「快感のギャップ埋めてもっと一緒に気持ちよく」女性による、女性のため…ではなく“二人向けセックストイ”
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男性に比べて女性はイキにくい、というのは都市伝説ではない。「挿入だけでイケる女性は約30パーセントしかいない」というのが事実でなければ、女性目線で作られたオモチャがここまで売れるか? という話である。だが、男性向け商品並みに女性向けのオナニー商品が充実して、お互い「セックスより自慰の方がイイね」なんていうのは悲しい。

今回紹介するのも「女性目線で作られた」セックストイ。だが、これは、女性が一人で楽しむためのオモチャではなく、より充実したセックスのための「カップル向け」商品。“一人で”楽しむのも良いけれど、二人での行為だってより良いものにしませんか、と。それまでセックストイのファンディングを拒否していたキックスターターもこれには首を縦に降り、史上初の「セックストイ」キャンペーンを実現。多方面から注目を集めている。

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キャンペーンを実現した二人。左からアレックス、ジャネット。

「クリスマスや誕生日の”ギャグ”プレゼント」ではなく、より実用的なものへ

 私が初めてセックストイを手にしたのは21世紀がはじまって間もない冬だった。それは、男性器の形をした黄緑色の物体。コードレス、とはいえ、乾電池2個でウネウネと波打つそれは、失笑を誘うことはできても、性的興奮を催させるものではなかった。すべては、そのどうにもくだらない見た目のせいだ。念のため言っておくと、それは自分で買ったものではなく、誕生日にプレゼントとして受け取ったものだった。

 あれから17年の月日の間に、テクノロジーが急速に発展し、また人権について語られることが増え、いくぶんかマイノリティの声が世に届きやすくなった。それは、性産業に置けるマイノリティ=女性の声もしかりで、上述のような男の願望そのもの(女性が使われてうれしいというより、使ってる男性側がうれしい)を形にしたオモチャばかりだったのはひと昔前。女性目線で作られたセックストイの数が増えている。そして、その多くは売れ行きも好調だと聞く。

 そんな中、クラウドファンディングで注目を集めているのが、先ほどのカップル向けのトイブランド「 デイム・プロダクツ(Dame Products)」だ。“カップル向け” というのは、一人(とは限らないが)で楽しむオナニー用品というより、相手がいてこそ成立するセックスをより楽しく充実したものにするために作られたプロダクトだから。 

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女性器に固定し(しかし邪魔にならない)、ハンズフリーでクリトリスを刺激することができる。

 
 彼女たちのリサーチによると「セックス中に、挿入だけでイケる女性は約30パーセントしかいない」そうで、つまり、残りの70パーセントの女性には「挿入と同時にクリトリスへの刺激があることで、さらなる快感を得られる可能性がある」。そして、「そのためのプロダクトです」。

「オレのモノでヒーヒー言わせたい」という男根主義的な欲望を、決して受け入れはしないが、かといって頭ごなしな批判もしない。「はい、ご苦労様でーす」と男根を労いつつ、「けど、これがあると私もっと気持ちいいんだ!」と提案する姿勢だ。別の言い方をすれば、このプロダクト、料理における「塩」に似ている。「いいんだけど、ちょっと味が薄いかな、物足りないかな」というときに、塩をパパッとかけてよりおいしくするように、セックスでも、パパッとオモチャを取り入れて、より充実したものにしませんか、という発想だと思う。

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「セックスの邪魔をしない」オモチャって?

 まず、デザインが美しい。控えめに佇みながら、すごい仕事をしてくれる。陰の立役者、とはまさにこのことだ。

「セックスの邪魔をしない、というのが大前提」。そう話すのは、共同創始者のアレクサンドラ・ファイン(Alexandra Fine、以下、アレックス)とジャネット・リーバーマン(Janet Lieberman、以下、ジャネット)。

 セックスの“邪魔”とは、どちらかの性的興奮を冷ましてしまうこと。従来のセックストイは、上述の男性器の形をしたバイブのような露骨なものから随分シフトしたとはいえ、デザインが大人のオモチャと呼ぶにはキュートすぎたり、なぜか動物や食べ物の形をしていたり。性能面をみても、音がうるさすぎたり、サイズを小さくしすぎた結果、振動が弱くて(刺激が少ない)使いものにならなかったりなど。「使ってみたけど、なんか違う」。そういうものが多かったという。「ユーザーに一度でもそう思われたら、そのオモチャはもう引き出しの奥から出てくることはないでしょう」。

