「ぼくらプーチン・ジェネレーション」4半世紀の大統領の顔を指輪に。再選裏、ロシアンユースののぼせた愛情表現

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「黒帯の柔道家で元KGBのスパイ」「動物好きで秋田犬とも大いに戯れる」「過去5度ほど企てられた暗殺をかわしている」「扱えない銃はない」—こんな最強の字面で有名な人物といえば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領しかいない。やることが本気なのか冗談なのか(それとも両方なのか)確かでないが、個人の好き嫌いに問わず、見る者の脳に多大なるインパクトを刻み込む政治家でもある。

先日行われた大統領選挙で予想通りの再選を果たしたプーチンだが、その人気を支えていたのが“あの世代”だ。

プーチン派の若者のハブまで存在

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 18年間も一国のトップに鎮座している男、プーチン大統領(65)。47歳で初当選した2000年から在任中の現在まで(メドヴェージェフ大統領期の2008年から2012年までは、首相として)政権を動かしている。先日の大統領選でも当選し、2024年までトップに居座り続けることになった(これは、旧ソ連のスターリン以来の長期政権となる)。当選前から支持率は80パーセントと安定した人気も話題を呼んでいた。

 日本でも“プーチンまとめ”などで彼の一挙一動がネタになり、政治家としてというよりかは、もはやタレントのような感覚で「好きだ」という人もいるが…(最近の報道は「SNSに興味なし、スマホも持っていない」)。本国ロシアでプーチン人気を支え、今回の再選に大きく加担していたのがミレニアルズ世代だったといわれている。

 ロシアの主要世論調査会社レヴァダセンターの調べによると、18歳から24歳の約86パーセントが「大統領としてのプーチンの政策や行動に賛成します」と回答。25歳から39歳でも同様だった。またモスクワ市内にある某コワーキングスペースーは、プロ・クレムリン・ユース(愛国主義的で大統領への忠誠を示すナーシのような青少年組織)のためのワークショップスペースとしても活用され、プーチン派の若いアーティストやデザイナーのハブとなっているらしい。

もはやギャグ?「プーチンの顔を指輪にしました」

 さてプーチン大好きミレニアルズだが、プーチンをサポートする方法が予想を超えていた。プーチンラブの若者たちがつくっていたのはプーチンの顔をのせた「プーチンリング。冗談かと思ったが、そうではないらしい。

 アブストラクトでもなく、アーティスティックでもない。もろプーチンがリングに乗っかっている指輪だ(是非、ウェブサイトで見て欲しい)。銀92パーセントが使用されているスターリングシルバーで、あの鉄の仮面を被ったかのようなプーチンのお顔がついている。そしてリングの側面に刻印されている「PUTINVERSTEHER(プーチンヴァーステハー、ドイツ語で“プーチンの弟子”、“プーチンのよき理解者”)」…。これは完璧なる造語。プーチンリング、架空の用語まで冠しているのだ。
 価格は、15,000ロシアルーブル(約2万7,000円)と手が届かないこともない。ただ、3万という決して安くないお金を「おもしろいから」とふざけて費やすことは痛ましい。これまでにいくつ売れたかは定かではないが、プーチンリングを自腹を切って手に入れた者は弟子入りする心構えなのか。「その指輪なについてんの?」「プーチンだよ」「へぇ、いいじゃん」って会話がどこかで交わされているのか。

 また先出のプロ・クレムリン・ユースのためのコワーキングスペースでも、若手アーティストがプーチンをモチーフにした絵画を制作している。動機は「楽しいから、そしてお金になるから」。作品は完売らしい。

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 自分たちのお気に入りの政治家をサポートするのにヴィジュアルアプローチで攻めるのは、ミレニアルズのお家芸だが(たとえば、英メイ首相のファッションやミームを集めたインスタアカウント)、プーチン派は、プーチンリングや商業(または娯楽)目的のプーチン絵画など独特のヴィジュアル感覚を持っている。ウケ狙いなんじゃないかと思えるほどのさりげないギャグセンスと、本気なのだろうと思わせるような狂気と紙一重のアイデアに、プーチン派ミレニアルズは只者ではないとみる。

「プーチンしか知らない」ザ・プーチン・ジェネレーション

 なぜ、プーチン派ミレニアルズが多いのか。まず、ロシアのミレニアルズに共通していえるのが「物心ついたときから、常に大統領がプーチンだった」。20歳の学生にしてみたら2歳のときから大統領はプーチン、30歳の社会人にしてみたら12歳から国のトップはプーチン。つまり、いまのロシアンミレニアルズはプーチン以前の政権を知らない世代だともいわれている。
「プーチン以前の時代より、ロシアを安全に保ってくれている」「もっと平和になるロシアを次の世代にも受け継ぎたい」「欧米諸国に比べたら自由があるとはいえないけど、いまある自由(新しいビジネスを起業したり、海外旅行したり)を維持してくれている」というプーチン支持の若者の意見や、冷静に「たんに愛国主義が流行っているからだろう」と推測する者、いや「もうプーチンには飽きた。変化が欲しい」という反対派の若者も当然いる。

 とまあ、ロシアに行ったことすらないミレニアル(筆者)はこれらの意見に対してはノーコメントだが、注目したかったのが、今回のプーチン再選までのプーチン派ミレニアルズの飄々プロモーションである。トランプ大統領のトイレットペーパーや、ヒラリー・クリントンのナッツクラッシャー、ブッシュ元大統領のトイレブラシ、麻生太郎元首相のタロ・カポネかりんとうよりもエッジーで、真面目に銀色に光るプーチンリングのシュールさ。好きなバンドのTシャツを着るかのごとく、好きな映画のポスターを部屋に貼るかのごとく、たやすく少し歯がゆい“I LOVE”宣言である。

 それにしてもプーチンリング、製作段階で「ちょっとこれはないんじゃないか…」と疑問を呈する者が一人もいなかったのか(深夜以降に発症する原因不明のハイテンションのようなものに駆られてしまったのか?)など好奇心が尽きないので、現在リングを製作したチームにリングに込めた真意、そしてロシアンユースの多くはなぜプーチンを支持したのかなどの質問を投げかけているところだ。

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Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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