炎の中を駆け抜けても。地球で一番タフな冒険服〈生死に関わる環境で着る服〉を開発する双子「僕らのパーカーは無傷だ」

「パーカーを四輪駆動やモーターバイクにくくりつけ、川や砂利道を高速スピードで引きずりまわしたんです。特殊部隊が使うロープはボロボロになりましたが、パーカーは無傷でした」
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「あなたは突然、トラックの荷台に放り込まれたとします。目的地もわからず、到着地での自分の使命すらわからない。そんなとき、生き抜くために着ていたい服とは?」

へ、そんなこと言われたって…と答えるのにまごつくような質問だが、その答えを求め、“究極の冒険服”作りに精を出す双子がいる。その服の数々、数万円の高値にも関わらず売り切れ御免状態だ。究極の冒険服とは、究極の環境で人を守る服ということ。冒険家の生死に関わる服を作る双子に、〈生死をわける服作りの裏側〉を探ってみる。

100年耐久ズボン、地球で一番タフなTシャツ。アウトドアブランドがつくる究極の冒険服

「数年前、世界屈指の過酷な競技に参加したときのことです。24時間砂漠を走ったり、アマゾンのジャングルをかきわけながら前に進んでいたときに痛感させられました。着ていた服が予想外に優秀じゃなかったことに。だから思ったんです、これまで誰も考えたことのない、究極の冒険服をつくりたいと」。アスリートで冒険家の双子、ニックとスティーブは、自身のアウトドアブランド英国発「ボレバック(Vollebak)」設立のキッカケを回想する。3年前にスタートを切り、未来の冒険服を世に送りだす。

「いままでに見たことも着たこともない服を作ろう」をコンセプトに、科学とテクノロジーを駆使する。昨年発表した、太陽光を蓄電しどんな暗闇でも光るウィンドブレーカー「ソーラー・チャージド・ジャケット」はタイム誌の2018年最優秀発明賞、テック誌ワイアードが選ぶ2018年ベストギア、ビジネス誌ファストカンパニーのデザイン発明賞をかっさらい、世にその前人未到の冒険服をじわりとじわりと浸透させている。
「未来からやってきたかのようなギアを作っています」と自負する彼らがこれまで開発した服をみてみると、北極・南極から赤道までの温度差を調節できるという「プラネットアースTシャツ」に、10万のセラミック粒子でつくられた「地球で一番タフなTシャツ」スーパー繊維と名高いアラミド繊維でつくられる驚異の「100年耐久パーカー」、顔をすっぽり覆うことで(目の部分はメッシュ加工)視界をリラックス効果のあるピンク色にしてしまう宇宙服のようなマインドフルネスパーカー「リラクゼーションパーカー」、など、どれも史上最強感ただよう。また、ノーベル物理学賞を受賞した最軽量・最強ナノ素材「グラフェン」の可能性を探るため「グラフェン・ジャケット」を実験的に開発、昨年冬には“宇宙服の次に先進的なズボン”を謳う防火・防水機能もついた「100年耐久ズボン」を発表し、世界中の冒険家の購買欲を刺激した。


Photo credits: Vollebak/Sun Lee

Photo credits: Vollebak/Sun Lee

Photo credits: Vollebak/Andy Lo Po

Photo credits: Vollebak/Andy Lo Po

NASAやハイテク繊維ブランドの協力で開発

 人間がこれまで思いつきもしなかったボレバックのサバイバル服。そのアイデアの元はどこからやって来るのだろう。「ランニングやツーリング、サーフィン、スキー、クライミングをしているときや、カヤックやボートに乗っている最中に降臨します」。またテクノロジーの発達とともに、新しい製品開発方法やいままで見たこともなかった最新の素材が生まれてくる。そのため、ボレバックはほぼ毎月、新しい製品アイデアを考案しているのだという。

 しかし、アイデアから実際のプロダクトができあがるまでにはそれ相当の年月が必要だ。「1着を開発するのに、2年から5年」。たとえば、と双子が例にあげたのが、プラネットアースTシャツと100年履けるズボン。スイスの最先端の織物工場で作られた特注素材の入手にはじまり、頑丈な糸ですべての縫い目を二重に縫い、襟とポケット裏地の補強まで施した。細かなプロセスを何百も踏みながら、考案から販売までに費やした時間は丸2年。


Photo credits: Vollebak/Sun Lee

Photo credits: Vollebak/Sun Lee

 そして、これらの製品開発の裏には科学者や医師、アスリート、さらに最先端の繊維を研究する米国航空宇宙局NASAや欧州宇宙機関ESAなど各分野のプロたちの協力がある。「くどいようですが、僕たちは誰も考えたことのない異例の服づくりに取り組んでいます。それが少しずつ世に認知されるようになったいま、ありがたいことに、このようなテクノロジーの最先端で働く人々からコンタクトがあったりします」。

