“生理用ナプキンが集まる”ポスター。公衆トイレ、工夫を凝らした1枚からはじまる〈生理用品クラウドソーシング〉

世の女性たちがクラウドソーシング。ナプキンやタンポンを、「公衆トイレに張られたポスターのポッケにぽいっ」で。
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米国にいる約21万6,000人のホームレスの女性には、毎月頭を抱える悩みが訪れる。人生のうちの何十年間ものあいだ月に1回、1週間続く生理だ。

 驚くことに、多くのホームレスシェルターでは生理用品がじゅうぶんに支給されていないという。その背景には、「タンポン税*」が原因で、生理用品がまだまだ高価であること、シェルターへの寄付が少ないことがある。生理用品を必要とするホームレスの女性の数に対して、供給できる生理用品の数が圧倒的に少ないのだ。あるシェルターの話だと、1000人ほどいるホームレスの女性に対して、10箱の生理用品がひと月おきにしか届かない。

*生活必需品が非課税である国で、生理用品が課税対象になっていること。現在、米国ではニューヨークを含む10州で非課税だが、半数以上の州ではいまだ課税対象。

 ナプキンやタンポンを入手できなかった運の悪い月には、靴下やビニール袋、新聞紙、マクドナルドに置いてあるナプキン、あるいは葉っぱなどで対処せざるを得ない状況に。無論、生理中の衛生状態が悪いと細菌性膣炎といった感染症にかかる恐れも大いにある。生理用品の入手はホームレスの女性にとって、時に「食べ物か生理用品かの選択を強いられる」ほどの死活問題になる。

 こうした深刻な「ホームレスの女性と生理問題」の現実を知り、「自分のクリエイティブスキルを活かして彼女たちを助けたい」と立ち上がったのはグラフィックデザイナーのエリン。大学時代の友人2人とともに、プロジェクト「ペリギブス(Perigives)」を設立。ニューヨーク発だ。
 彼女たちは、ホームレスの女性が生理用品に簡単にアクセスできるようにと、ナプキンやタンポンをクラウドソーシングするポスターを考案。「ポスターで生理用品を寄付? ただの呼びかけ広告か?」と思うなかれ。よく見て、このポスターには“ポッケ”がついている。「誰もができるだけ簡単に、このプロジェクトに参加できるように」と工夫を凝らしてデザインされたポスターの使い方はこうだ。

1、ペリギブスのウェブサイトから、ポケット付きポスターをダウンロードし、プリントアウト。ハサミでポケット部分をチョキチョキ、ペタペタ。両面テープでポケットを作る。

2、公衆トイレに張る。女性たちが余分に持ち運ぶナプキンやタンポンを「わけてください」と寄付を募る。ナプキンやタンポンが集まる。

3、公衆トイレにやってきたホームレスの女性が、ポケットに集まったナプキンやタンポンを気兼ねなく使う。

 プリンターと用紙さえあれば、誰でも何枚でもポスターをダウンロード可能。ポスターのポケットは、ナプキンが約10枚おさまる大きさだ。



 プロジェクト立ち上げ前の昨年末、特にホームレスが密集するマンハッタンの2つの駅、バスターミナル、公園の公衆トイレに、試験的にナプキンを3、4つ入れたポスターをゲリラ設置してみたエリン。数時間後にはいくつかのナプキンはなくなっており、しっかり寄付されていた場所も確認できたそうだ。

 いまのところ何人がポスターをダウンロードしたのかは不明なものの、「インスタのストーリーではペリギブスをタグづけした実際のポスター投稿も見かけたし、フェイスブックではポスターの印刷費を募るページが開設されていた」とSNSの反響は多かったという。今後の課題は、水に濡れても大丈夫なようポスターの質を改善すること。普通のコピー用紙だと、もって1ヶ月というので、ラミネートやプラスチックのポスターにする必要がある。また、英語だけでなくさまざまな言語へと翻訳し拡散していく予定だ。




 これまでにも、当時高校生だった男女2人組が設立した「ピリオド」や、女性2人組が設立した「ディストリビューティング・ディグニティ」など、ホームレスの女性に生理用品を配布する非営利団体はあった。が、“トイレ”という誰もがアクセスできる場を利用し、その日その場所で貢献できる“クラウドソーシング”で問題を解決しようとする試みが新しい。

 このポスターならば、寄付する側も面倒なプロセスもなくその場でぽいっと入れて寄付しやすいし、ダウンロード式のポスターは誰でも何枚でもコピーできるから、ゲリラで公衆トイレに「ぺたっ」も。今日から一人でもできる社会貢献だ。今日から一人でもできる社会貢献だ。「ホームレスの女性が抱えるこの生理用品問題を、多くの人に知ってもらいたい」との女子三人組の思いは、ペタペタと貼られる公衆トイレのポスターを通して自然発生的に拡散していく。

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All images via Perigives
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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