ボスの右腕〈コンシリエーリ(ファミリーの相談役)〉幹部よりも上?反対意見も言う“頭脳派の仕事”—Gの黒雑学

【連載】米国Gの黒雑学。縦横無尽の斬り口で、亜米利加ギャングの仮面をぺりぺり剥がし痛いところをつんつん突いていく、十三話目。


「友は近くに置け、敵はもっと近くに置け」
(映画『ゴッドファーザー』から)

「友情がすべて」のマフィオーソの道。しかし、
昨晩、盃を交わした友が敵になる。信頼の友の手で葬られる。
“友と敵の境界線は曖昧”でまかり通るワイズガイのしたたかな世界では、
敵を友より近くに置き、敵の弱みを握り、自分の利益にするのが賢い。

ジェットブラックのようにドス黒く、朱肉のように真っ赤なギャングスターの世界。
呂律のまわらないゴッドファーザーのドン・コルレオーネ、
マシンガンぶっ放つパチーノのトニー・モンタナ、
ギャング・オブ・ニューヨークのディカプリオ。
映画に登場する不埒な罪人たちに血を騒がせるのもいいが、
暗黒街を闊歩し殺し殺されたギャングたちの飯、身なり、女、表向きの仕事…
本物のギャングの雑学、知りたくないか?

重要参考人は、アメリカン・ギャングスター・ミュージアムの館長。
縦横無尽の斬り口で亜米利加ギャングの仮面をぺりぺり剥がす連載、十三話目。

***

前回は「ギャングの葬式」について町中が目撃したギャングボス、フランキー・イェールの絢爛豪華葬儀や、敵ファミリーの不幸には闘争心をいったん鎮めるギャングスターたちの礼儀について話をした。今回は、ギャングボスの右腕「コンシリエーリ(相談役)」の話。実は、幹部より位は上?、ボスに「NO」も言わなければならない仕事など、その稀有なポジションについて解明していこう。

▶︎1話目から読む

#013「武闘派ファミリーを支える、頭脳派の直近アドバイザー〈コンシリエーリ〉の品位」

ボスに「NO」も言える?「コンシリエーリ」という役職について

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映画『ゴッドファーザー』好きには、贔屓にしている登場人物というのがひとりやふたりはいる。王道ではあるが、父ヴィトー・コルレオーネの死後に暗黒界の帝王を継いだ三男マイケル。それとも、屁っ放り腰が憎めない次男フレッド? いや、若きマイケルにおいしいパスタのつくり方を教えたファミリーの太っちょ幹部、クレメンザもいい味を出している。しかし、ゴッドファーザーファンからも絶大な人気を誇るキャラといえば、名優ロバート・デュヴァル演じるトム・ヘイゲンという男ではないだろうか。一家の養子でファミリーのなかで唯一イタリア系でなく、ドイツ系の血筋をひく。にも関わらず、ドンの側近として仕え、顧問弁護士としても冷静沈着な判断と仕事さばきでファミリーを支える頭脳派である。その彼トムの役職を「コンシリエーリ(Consigliere)」という。

 マフィアファミリーの組織構造において、コンシリエーリは、ボス(首領)、そしてアンダーボス(副首領)の次に位の高いポジションだ。ちなみにその下に続くのは、複数のカポ(幹部)と各幹部の下で働くソルジャー(構成員)である。
 コンシリエーリはイタリア語で「相談役」という意味で、ボスの直近のアドバイザーでありメッセンジャー、そしてネゴシエイター(交渉人)という大変重大な任務を背負っている。トムのように、弁護士資格を保持する場合も多く、ときに暴走しがちな武闘派のファミリーを法の観点から論理的に統制し、組織としての秩序と品格を保つ監視役
といえるだろう。

 コンシリエーリの職務内容には、以下のようなものがある。

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一、他ファミリーとのミーティングには、代表としてボスと出席。政府による調査が入った際にも代表役を務める。
二、揉めごとがある際の仲介役になる。
三、政治家や判事などの重要人物とボスをつなぐ連携役になる。
四、ボスやアンダーボスに直接話すことを禁じられているソルジャーたちの、また何らかの事情で自分の相談ごとを直属の上司であるカポにできないソルジャーの相談役になり話を聞いてあげる。
五、ボスの計画(ビジネスプランなど)を補佐する。

 特にボスのプランを監査するとなれば、現実的な意見が求められるため、ボスの考えすべてに賛同する「イエスマン」にはなってはいけない。必要なときには、否定的な意見もしっかり伝えなければならないコンシリエーリは、ファミリーのなかでもボスに「NO」が言える数少ない人物のひとりであるという。

 このように、コンシリエーリはファミリーのすべての地位のメンバーと繋がり、ボスの人間関係も秘密も知っているため、少しでも口が軽ければ一家を没落させてしまう力さえ秘めている。そのため、このポジションに就くことができるのは、ファミリーに忠誠心があり、兼ねてからボスが厚い信頼を寄せる人物だ。またコンシリエーリがどれだけ特別なのかは、「通常、コンシリエーリは敵ファミリーの標的にならない」というギャングの掟が物語っているだろう。

ラッキー・ルチアーノが認めたコンシリエーリ

 コーサ・ノストラの最高幹部だったマフィア中のマフィア、ラッキー・ルチアーノは、アイルランド系ギャング・ユダヤ系ギャングを構成員としてイタリア系組織犯罪に入れ、ギャングという構造をビジネスライクに近代化したことでも知られる革新的な男である。一説によると、コンシリエーリという役職をファミリー内に新たに設けたのもルチアーノだといわれているのだが、その彼がコンシリエーリの座に指名したのは、フランク・コステロだった。動物園の猿の信頼をも得てしまう男であるから、相談役としてルチアーノを支えたことも想像に容易い。

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ギャングの大ボス、ラッキー・ルチアーノ。
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ルチアーノ直々でコンシリエーリに指名された、フランク・コステロの肖像画。

 最後に、“ダッパー・ドン(粋なボス)”のあだ名で国民からも親しまれたガンビーノ家のボス、ジョン・ゴッティ。あつらえた高いスーツで雑誌の表紙やメディア露出し、派手な生活を送っていた現代最後の“ハリウッド映画的なマフィア”・ゴッティだが、彼のコンシリエーリには、ゴッティがボスになる以前から支えていたサミー・グラヴァーノ(のちにフランク・ロカシオという男がその座を引き継いだ)が就いた。しかしグラヴァーノは、最終的に司法取引でファミリーを裏切り、その結果ゴッティは終身刑になった。最後の最後で元コンシリエーリに裏切られてしまったダッパー・ドンだったのである。

 次回は「ギャングの素顔」。アメリカンギャングスターミュージアムの館長さんが実際会ったことのあるギャングの生バナシ(一番愉快なギャング、一番ビビったギャング)を交え、武器を置いたGの素を暴いていく。

▶︎▶︎#014「素の顔もセレブそのもの。そして、24/7怖いギャング」

Interview with Lorcan Otway

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重要参考人
ローカン・オトウェイ/Lorcan Otway

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1955年ニューヨーク生まれ。アイルランド系クエーカー教徒の家庭で育つ。劇作家で俳優だった父が購入した劇場とパブの経営を引き継ぎ、2010年に現アメリカン・ギャングスター・ミュージアム(Museum of the American Gangster)を開館。写真家でもあるほか、船の模型を自作したり、歴史を語り出すと止まらない(特に禁酒法時代の話)博学者でもある。いつもシャツにベストのダンディルックな男。

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Museum Photos by Shinjo Arai
Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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