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  • Aug 28, 2018

世界初の〈ロボット・バーガーショップ〉開店。ロボットはファストフードの雇用を奪うのか?

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「手際悪くフライドポテトを袋に詰めるだけの従業員に時給1,700円を支払うより、400万円のロボットアームを買う方がよっぽど安いんです」とは、マクドナルド前社長の発言だ。かなり辛口な意見だが、昨今、米国ではファストフード店におけるシステムの自動化と、従業員削減の労働代替が進む。

「ロボットはファストフードの雇用を奪ってしまうのか?」は渦中の問題だが、来月にはサンフランシスコに〈バーガーロボット〉を導入するレストランがついに開店。しかしこのロボットレストラン、人間従業員のことも忘れていないと主張する。

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世界初、“ロボットが全部作ってくれる”ハンバーガー屋

 現実世界の話だが、サンフランシスコのカフェではバリスタ・ロボットが1時間あたり120杯以上のエスプレッソ、カフェラテ、コルタードを入れてくれるし、ラスベガスのバーではバーテンダー・ロボットがこれまた1時間あたり120杯のカクテルを作ってくれる。導入されている2台のロボットがこなす仕事量は、人間のバーテンダー8人に相当するというから、その高い効率性がみてとれる。

 それに連なるように、サンフランシスコのスタートアップ「クリエイター(Creator)」は、8年の長い長い構想期間の末、“バンズからパティ、野菜を挟むまでロボットが全部作ってくれる”バーガー屋を、来月公式にオープンする。創設者は「両親がバーガー店を営み、毎日ウン百個ものバーガーをひっくり返すのに嫌気がさした」というアレックス。過去に鉄板でパティをひっくり返すロボットはいたが、仕上げには人間の手が必要であったため(しかもスピードが遅すぎて1日でクビ)、全自動はこれが世界初となる。

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(出典:Creator Official Website

 店内には全長約4メートルのロボットが鎮座(350センサー、50の作動装置・20のコンピュータ搭載)。透明なので、作る工程が丸わかりだ。コンシェルジュ(これは生身の人間)に従い、タブレットで好みのバーガーを4種類のなかから注文すると、ロボットの圧縮空気チューブ内からぽこっと焼きたてバンズが押し出され、カット、トースト、バター塗りが一連で行われる。
 バンズに乗る直前に新鮮な野菜(ピクルス、トマト、タマネギ、チーズ)がスライスされ、防腐剤不使用&放牧育ちの牛を使ったパティも挽肉にするところからはじめるなど、すべて調理は“注文後”なのが画期的だ。ソース類はミリリットル単位、スパイスはグラム単位で計測され、自動でバンズに振りかけられる、とファストフード従業員たちの仕事をすべて一人(一台)でこなすロボットなのである。


ロボットバーガー店、読書の時間に教育プログラム

 高級レストランでは1000円越えクオリティのバーガーを、クリエイターのバーガー店では約670円(6ドル)と低価格で提供できるのは、やはり人件費を抑えられるからだろう。といっても完全無人ではなく、店内にはお客の注文をとったりロボットのメンテナンス対応をする従業員の姿はある。一見すると、ロボットに大半の仕事を奪われた従業員たちだが、あたえられたものもある。

 クリエイターは、自らのスタッフたちが新しいキャリアチャンスを掴めるよう「教育プログラムを設けようと考えています」。過去に、業務時間の20パーセントを“普段の業務とは異なる業務”にあててOKな「20パーセントルール」を設けたグーグルのように、テック企業ではサイドプロジェクトのために従業員に時間があたえられることは珍しくない。「だが、誰もレストラン従業員に同じような時間をあたえようとはしません」。すでに同社は、時給16ドル(約1,800円)をしっかり払いつつ、勤務時間の5パーセントを新しいキャリア開拓のための勉強時間としてあたえている。しかも、この時間を有給として換算。参考書籍を購入する予算も用意。


 さらに、ロボットが“同僚”でもあるクリエイターの従業員は、同僚の具合が悪くなったときに修理するなど、日常的に機械のメンテナンス技術を現場で学ぶことができる(ちなみにクリエイターは従業員にアップルウォッチを支給。ロボットがトラブルを起こした場合は、通知がいくようになっている)。ロボットの修理やメンテナンスのスキル、ロボットと仕事を協働できるスキルは、今後、オートメーションが進んでいく中で、他キャリアでの応用も期待できる。

ロボットはファストフードの仕事を奪うのか?

 今後数年で、小売業界における600~750万もの雇用が自動化され、多くの労働者が路頭に迷うリスクにさらされるといわれている。その走りの一つだが、果たしてロボットはファストフードの雇用を奪うのか。

 ある経済歴史学者は「オートメーション化によって誰が一番打撃を受けるのか」と聞かれ、「退屈で繰り返しの多い、身体的に骨の折れる仕事をしている人たちだ」と答えたという。裏を返せば、オートメーション化は、ファストフードの危険で身体的にも大変で退屈な作業を“奪う”ということ。ロボットによって奪われた時間が、従業員たちのキャリアアップの時間になる試みも、オートメーション化の時代に求められているのではなかろうか。

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Text by Chaz Bear
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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