孔子の『論語』やピーター・ドラッガーの『マネジメント』。時が経とうとも、時代を超えて読みつがれるロングセラーの「指南書」。ジン界のロングセラーといったら、『Stolen Sharpie Revolution(ストールン・シャーピー・レボリューション)』。2002年に初版され、これまで15年間で2万2000部以上を売りあげる、ジンづくりの指南書である。
作り手は1997年にジンづくりをスタート、以来20年に渡ってジンカルチャーを支えてきたアレックス・レック。オレゴン州ポートランドにて、カスタムメイド缶バッチやジンを販売するショップ「Portland Button Works(ポートランド・ボタン・ワークス)」を営む傍ら、毎年開催されるポートランド・ジン・シンポジウムのファウンダーである(さらにジンをテーマに活動するバンドのメンバーでもあり)彼女は、ジンカルチャーのマザーというべき存在だ。
といっても「D.I.Y(Do It Yourself:自力でやる)」がジンづくりの基本のきであり、一番美味しいところでもある。ジンカルチャーにどっぷり浸かる彼女が「ジンはこう作るべし!」と丸わかりマニュアルなガイド本を作るはずがない。「“自身の創造力をもって、自分で作る”。ジンの魅力に夢中になったビギナーの出発点のようなものになればと思って」。ジンの綴じ方や紙質、印刷のコツなどから、コスパの悪さ解消やいいディストリビューション方法など、ジンづくりビギナーが陥りがちな疑問を解決してくれる手助け本だ。
あーやれこーやれ言うわけでなければ、頭ごなしに突き放しもしない。「とりあえずやってみようよ」とあくまで各々の創造力を暖かい眼差しで見守る指南書ジン『ストールン』。20年もの間、身を入れてきたジンカルチャーに対する彼女の普遍的な想いが、時代を超えて作り手、そしてカルチャー全体を支えるわけだ。
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All images via Alex Wrekk
Text by Shimpei Nakagawa
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine