異業種が自由に横断しはじめた日本のブルーカラーたち。技術と製作意欲が集結、製作所「サタデーファクトリー」
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現代は副業の時代—それもお金稼ぎが目的ではなくより確かなアイデンティティの確立、あるいは拡大か(好きなことをがんばるというサイド・ハッスルという言葉も登場)。ところで、その副業というものにおいて無意識的に「ホワイトカラー」起点のイメージがないだろうか? どこかの企業の社員がライターをする音楽をやる、など傍でフリーランスとして動く、という。

いま、日本のブルーカラーたちの副業がおもしろい。精密な技術を有する木、土、鉄、石、紙、宮大工の建設業・製造業の職人たちが、一つ前の世代では決してありえなかった異業種の横断を試み、自由なもの作りを開始した

“八人のブルーカラー”、日本横断の副業

 日本のブルーカラー。建設業と製造業に従事する人々。土木、石、鉄をはじめ建設業だけでもおおまかに分類して29種あり、ひとくくりに話すのは難しいが、共通して閉鎖的な業界だ。たとえば、知り合いとしか仕事をしたがらない「一見さんお断り」や「技術継承の機会が少ない」など。戦後の復興において成長を遂げた業界には、「元請け、下請け、孫請け、曾孫請け」のツリー構造が確立されていて「直接の上下だったらなんとか繋がることができますが、入り込むのは難しい。縦も横も閉鎖的なのがこの業界の特徴。でも、ぼくたちの代でそれは少しずつオープンになってきた」。そして「いまならSaturday Factory(サタデーファクトリー)ができると思ったんです」。

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描き手はサタデーファクトリーのメンバーの一人、溶接工。

 サタデーファクトリー、単純明快に「土曜大工」。「日本中の建設業、製造業に従事する人、つまりブルーカラーたちが各々の技術を用い、時に連携し、隙間時間にもの作りをして販売する」をコンセプトとする製作所だ。昨年の9月頃に本格始動し、「異業種同士のコラボレーション」を少しずつ実現しながらインテリアからアクセサリーまでを製作し販売している。
 開始から一年、取材に応じてくれた石屋の小田切知真(さとし)氏を含め、現在は宮大工、機械鍛冶屋、町工場、瓦屋、溶接工から8人(20代から40代前半)が参画。拠点はバラバラで埼玉、東京、静岡、大阪まで散らばり、遠隔でインテリアの連携製作を進めている。

製作企画の相談は「LINEでやりとり、図面は写真で投げます」

 いま(この世代)だからサタデーファクトリーができている、の最大の要因はSNSだ。「サタデーファクトリーはインスタグラムで認知されることが多いです。それから、製作アイデアやフローのやり取りは基本LINEを使って相談します。あとはフェイスブックでグループページを作ってみたり」。
 サタデーファクトリーが製作に使用する多くは、廃材と端材だ。彼らのいうことろで、これは「日本の、ぼくらが持ってる余剰資源の一つ」。端材や廃材は各種素材の流通において、あるいは現場にて必ず出る。売り物として使用することはできないが、素材としての価値は十分。食材でいえば規格外の野菜、というところか。

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こんな感じでやり取り。

 各業種の職人らが「今日はこんな廃材が出たけど、何か作れるかな?」とLINEでポンと投げる。一人がアイデアを出すと「あ、それならこっちでこういう端材があるから、こういうふうにできるんじゃないか?」と他の職人がアイデアを重ねてくる。それを石屋が図面にしてまた投げる。このカジュアルなやり取りですすめられるのも全員が図面を読むプロだからだ。コラボレーションならではのインテリアが生まれていく。


「機械鍛冶屋の一輪挿し」
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工場の巨大な機械のメンテナンスで生じるスクラップパーツを素材に使用。
特大のボルトとナットを機械鍛冶屋が一輪挿しに改造した
(納得のいく素材が出てこなければ作らない、という筋金入りの機械鍛冶屋です(笑)、とのこと)。

「古材と古鉄の花台」
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石屋ででた木箱を使用。ねじれていて硬くかなり扱いづらく手を余していたところ、
機械鍛冶屋が「鉄でフレーム」を作り、そこに木箱をあてはめて見事花台に。
使用している鉄は工場をメンテナンスする際に生じた古い端材。

