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  • Apr 18, 2017
地球の果ての「公園」で一人暮らし。自然に生きる男が“僻地”から説く「現代における孤独を楽しむ方法」
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「solitude(ソリチュード:孤独)」という言葉がある。「“lonely(ロンリー:孤独)”とは、いささか違った意味合いなんだよ」。ある日そう教わった。
独りぼっちの寂しさを表すネガティブなロンリーとは異なり、ソリチュードには「独りでいる楽しさ、自由」といったポジティブさが含まれているという。

孤独、一人、という意味合いが非常に曖昧な“繋がる社会”で、ソリチュードを楽しむ天才も確かにいる。たとえば、南半球の端っこにある国立公園で一人暮らしをする男。

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Photo via Awarua Guides

世界自然遺産で“一人暮らしする”男

 そこに行くには、ボートかヘリコプター、それか5日間のハイキング。それしか手段はない。ニュージーランドの南西部を占める巨大な国立公園「フィヨルドランド(Fiordland)」は、未開拓の大自然が広がる僻地だ。
 その名前の通り、氷河期に形成された美しいフィヨルド(氷河による浸食作用によって形成された渓谷や湾)と南アルプスの険しい山々、豊かな森林が広がっている。

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Photo by Warrick Mitchell
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Photo by Matt Dunbar

 世界遺産にも登録されている国内最大で最古の国立公園に、ウォーリック・ミッチェル(Warrick Mitchell、38歳)の家は佇む。彼はここで一年の半分を過ごし、観光客向けにアウトドアガイドをしている。

 自然での原始的な生活と聞くと、テクノロジーも一切遮断の仙人のような隠遁生活を想像するが、ウォーリックにはフェイスブックもインスタグラムアカウントもある。人里離れた自然で暮らしながらも現代人マインドは忘れていない彼と、「現代人が大切にしたい“ソリチュード(孤独)”」を考えてみた。

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Photo by Matt Dunbar
ウォーリック

HEAPS(以下、H):こんにちは、ウォーリック。いまは自宅ですか?

Warrick(以下、W):ハロウ! オークランド(ニュージーランド北部)のボートのうえだよ。いまからフィヨルドランド(家のある公園)に戻るところ。

H:どこまでもワイルドライフですね。国立公園の住人になったのも、自然な流れで?

W:ぼくがまだ幼い頃に、家族で移住したんだ。両親が50年前に建てた家にいまでも住んでいるよ。海辺に流れ着いた丸太で作ったんだって。

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Photo by Warrick Mitchell
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Photo by Warrick Mitchell

H:究極のサステナブルで育ったというわけですね。いまもエコライフを送っているそうで。

W:そう。電気はソーラーパネルと発電機からで、水は川から汲みあげている。野菜は裏庭、肉や魚はハンティングとフィッシング。生活用品はヘリで運んでもらって、ラジオやインターネットは衛星通信回線だよ。
朝6時半には起きてシカ狩りや魚釣り、サーフィンに行ったり。最近ね、薪のお風呂を作ったんだ。川に飛びこんでからの熱いお風呂、最高。料理も好き。シェフだからね。

H:え、シェフなんですか?

W:一年の半分は、フィヨルドランドの外でシェフをしたり、フォトグラファーもしているんだ。決して、一年中自然に篭っている森男じゃないよ(笑)。稼がなきゃいけないしね。それに、旅をして、実際に自分の目で世界を見たいから。

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Photo by Warrick Mitchell
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Photo by Warrick Mitchell
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Photo by Warrick Mitchell

H:でもこれだけ大自然で自由な生活をしていると、都市生活にストレスを感じるのでは?

W:都会生活も大好きさ。ただ、駐車料金に加工食品、流行りのファッション、広告などは理解に苦しむけどね(笑)。

でも、自然での生活には違ったストレスがあるよ。たとえば、交通渋滞がない代わりにここでは「薪木を手に入れるまでの交通問題」。薪木は料理やお風呂を沸かすのに必須で海辺まで集めに行くんだけど、まず四輪バイクで川を渡らなければならない。水位が低いときにね。でもその前にバイクの整備。壊れていたら修理から取りかかる。機械の修理や木材の確保を一日でも怠けたら、それはご飯や暖かいお風呂にありつけないってことさ。

H:何ひとつ欠けてもダメということか。

W:決してお金をもらうために狩りや薪を集めるわけではなくて、すべて自分たちのサバイバルのためなんだよね。ただね、いくら大変だとしても、一日の終わりには美しい自然を目の前にして、“ぼくたち”は充実感でいっぱいだ。

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Photo by Warrick Mitchell

H:ん? ぼくたち(we)って、同居人がいるってことですか?

W:あ、違う違う。“ぼくたち”というのは、訪ねに来てくれる友だちや家族、物資を運んでくれるヘリのパイロット、ツアー参加客のこと。“ぼくのコミュニティ”という意味での“we”なんだ。人は独りでは生きていかれないさ。
仲のいいご近所さんもいるよ。一番近い隣人で、34年のつき合い。毎年一度、欠かさず会うんだ。そこまで行くのに9時間ハイキングしなきゃいけないけど。

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Photo by Warrick Mitchell
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Photo by Matt Dunbar

H:ご近所といっても遠い! となると、人と会わない日もあります?

W:あるある。2、3週間、人と会わなかった冬もあったよ。

H:独りに慣れていても、さすがに寂しかったんじゃ? 冬だし特に。

W:うーん、忙しくしていればそうでもないよ。自分のやっていることに打ち込むんだ。その冬は、海の景色を楽しめるよう家の横にはしごを作ったり、後でやって来るお客さんのために(歩きやすいよう)バイクで道をならしたり。

H:アウトドアツアーのインスタグラムや自分のフェイスブックもやっていますよね。一般社会から離れた生活におけるSNSとのつき合い方を教えてください。

W:外界のみんなと繋がれるし、フィヨルドランドをプロモーションできるから、その点では便利なツールだと思うよ。でも、友だちが楽しんでいる写真をスクロールばかりしていたら、それこそ孤独に感じちゃうよね。

ぼくの家のネット、よく落ちるんだよね。最初は外界から遮断された気分になって不機嫌になる。でも他の作業に打ち込んで気を紛らわせて1、2時間したら、SNSのことなんて忘れているよ。

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Photo by Warrick Mitchell

H:デジタル・デトックスのような。

W:そう。ぼくの家に来たお客さんは携帯没収だし(笑)。ネットからサインアウトするのって、非常に重要なことなんだ。

H:独りになることの大切さってなんでしょう。

W:独りになれば、精神が研ぎ澄まされる。ぼくの人生で最高の体験の一つは、単独ラフティング(川下り)3日間の旅。独りきりだと「なんだ、自分は独りでこんなこともできるんだ」と自分に備わる行動力や独りになれることの強さを再確認できる。孤独を楽しめる人は、自分に自信を持てる人になるんだ。

だから“独りになることが怖い現代人”には、こう言いたい。「どこかに独りで行ってみよう」。ハイキングでもサイクリングでも何でもいいけどさ。孤独の価値がわかる人は、自分を取り巻く環境や自然に対して感謝できるようにもなる。

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Photo by Warrick Mitchell
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Photo by Awarua Guides

H:独りと人との時間、バランスが大切ですね。

W:もちろん。独りの時間があるからこそ、好きな人と見る風景は、いつもの2倍も3倍も美しく見えるし、仲間と一緒にするサーフィンも楽しくなるんだ。

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Photo by Matt Dunbar
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Photo by Warrick Mitchell

 どんな辺鄙なところでもネットさえあれば人と繋がれるということは、つまりはソリチュードを楽しむのに場所は関係なく「テクノロジーから距離を取れる=他人のことを忘れて自分に没頭する」ことにあるんじゃないだろうか(ウォーリックは文字通りの辺鄙なところにいるけど)。
 逆にいえば、すんごい奥地でサイクリングしてても「みんな今日何してんだろ…」ばっかり考えていたらあんまり意味がない(SNSばっかりチェックしてたら本当に意味ない)。

 たまにスマホも完全オフ、一人で出かけた先の風景や食べたものをシェアせずに独りじめして、他人からのいいね!じゃなく、「自分は楽しんでいる」と自分だけで完結してみる。これだけで、なにも超辺鄙な断崖絶壁に独りで行かなくても「自分は独りでこんなことしてる。楽しい」を実感する、ソリチュードへのステップになるんじゃないだろうか。

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Warrick Mitchell / Awarua Guides
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Photo by Matt Dunbar
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Photo by Matt Dunbar
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Photo by Matt Dunbar

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Text by Risa Akita
Edit: HEAPS Magazine

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