Kinfolk・元クリエイティブディレクターが“マリファナ雑誌”創刊「ノウハウ生かしつつ」Broccoli Magazine
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最近では業界の成長とともにマリファナ自体の野蛮なイメージも薄まりつつあってか、「自分はスモーカーだと公言する女性が増えています」と、“彼女”も断言。

彼女、とは、いわゆる上質なライフスタイル誌の代名詞『Kinfolk(キンフォーク)』のクリエイティブディレクターのアニヤ・チャーボノー。…おっと、元・クリエイティブディレクターか。というのも、アニヤ、この度独立して新たなマガジンを立ち上げ、その編集長兼クリエイティブディレクターについた。キンフォークあがりのクリエイティブディレクターの新しい雑誌…どんなのか気になりますよね? 雑誌名は『Broccoli Magaizine(ブロッコリー・マガジン)』、なんと、マリファナ雑誌だ。

“感度高め女子”のためのマリファナ雑誌、登場(無料)!

 一昔前のマリファナ雑誌といえば、大体表紙に葉っぱがドーン。ちょっとくすんだ緑に背景は黒、“いかにも”というイメージで、堂々と「この雑誌、好きなんだ」なんていえるものでは決してなかった。

「ファッション、アート、カルチャーに対する感度の高いクリエイティブな女性が気軽に手に取れる、美しいマリファナ雑誌が必要だと思ったんです」。そう話すのがアニヤ・チャーボノー。先述したが、キンフォークの元クリエイティブディレクターで、現在『Broccoli Magazine(ブロッコリー※・マガジン)』の立ち上げ人であり、編集長兼クリエイティブディレクター。

 ホットな街ポートランドから年3回、アメリカ・カナダに発信予定。現在は創刊号のプレオーダー受付中だ(11月30日に送付開始)。キンフォークで腕をふるった女性のマリファナ雑誌のディレクション、一体どんなもの? これまでと一線も二線も画す雑誌がどうやって作られているのか知りたくて、スカイプを繋げてもらった。

※ブロッコリー。スラングでマリファナの意。

「キンフォークでのレイアウトルールを使いつつ。でも、ちょっとふざけてみました」

cover_NEWdrop copy『Broccoli Magazine』創刊号

 アニヤ(34)は3年半、キンフォークの企画からデザインまで一連の工程を監督。「雑誌作りのノウハウをゼロから学んだのはキンフォーク。楽しかったし、才能ある人たちとも働けた」。
 この夏退社した理由は「いちクリエイティブ女子として、新しいモノを創りたいという気持ちが強くなった」から。で、ネクストレベルのテーマに選んだのはマリファナ。「Cannabis’s part of my life.(マリファナは生活の一部)」という彼女、はっきり言ってキンフォークとマリファナがあんまり似つかないのでびっくり。だが、“似つかない”こそ世に出ているものがいかに偏っているかの証拠で、「こういう雑誌(ブロッコリー)を待ってたって人、少なくないと思うの。わたしのような女性は多くいるはず」。キンフォークのような暮らしをする女性だって、マリファナを吸う。これが現実だ。

 キンフォークからマリファナ雑誌!まじか、すごい決断とハタから思ったが彼女にとっては自然の流れだったとのこと。だが、事実としてキンフォーク元クリエイティブディレクターの肩書きからは一変し、やることも「挑戦的で実験的。これまでマリファナ誌に携わったことなんてなかったから。しかも無料なので、ちょっと勝手が違います」。

 現在、ブロッコリーの編集部は全員女性。なので「自然と女性好みのコンテンツ制作やアプローチがしやすい」そうだ。デザイナーのジェニファーも、コミュニケーション・ディレクターのジェシカもキンフォークの元同僚。元キンフォークチームがつくるマリファナ雑誌、ということか。キンフォークが夫婦とその友人らによって創られたように、ブロッコリーもまた「スモール・ギャザリング」※から成っている。

 キンフォークといえばシックでミニマルなデザインに定評がある。キンフォークっぽい=上質なライフスタイル、が確立され、逆にキンフォークっぽい写真やデザインを見れば(キンフォークっぽい写真の撮り方、加工の仕方なんてのもある)=上質、と人が思うほどに、スタイルというよりもはやいいライフスタイルの見せ方の“規範”を確立してきた。ブロッコリーもそれを追うが、目指す世界観もしっかりある。