 新作の100年耐久ズボンも繊維のプロとタッグを組んだ。「たんに100年耐久するズボンを開発するだけでは物足りませんでした。残りの人生履きつづけても“快適な”ズボンを作りたかったんです」。彼らは、軍隊や警察のテキスタイルを開発するスイスのショーラー社が開発した新素材を使用。消防士が過酷な状況でも作業できる目的で開発された軍隊もお墨つきの耐熱繊維なのに、やわらかくストレッチもきき、さらに防水機能もある着心地のいい素材だ。消防士が着るような重たく着心地も悪い化学繊維の防火服ではなく、日常シーンで履いても快適なサバイバルズボンに仕上がった。また、脚の動きに沿うように縫い目が設計されているため、「山を登っても、キャンプでテントをセットアップしようとも動きやすい作りになっています。おもしろ半分に火山の噴火口まで降りていったとしても、もちろん動きやすいし大丈夫です」。おもしろ半分に火山とは、さすが冒険家の発言だが。


Photo credits: Vollebak/Sun Lee

Photo credits: Vollebak/Sun Lee

耐久性テストは「川や砂利道で高速スピードで引きずりまわす」「元軍人の冒険家に試着・サバイブしてもらう」

 ところで。世界一タフなTシャツに、火に晒されてもOKな100年耐久できるズボンなど、大自然の脅威や危険と闘わなければいけない状況で使用されるボレバックの服。生死をわけるような状況で、本当にその服が効果的なのか、過酷な環境にどこまで耐えることができるのかを、いかに証明するのか。人の命がかかっているがゆえ、製品開発時の耐久性テストは慎重だ。「実際にアウトドアスポーツや旅行、はたまた仕事場にも試作品を着て行ってみました。異なるシチュエーションでどう機能するのか、また着心地はいいのかどうかを見極めるためにです」
 もちろん、それだけではない。かなり手荒で豪快なテストもおこなう。100年耐久パーカーのテストでは「パーカーを四輪駆動やモーターバイクにくくりつけ、川や砂利道を高速スピードで引きずりまわしたんです。スピードボートに引っ張らせたり、ガスバーナーで乾燥させたり、と可能な限り厳しい環境下にさらしました。特殊部隊が使うロープはボロボロになりましたが、パーカーは無傷でした」


Photo credits: Vollebak

 また「世界レベルの冒険家やエクストリームスポーツをやっているアスリートの友人に試してもらうこともあります」。たとえば、プラネットアースTシャツの開発では、世界記録を保持する冒険家で元エリート軍人のアルド・ケインの手を借りた。「彼の任務は、自身と仲間が生き残るためにサバイバルすること。ジャングルや山岳地帯、砂漠、北極など世界の最もエクストリームな環境において試着してもらいます」


「2025年に活用される服を考案しています」

 現在も、あらゆるエキサイティングな冒険服を水面下で開発中とのこと。「いまある多くのスポーツブランドの製品やアウトドア用品は、どうも退屈で時代遅れに感じてしまうんです。僕たちはこれからも人々をワクワクさせるような未来の服を作っていきますよ」。開発から販売まで、長くて5年はかかる彼らの服。考案から数年経って人の手に渡ったときに、“過去”など思わせずに未来感とワクワクに満ちた服を作ることは容易ではない。
  2019年のいま、彼らは「僕たちは、2025年に活用される服を考案しています。僕たちが考えるに、この先10年から20年後には、ウェアラブル・テクノロジー*はもっと見えない存在になると予想します。現在の目や腕に装着する形から、“着る服にすでに埋め込まれている形”へと進化する」。

*装着型のテクノロジー製品。コンピューターが備えていた機能を腕時計やメガネにしたアップルウォッチやグーグルグラスなど。

 最後に、もう少し先に延ばした未来についてはどう考えているのかを双子に聞いてみた。火星への旅行が普通になるかもしれない未来。製品の開発・製造が宇宙でおこなわれるかもしれない未来(これはすでににはじまっている)。人類が地球外で生活するかもしれない未来。
 人間が、日常的に地球の外側へ出かける、あるいは暮らす時代が来たとしたら、ボレバックのような冒険服はもっと必要になってきますよね? 「はい。人類が火星やその奥の圏へ向かうようになるころ、生死に関わる冒険服は旅の重要な部分になることでしょう」

Interview with Nick and Steve Tidball


Photo credits: Vollebak/Sun Lee

Eye catch: Photo credits: Vollebak/Sun Lee
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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