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「アマゾンで7,500円くらいのバイブを買ってもすぐ壊れた。きっと安かろう悪かろうなんだと思って、彼の誕生日に奮発して2万円くらいのバイブを買ってみたけれど、それもすぐに動かなくなった。そもそも、身体のセンシティブなところに使うものなのに壊れやすいって危ないし、ニーズがあるのに、なぜこのご時世になっても高性能かつ信頼性のあるブランドがないのか、不思議でした」とジャネット。マサチューセッツ工科大学卒のエンジニアである彼女はもともと米3Dプリント大手『メイカーボット』で働いていたが、「自分が心底共感できるプロダクトをつくりたいと思って」この起業に踏み切ったという。目指すは信頼性のあるブランド。掃除機のダイソンならぬ、セックストイの「デイム」か。

 一方、パートナーのアレックスの専門は心理学。「博士号を取得した後は、セックスセラピストを目指そうと思っていた」と話す。そんな二人は2014年にアプリ・ビジネスの交流会で出会い、意気投合。同年内に会社を設立し、最初の製品「エヴァ(EVA)」を開発。クラウドファンディング「インディゴーゴー」で57万5,000ドル(約6,300万円)を集め、1個105ドル(約1万1,500円)で販売し、6万5000千台を出荷することに成功した。

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男性か女性かではなく「性行為に関わるすべての人のため」

 彼女たちの第二弾プロダクトは指に装着して使う「Fin(フィン)」。2016年末、それまでセックストイのクラウドファンディングを拒否していたキックスターターが、初めて承諾したセックストイ関連のキャンペーンとして注目を集めた。「最初は、『不快に感じる人がでてくる可能性があるので』と断られました。しかし、何度か直接会って話し、時間をかけて私たちのミッションを理解してもらえました」。結果ファンディングにも成功し、現在は第二期の準備に入っているという。

 彼女たちのミッションは、「男性と女性のセックスにおける性的快感のギャップを埋めること」。男性に比べて、女性はセックスでオーガズムに達しにくい、という問題を解決することだ。そのために「テクノロジーを駆使して高性能なデバイスをつくる」。それは、キックスターター上の他のキャンペーンと同じ志であり、これまでにないイノペーティブなプロダクトと呼ぶに相応しいものである。そして、女性目線で作られているが、決して女性だけのためのものではないのもポイント。性行為に関わるみんなのためのものだ。

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メディカル・デバイスではなくあえて「セックストイ」と呼ぶ

 ただ、気になるのは、プロダクトにはメディカルグレードのシリコンが使われており、「メディカル・デバイス」という売り方もできたのに、なぜあえて「セックストイ」という言葉を選んだのか、だ。

「ポルノグラフィか、メディカルか。はたまたヘルス&ウェルネスか。私たちのプロダクトは、そのどれにも当てはまる一方で、どれか一つの枠におさまるものでもありません。セックストイという言葉には、そのすべての要素が含まれいると思います。確かに、メディカルといえば、聞こえはいいですが『医師やカウンセラーに勧められたから』手にするのではなく、ユーザーが『自分の意思で』手にすることに意味があると思うんです」(アレックス)

「ヘルス&ウェルネス商品と言い切ってしまうのも、なんか違うんですよね。だって、セックスをもっと“楽しむ”ためのオモチャであることは確かなので。その部分をやんわりオブラートに包むこと自体が、もはや古い考えではないか、と。そこを変えていきたいですね。もっと楽しく充実したセックスライフを求め、そのためのプロダクトを買うことに、恥じらいなど必要ありません。一人でも多くの人にそう感じてもらいたいので、そういった願いも込めてセックストイという言葉を選びました」(ジャネット)

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 彼女たちのゴール「男性と女性のセックスにおける性的快感のギャップを埋めること」だが、女性がセックスでもっとイケけるようになればそれでいいという一方的なものでは決してない。もしそうだとしたら、わざわざ起業してオモチャをつくらなくても、日本を代表するAV男優「しみけん」考案の「シミクンニ」DVDほど為になるものもないわけで…。

 彼女たちはこう話す。「セックスについて語ることへのスティグマを払拭し、みんなもっとカジュアルに意見を交換し合い知識を深めていけるようになるのが理想。それを目指す為にも、見て触って、感じることのできるプロダクトをつくり、民主的なシステムであるクラウドファンディングに参加することはとても有意義だと感じています」。

 セックスは人間の営みであり、コミュニケーションであると同時に、遊戯的なものでもある。イケるかどうかも大切だが、(パートナーと)一緒に仲良くオモチャを使って楽しみましょう、ってその教訓、幼稚園で習ったような…。

Interview with Alexandra Fine and Janet Lieberman

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Photos by Kohei Kawashima
Text by Chiyo Yamauchi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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