※Kinfolkのサブタイトルで、家族や友人といった小さな集まりの意味

p24-25
p14-15
p54-55
『Broccoli Magazine』創刊号より。

「美しいレイアウトは双方に共通します。でもブロッコリーでは、もうちょっと奇妙に。かつキンフォークにはない皮肉とユーモアを織り込むようにしているの」。
 黒を基調としきちんと整列された文章に、余白を活かし読ませるデザイン。そういったキンフォークから受け継ぐレイアウトルールを大半に使用しながら、たまに時計回りに文章をグルグル配置してみたり(よ、読みにくい…確かに奇妙だ)。ルールを程よく破り、60年代を匂わすサイケデリックさを落とし込む。当たり前だが、キンフォークでは絶対お目にかかれないマリファナ写真だって、表紙に堂々鎮座。「これはあくまでマリファナ雑誌。真面目になりすぎる必要はないわ」

「マリファナのある暮らし」な企画作り

 さて、次は企画面について。「マリファナ雑誌」とはいうものの「よっしゃ、ストーナーカルチャーについて紐解きまっせ、お嬢さん!」というどストレートなものではない。キンフォークがあらゆる企画テーマを用いつつも、「“それ”がある光景、情景、暮らし」と個々にフォーカスしながらも全体像を捉えた余白で美しくまとめあげたように、こちらも「マリファナのある暮らしの光景(もちろん、ミニマルに芸術的でファッショナブルに)」だ。なので、「これまでのマリファナ雑誌の企画といえば、品種解説や栽培方法だったり、それ自体に焦点を当てたものがほとんどでした」。そんな既存のマリファナ雑誌と差別化するため、ブロッコリーでは「マリファナ自体に特化した企画作りはしません」

 創刊号では「マリファナが堂々と表紙に鎮座」、マリファナどーんはこれまでの雑誌と一緒だが、マリファナに奥ゆかしさがでてる。どーんてか、ふぁさ…って。いい匂いしそうだしなんか竹のイメージっぽい(笹か?)。

 ちなみにこの表紙の企画は「日本の生け花」を引き合いに出しつつ、“A Weed is no more than a flower in disguise(マリファナは姿を変えた花に過ぎない)”という詩的表現を紹介。マリファナの合法化で購入方法が変わったことへのノスタルジーを綴る記事は、「かつて期末の数学のテスト前に吸ったこと」などを回想し「マリファナが違法だったからこそ存在した繋がり、コミュニティ」を言及した、作家のエッセイに近い。また、ファッションストーリーなどマリファナにこれ関係あるのかな? というようなコンテンツも挿し込まれていて、つまりこれは、ブロッコリーがターゲットとする25〜40歳のクリエイティブ業界に身を置く(あるいは興味がある)女性とマリファナの関係・彼女らのマリファナのある上質なライフスタイル、というのが適切な表現だろう。キンフォークとの女性読者像とも近いため、キンフォーク時代の知識と経験は、ターゲット層の好みの理解にも役立っているそうだ。

p44-45
p68-69
ちなみにこのページが先ほどの「文章を時計回りに配置した」レイアウト。
p16-17
『Broccoli Magazine』創刊号より。

 ストレートにストーナーカルチャーを紹介しているものももちろんある。が、そこでこそブロッコリーの一貫したクリエイティブ感覚が見える。たとえばこの、「アップルパイプ」について紹介したもの。りんごに穴を開けてマリファナを吸うためのパイプを作り「りんご果汁の染みたマリファナ」を楽しめる、というものだが、このビジュアル。それから、りんごはオーガニックのものを、だって。

ブランド協賛も取れるマリファナ雑誌

 コンセプトがマリファナゆえ、ブランドとパートナーシップを結ぶのは困難と思いきや。「ビジュアルと雑誌の方向性を伝えることに尽力した資料のおかげで、ブランド側からの反応はどこも好感触」とのこと。もちろんこの資料作りもクリエイティブディレクターの手腕があってこそ。現在、7つマリファナ系ブランドが協賛中。またファッション、ビューティー、ヘルス系からの反応も良く、「特にキンフォークを知っているブランドからの信頼度は高いと感じたわ」。

 きれいな雑誌になってますね、どころか、「ギャラリーにあってしっくりくる」までに仕上がっているブロッコリー・マガジン。取り扱いの問い合わせもきているというから、キンフォークの隣にブロッコリー、なんてのも目撃できるかも。オフィシャルに世に出る11月30日。感度高め女子の反応を想像すると、いまからニヤニヤしてしまう。

Interview with Anja Charbonneau

Broccoli Magazine

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Photos via Broccoli Magazine
Text by Yu Takamichi, edited by HEAPS
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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