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  • Jan 4, 2017
55ヶ国1200人、若者のベッドルーム。 天井から覗く“世界の世代のリアル”「My Room Project」
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「世界中にいる自分の同世代って、どんな部屋でどんな暮らしをしているのかなって」

ふとした好奇心に駆られた、30歳。ミレニアル世代生まれのJohn Thackwray(ジョン・サックレー)。6年前から自分の足で世界を旅し、同世代の部屋にシャッターを切りはじめた。

6年間同じアングル。天井から覗く55ヶ国1200人の部屋

ROOM#024 – JOSEPH – 30years ol d – Artist – Paris - France
ROOM#024 パリ・フランス、ジョセフ(30歳)アーティスト

「My Room Project(マイルーム・プロジェクト)」は、南アフリカ生まれフランス人のジョンが、世界中のミレニアルズの部屋を撮影する、シンプルで明解なプロジェクトだ。
 都会育ちに田舎育ち、富裕層に貧困層、現代的で伝統的。写し出される部屋のビジュアルに、被写体のバックグラウンドは十人十色。が、全作品の共通点は、「この角度からなら全体を見渡せるから」とどれも真上からのアングルであること、主が部屋の中央に座っていること、そしてその彼らが80〜90年代に生まれたミレニアルズ世代であること。

 遡ること2010年。「世界中の同世代の部屋を撮影し、そのライフスタイルを知る」をコンセプトにプロジェクトを開始。訪れた国では18歳から30歳の40〜60名の男女を撮影し、必ずそれぞれが人生に直面する困難やライフスタイルを取材した。現在までにその数は、55カ国で1200人の部屋にのぼる。

ROOM#256 - RYOKO - 25years old –  IT Engineer - Tokyo – Japan
ROOM#256 日本・東京、リョウコ(25歳)ITエンジニア

ROOM#205 - GULLÉ - 29years old  - Actress - Istanbul - Turkey
ROOM#205 トルコ・イスタンブール、グール(29歳)女優

 自分の足で旅し撮影。バックパッカーの趣味の延長かと思いきや、本職は映画プロデューサー兼フォトグラファー。撮影の旅から帰国すれば、ソニーやコカコーラのCMにアーティストのMVといった舞い込む仕事をこなし、個展の準備に追われる忙しい日々を過ごす。敏腕プロデューサーだ。

費やす時間は、撮影1に被写体探し9

 趣味の延長と、旅先での新しい出会いに繋がればいいなぁ程度で、パリの友人宅からはじまった撮影。
「最初は構図や配色を重視してたんです。でも、取材を重ねるに連れて、彼らのバックグラウンドにフォーカスするようになって」。
 戦争中にすべてを失った難民キャンプに住むシリア人の話、借金に苦しむメキシコ北部の囚人の話。現実味のない現実を知るうちに、世にリアルを発信せねば、と使命感が芽生えた。お気に入りの1枚は?と聞けば「想像し難く非現実的で、心に響くストーリーを兼ね備えたもの」と即答する。

 ジョンの足が向く先は、これまで訪れたことのない国だ。特にこれまで知らなかった文化やコミュニティを好む。現地ではSNSを駆使したり地元のNGOと協力したり、たまにストリートで直接声をかけたり。

thumbnail_ROOM#385 - PEMA - 22years old - Bud dhism Student - Katmandu – Nepal
ROOM#385 ネパール・カトマンズ、ペマ(22歳)仏教徒/学生

thumbnail_ROOM#348 - ASHA - 17years old -Housewife - Bamansemilya - India
ROOM#348 インド・マディヤ・プラデーシュ、アシャ(17歳)主婦

「だいたい毎回、撮影時間に1割、被写体を見つける時間に9割を費やしますね」と、撮影への道のりは、一朝一夕にはいかないのが現実。

 右も左も分からない地で、見知らぬ者の家に上がり込むんだから、プロジェクト内容をしっかり理解してもらい、信頼できるネットワークを確立するための時間は惜しまない。

 撮影時は一切強要はせず、被写体の自由を尊重する。「自慢の品を引っ張り出してくるも良し、見せたくないものは隠すも良し」。快く撮影することが重要なのだ。

写し出される、世界の“リアル”

 実際に訪れたからこそ知れたことは多かった。たとえば、貧困は暴力に結びついているイメージがあった。が、「貧しいコミュニティは必ずしも暴力的ではない」ことを学んだ。実際、先進国でよりも発展途上の貧しい国での笑顔を多く見かけた。

 そして、家族の認識の違い。アフリカなどいくつかの文化では、父親が権力を握る。家族は父親に敬意を表し、父親は家族に決定を下す。それに比べ主に西欧諸国の他の文化では、子どもたちは家族の中心にいる。両親は、彼らのために多くの犠牲を払う。

thumbnail_ROOM#867 - EZEKIEL - 22years old - Guerrier - Echo Manyata - Kenya
ROOM#867 ケニヤ・マサイ族の村、エゼキエル(22歳)、兵士

「無知は、人類の最大の罪だと思うんです。明日を担う僕らの世代は、こういったリアルを知る必要があるんです」。作品を目にした人が、少しでも自分の知らないリアルを知ってくれたら本望だ。「金持ちとか、貧乏とか。現代的な暮らしだとか、伝統的な暮らしだとか、関係ないんです。世界の変化に合わせて、文化や伝統を変える必要はない」。

 ジョンが写し出すのは、たんに「部屋とその主」ではない。長い年月に、膨大な労力を費やし、被写体にフィルターをかけることなく取り組んできたこのプロジェクトは、この世代を取り巻く世界のリアルを写した証だ。「My Room Project」は、ライフスタイルの多様性、伝統の重要性、腑に落ちない不平等を認識させる。

John Thackwray
WEB/FB

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Photos by John Thackwray
Text by Yu Takamichi

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