ここ最近、「90年代リバイバル」をよく聞くようになった。ポケモンにプリクラ、“アムラー”や“シノラー”。バブルが崩壊した90年代のニッポンでは、さまざまなポップカルチャーが時代を盛りあげようかのごとく生まれた。
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一方、海を隔てたアメリカの90年代といえば、ニルヴァーナを教祖として世界を席巻した「グランジ・ロック」や、女性パンクバンドたちが引っ張ったフェミニズム・ムーブメント「Riot Girrrl (ライオット・ガール)」。“ザ・商業主義”でMTV一色だった80年代を真っ向から批判するように、ワシントン州シアトルなどを中心に急進的な若者たちが台頭した時代だった。
その90年代のグランジ&サブカルチャーの雰囲気をたっぷり吸いこんだのが、『Touch Me I’m Dick(タッチ・ミー・アイム・ディック)』。グランジカルチャーと平行して誕生した当時の青春映画を紹介するファン・ジンだ。
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表紙を飾るのは、ロン毛が時代を感じさせる俳優のマット・ディロン。グランジが生まれたシアトルを舞台に名監督キャメロン・クロウが描いたラブコメディ『シングルス』でのワンシーンだ。
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誌面では、映画『アウトサイダー』や『ランブルフィッシュ』、『ドラッグストアカウボーイ』など粗野な不良少年を演じさせたら右に出る者はいないであろうディロンの魅力や、90年代を代表する女優ウィノナ・ライダー(『シザーハンズ』でもおなじみ)主演の青春群像映画『リアリティ・バイツ』などを紹介。
あの頃のファッションだったり、登場人物が着ているバンドTシャツ、それから髪型だったり、映画のスチール写真を見ているだけで楽しめる。
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90年代を彩ったあの人・あの映画が盛りだくさんのファン・ジン。90年代好きはもちろんのこと、当時を覚えていない人や生まれてすらいなかった人にもきっとおもしろい。「90sリバイバル」のいま、カセットテープやハイウエストジーンズなど“見てくれ”だけでナインティーズを模倣するのではなく、サブカルの真髄を感じてみよう。
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All images via Touch Me I’m Dick
Text by Shimpei Nakagawa
Edit: HEAPS Magazine