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  • Jun 29, 2016
有名大学生の裏の顔。時間割の合間に差し込むシフトは「セックスワーク」
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いま、ニューヨークの大学生の間で密かに人気のバイトがある。それはヒップなカフェのバリスタでも、レトロなレコードストアの店員でもない。人目もしのんで“セックスワーク”なのだ。

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Image by Franco Volpato

顧客は“授業料を払ってくれるシュガーダディ”

 ニューヨーク大学(NYU)、コロンビア大学、ニュースクール大学、ニューヨーク市立大学(CUNY)。これらニューヨークの有名大学で学ぶミレニアルズの学生たちの中には、売春や援助交際などの「セックスワーク」で生計を立てている人が近年増えてきている。

 “シュガーダディ”(若い女性と親密な関係になろうとする目的で金品を贈る男性)と“シュガーベイビー”(それを受け取る女性)をマッチングするデートサイト「Seeking Arrangement(シーキングアレンジメント)」や「Sugardaddie(シュガーダディ)」に、昨年新規登録した生徒は、多いところで一校225人にも上った。

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Image by Alexander_P

 ティンダーやOKキューピッドなどの出会い系アプリが一般的になっている今日この頃だが、それに“援助交際”がプラスしたデートサイトに登録、経済的に援助してくれるパトロンを探す大学生たち。そこまでしてお金が欲しいのはなぜだろう? それは“欲しい”というより“必要”だから、だった。

「COLLAGEdata」によると、昨年度の公立大学の平均年間学費は2万4,061ドル(約256万円)で私立大学となると4万7,831ドル(約510万円)とかなり高額。
 授業料にプラスして食費や交通費、教科書代、交際費など銀行口座からお金はたやすく減っていく。そしてニューヨークの大学生にネックなのが、高額な家賃。年季の入ったアパートの”ウサギ小屋”でも10万を超えることはザラだ。

 授業料を抑えるべく奨学金や学生ローンなどの選択肢ももちろんある。しかし奨学金を得るには学業に専念する時間を押さえ、成績を常にキープしなければならない。しかし生活費は出ていくばかり。学生ローンを組んでも、卒業後に返済しなければならない(昨年度卒業した大学生の返済額は、平均3万5,000ドル(約373万円)、大学院生は平均7万5,000ドル(約800万円)だった)

 そんな負の循環に陥ってしまった大学生たちの前に救世主のごとく現れたのが、シュガーダディさんというわけなのだ。

“シュガーベイビー”たちの稼ぎ方

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Image by Inna Harlamoff

 シュガーダディを顧客にもつシュガーベイビーたちはお金と引き換えに、いったいどんな仕事をしているのだろう。
 複数のメディアに匿名で紹介された学生の例を挙げてみる。

【女学生Aのケース】

 彼女はNYUの学生。さすが全米で最も学費の高い同大学、年間の学費は彼女の場合なんと6万3,000ドル(約685万円)。最初の2年間はピザ屋のバイトや奨学金、政府からのローン、家族からの支援でなんとか費用をかき集めた。
 
 しかし3年時になると、母親は病気に、授業が忙しくてバイトに行かれない、成績不振で奨学金も取り下げられ、学費の安い大学に転校したくても単位が移行できない。政府からの学生ローンも組んだが、返済金は増えるばかり。

 窮地に立たされた彼女は、ついにセックスワークへ。初めての仕事場は、マンハッタンのある建物の地下牢にあるSMルーム。そこには彼女と同様、授業料の支払いや学生ローン返済のために現役大学生や新卒者が多数いたという。その日に稼いだのは、1時間のSMプレイで得たのは80ドル(約8,700円)とチップだった。

 その後も彼女は親や友達には内緒で、掲示板で見つけた性的なバイト(裸で部屋の掃除をして時給2万円)や性感マッサージ店で1時間に約1万2,000円を稼いだ。   

【女学生Bのケース】

 コロンビア大学の大学院生B。奨学金で学費こそカバーできたものの、生活費が足りない。クラスメートとルームシェアし、稼ぎの少ないバイトをめいっぱい入れても家賃や光熱費の支払いが難しい。

 そこで掲示板や援助交際サイトで2人のシュガーダディと知り合い、そのうちの1人に月々のお小遣いと、彼の近所に借りたアパートの家賃を支払ってもらっている。

【男子学生Cのケース】

 NYUの映画学科の学生。同学科は数々の有名監督を輩出した名門。高い学費に加え、映画業界の将来のキャリアを大きく左右する卒業制作費、とお金は飛んでいく。制作費を最小限に抑えてもやりくりできない生活費に学費。仕方がなくセックスワーカーとして費用を工面しようと、もう1人の男友達とペアを組んで援助交際情報を掲示。すると毎日50件ほど問い合わせがきた。顧客はその中から慎重に選んだ。

 実生活で妻子のいる顧客を相手にすることに恥と罪悪感すら感じていた彼。3年前に無事卒業したが、借金は利子も含めて結局13万ドル(約1,400万円)に膨れ上がり、まだ彼の肩に重くのしかかっているそうだ。

セックスワークを楽しむ学生も?

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Image by Franco Volpato

 学業にインターシップに遊びにと大学生活の貴重な経験を尻目に、ひたすら学費と生活費を絞り出すためセックスワークで自転車操業の生活を送る状況を、楽しんでいる者もいるというからタフだ。

 ニューヨーク大学の芸術学部で演技を専攻する女子生徒。マンハッタンにあるストリップクラブでダンサーをしている彼女は、週1、2日クラブに通い、そこでラップダンス(座っている男性客の膝の上で踊るダンス)をする。ここで、一晩で手にするのは600ドル(7万円)。
 勉強する時間もしっかり確保でき、踊ってお金がもらえるこのバイトに彼女自身は満足しているそうだ。

合法か違法かの問題

 現在、アメリカをはじめとする国々では自らのことを“売春婦”と呼ぶセックスワーカーたちが、売春を合法化しようと動いている。彼女たちは、売春が依然として違法であること、世間が売春婦に対して持つ社会的道徳観、そしてセックスワーカーの権利を支援するのではなく、「セックス産業に身を置く女性を助けること」を主張することに疑問を呈す。

 政治や社会現象についての考えを集めるオピニオンポータルサイト「YouGov」の調べによると、2012年「セックスワークは合法化すべき」との考えを持つアメリカ国民は38パーセントだったのに対し、昨年は44パーセントまで増えた。

 昨年夏も、世界最大級の国際人権NGO団体「アムネスティインターナショナル」が売買春の非違法化に賛成し、物議を醸した。
 売買春を法的に禁止したとしても結果的に売春婦の人権が守られない状態が続いてきたことから、合意の上でのそのような行為を合法化し、売春婦の人権を守るのだと主張している。

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Image by Franco Volpato

 アムステルダムの「飾り窓」(売春婦たちが窓の中からお客を誘う売春宿地帯)で有名なオランダでは、セックスワークが合法。彼女たちは他の職業に従事する国民と同じように所得税を払い、国民保険や社会保険にも加入、社会的・経済的な力を持ち労働しているのだ。

 授業の時間割の合間に差し込まれた、“セックスワーク”のシフト。マンハッタンの街中を颯爽と歩く大学生の足は今日もシュガーダディの元へ向かっているのかもしれない。

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Eye Catch image by Franco Volpato
Text by Sally Lemon

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