったら」
デスモンド君、ドラァグ界のレジェンド、ル・ポールをはじめ先輩ドラッグクイーンたちにとてもかわいがられている。「みんなすっごくおもしろいんだ。それにファビュラスに見える方法や、ダンスやポーズのコツを教えてくれるの。ちなみにぼくは誰よりも若いから、デスドロップ(ヴォーグの技)をみんなより豪快にできるんだ!」
自分らしくいたいのにできない同年代キッズにアドバイスは? と聞くと、二つ返事で「いたいならいた方がいいよ」。また自身の経験から「カミングアウトするなら早めがいい」とも。「きみがゲイで、ドラァグをやりたくて、でも親がそれを好きになってくれなかったら、LGBTQセンターに行けばいいよ。友だちと生きていくのだってできるんだから!」
最近の一番のチュチュを着て好きな色のメイクをして、言いたいことだけを喋り切り、取材後「これからショッピングに行くの!」と、マミーと手を繋いで去っていくデズモンド君を見送った。
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Desmond is Amazing
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Photos by Kohei Kawashima
Text by Yu Takamnichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine