同じ街に数年ほど定住していると、「ここに行けばこれが買える」という要領で、「ここに行けばこの子に会える」という猫も増えていく。筆者の場合は、職場近くのよろず屋、レジ裏のダンボール箱を座布団のようにのっしりと眠る看板猫プリンス(オス)。自宅近くのデリで、アイスクリームのショーケースの上を我が物顔で闊歩するラテン系猫ティト(オス)。深夜のホームディポ(大手ホームセンター)を巡回する耳の欠けた猫(メス)は新入りだ。
「近所でぶらついていた野良猫から本屋の猫、私の大切な親友だった猫まで、人生のなかで出会ってきた猫たちのことを覚えている限り書き綴ったわ」と、フィラデルフィア在住の猫好きケイティさん。彼女と猫との遭遇をエッセイにしたのが、ジン『Cats I’ve Known(キャッツ・アイヴ・ノウン:知り合い猫たち)』だ。
「ディープな友好関係を結んだ猫から一期一会だった猫まで」のストーリー集。ケイティさんの“知り合い猫”のなかでも、特に印象的だったという3匹を紹介しよう。
トリキシーちゃん
大学卒業後、一人暮らしをしていたときに飼っていた猫よ。まあ、トリキシーとだから正確には“二人暮らし”ね。彼女は私のベストフレンドだった。いろいろ大変なことがあった時期なんだけど、ひょうきんな彼女にどれだけ助けられたことか。夜、私がベッドにもぐりこむと彼女も寝室について来て洋服箪笥の上にぴょこん。おやすみと声をかけた数分後には、彼女のいびきが聞こえてきた… 🙂
マックスくん
トリキシーと住んでいたアパートの隣の家に住んでいたご近所猫。灰色の長い毛の大きな猫で、一匹狼のようにふんぞり返って歩いていたわ。私が玄関の扉を開けると、いつも中に入ろうと試みて、何度か成功していた(笑)。
ココちゃん
いま、旦那と飼っているのがシャムのミックス、ココ。クリーム色の体で、耳と顔、尾っぽ、足がダークブラウンだから、私は“チョコディップちゃん”と呼んでいるの。里親からもらったときすでに彼女は13歳だった(人間でいうと68歳)から年寄り猫ちゃんだけど、すごく活発! 獣医さんも、彼女の歳をはじめて知ったときは信じられなかったみたい。私たちの家は古くて階段も急だから、住みはじめの頃はココも上の階には行こうとはしなかったんだけど、最近は勇気を出したのか、私たちのところまでウサギのように駆け上がってくるようになったわ!
旦那とトリキシー。
犬好きからの常套句といえば、猫って“そっけない”、“気分屋だから苦手”。ケイティさん、いまいちど伝えたい猫の魅力って?
「冷静沈着なところ。たとえば、トリキシーは私にとってペットというよりは“ルームメイト”だった。あと、猫のお高くとまっているところも私にはおもしろい。猫から愛情を得るのは一筋縄ではいかないわね」。威厳と平静を保ちながら自分の時間を大切にし、人間に“お近づきになりたい”と思わせる。それでいて、ときに感情をむき出しにした野性味で人心を惑わせる。吾輩、猫のような女になってみたいものである。
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All images via Katie Haegele
Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine