ネット大国・中国で大金動かす「網紅(ワンホン)」たち。億単位を稼ぐ中国インフルエンサーの実態って?

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インスタグラマーにユーチューバー。スマホだけでただの素人でも明日には有名になれるこのご時世に意気揚々と現れたのが網紅(ワンホン)と呼ばれる中国人ネットインフルエンサー。広告枠が約4億円で落札されるなど中国で大金を動かす存在だ。いま、その“彼ら”を育成する学部までが登場している。

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Photo by Kevin Law

「ワンホン」って何者?

 日本人には聞きなれないワンホン、直訳すると「インターネット上の有名人」。彼らは中国版ツイッターウェイボー(微博)を主なテリトリーとし動画配信(生配信も)を行う。明確な定義はないが、フォロワーが50万人以上いるとワンホンと見なされるようで、その数は約100万人にのぼるという。動画内容はテレビゲームの実況中継やグルメレポート、クッキング動画のようなお役立ち系から、寝てるだけや食べているだけをずっと流す動画などかなりコアすぎるものまでとユーチューバーのようなものだ。動画消費世代の若者を惹きつける“何か”があれば人気者になれるということだ。動画内では提携企業の商品やサービスの宣伝を行うのだが、ウェイボーのユーザーは7億人で本家の3.2億人を優に越えており、ワンホンらは数十万人以上から数百万、トップクラスでは数千万のフォロワーを有していると考えると、その宣伝力はいうまでもない。ライブ配信で視聴者からのプレゼントという形で仮想通貨を受け取り換金できる仕組みまであり、人気ワンホンは視聴者からのお小遣いだけで高額収入を得ているとか。

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※後に動画配信機能が追加された。

3億8000万円の広告枠を生んだワンホン(女子)

「2016年ナンバーワン・ワンホン」との呼び声の高いPapi醤(パピちゃん)は、ネットアイドルでもなんでもないただの元・SNS素人。独身キャリアウーマンが抱える仕事や人間関係、恋愛などの悩みや日常生活をネタにした毒舌トークを再生速度を早送りにし動画配信したところ、素は美人なのに変顔や下品な言葉を交えながらの本音トークが大ウケ。配信開始から半年でベンチャーファンドから約2億円の投資を受け、さらに3億8000万円で彼女の動画広告枠が落札された(!)。桁違いにもほどがある。さらにワンホン実録としては、化粧品メーカーのメイベリンがワンホンを動画に起用し、口紅を2時間で1万本以上販売したことも。

「ワンホンになるため」の学部が誕生

 昨日まで普通の女の子だった子が一夜にしてネットスターに。数ヶ月で数百万人フォロワーゲット。毎日1時間の動画配信で年収は1000万円。素人が有名人になっていく光景を毎日SNSで目の当たりにしている中国ミレニアルズが「ワンホンになりたい!」も当然だ。
 そんなニーズに呼応するように誕生したのが、「ワンホン学部」。中国東部浙江省にある大学「イーウー・インダストリアル・アンド・コマーシャル・カレッジ(Yiwu Industrial and Commercial College)」では、ワンホンになるための学部「モデリング&エチケット」なるものを設けた。着こなしから、メーク、カメラ前での演技、高級ブランドへの理解などを“学問”として身につける。また、中国最大の通販サイトアリババもブログの書き方や画像投稿をレクチャーする育成機関ルーハンに約52億円を出資しており、ネット有名人育成事業も進んでいきそうだ。休み時間にはクラスで学んだスキルでセルフィー棒を高く掲げ、ふと思いついたことを生配信。もちろん視聴者への投げキッスも忘れずに?

日本人ワンホンもいる!「越境EC」の目論み

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 トレーダーのごとく大金を動かすワンホン。中国のリサーチ会社易観国際(Analysis International)によれば、昨年の中国ワンホン関連市場規模はおよそ77億ドル(約8600億円)に達し、2018年には倍増するという。人口大国であることを加味してもものすごい市場だ。

 一大市場を目の前にして隣国、日本もみすみす見逃さない。「越境マーケティングのカギを握るワンホンのパワーを紐解く」をテーマにインターネット・セレブリティ・サミット(Internet Celebrity Summit)を開催したり、北海道の大手ドラッグストアサッポロドラッグストアーは、日本の若者のリアルな文化を伝える動画で大ブレーク中の日本人ワンホン・山下智博(ともひろ)氏を起用し中国人観光客向け動画配信にいち早く対応。インフルエンサーマーケティング術やワンホンを起用した越境EC(外国語サイトを設けて海外の消費者に販売)を目論む企業は増えていくだろう。

 海外市場まで揺るがすワンホン、さぞかし中国ミレニアルズには一人や二人、ご贔屓ワンホンがいるんじゃないかと思いきや、「私はワンホン好きじゃない」とバッサリ斬る女の子(米国在住中国出身)も身近にいた。日本人みんながユーチューバーに興味があるわけではないのと同じか? なんにせよ、7億人を超えるインターネットユーザーと北米の2倍強のEC市場を誇る中国マーケットに乗り出すなら、単なるセレブリティではなくワンホンで間違いない。

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Text by Shimpei Nakagawa
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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