「玄関ドアにくっつく大工の額縁」
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宮大工と瓦屋によるフレーム。シンプルに見えるがこれに行き着くまでかなりの試行錯誤を経ている。
シンプルでいながら職業人仕事、宮大工っぽい。

「古材と継石のローテーブル」
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石屋の木箱の解体材を、木が専門の大工にパスしてテーブルに加工。
倉庫で破損した石を丁寧に整えて天板に使用した。かなり初期に制作した一台。

 彼らはもう一つ、現役から退いた職人を余剰資源としてあげた。「現役の上世代をサタデーファクトリーの活動に巻き込むのは、やっぱり現状難しいところがあります。だけど、引退した職人さんでなら参加したい人も必ずいるはず。足場には立てない、でも確かな腕と技術があり、作りたいし教えたい、と」。技術継承という点においても、「これまでだとそこも閉鎖的でした。他人様に教える義理はない、というか、まあ職人柄っていうんですかね、良くも悪くも」。そこで、教えてもいい、教えたいというベテランにサタデーファクトリーに参加してもらえれば、次の世代に技術を受け渡す場としても機能させられると考える。日本のいぶし銀の職人の技術がみすみす蒸発していくのはもったいない。

「100分の1ミリの世界」無名のブルーカラーの製作意欲

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 副業であるサタデーファクトリーなら、好きなだけ「こだわり切れる」。ここが彼らの“本業”と違うところだ。依頼主のいる仕事では時間をかければかけるほど高くなってしまうため、コストに見合ったこだわり具合にセーブする必要がある。同時に「その自分が丹精込めて作ったものが、結局何に使われるのか、完成して何になるのかもわからないこともあるんですよ」。

 だから、「みんな、あれ俺がつくったんだって言いたい。そんな欲求もあります」。日本の建設業、製造業の腕と技術は世界に誇れるものだ。素人の肉眼では見切れない世界で精密な作業をこなし、限りなく精度の高い仕事をするものの、その結果である仕事の成果は街のどこかに溶け込み息を潜める。

「サタデーファクトリーの製作だと、自分の持っている技術を存分に出し切り、納得いくまでこだわる。ま、そのぶんそのできあがった製作物の売値は高くなるんですけどそのリスクは自分で負えばいい(笑)。そして、人の目に触れる機会ができる。で、俺、あれやったんだと胸を張れる」。

 石屋が町工場とコラボレーションしてテーブルを作ったとき。「町工場さんが、『これあと100分の1ミリプラスマイナス?』って聞いてきて」。木は比較的柔らかい素材なので押しつけあえばある程度は馴染むが、鉄は硬いのでそれができないために100分の1ミリの誤差で狂う。「ぼくは普段ミリの世界で仕事をしているので驚きました。同じもの作りでもまったく違う世界がある」。

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暇なときこそ活動期「日当仕事のアップダウンを無くしたい」

 本業ではこだわれないぶん好きにやる、という側面に加えて、サタデーファクトリーにはもう一つの狙いがある。それはブルーカラーたちの仕事の波を安定化すること。「ぼくらってよく、人手不足とか逆に余ってるとかいろいろ言われるんですけど、それって元請けが持ってる仕事次第、ってことなんですよね。だから、元請けの仕事のない時期は仕事が減る」。一人親方(事業主)が多い業界ならではの波だ。「それを安定化するんです。元請けの仕事がないときこそサタデーファクトリーの活動期。月収10万アップだ、そういったことも目標にしています。ブルーカラーの収入のボトムアップってところですね」。先月、やっと製作所の拠点の一つ目をつくった。集まって製作ができるように、と。ただし、どこにも中心的な存在は置かず、日本の各地で拠点ができてそれぞれが好き勝手に製作し、サタデーファクトリーは「コラボレーションする職人とお客さんを繋げる場所」としてカオスで自由なプラットフォームとして維持していきたいという。

 メンバーも認めているが、サタデーファクトリーでものを作っても極端にいえば売れなければ何にもならない。それでも、日の目を見るかわからないものにあいた時間を費やし、数ヶ月(人によっては年)をかけて「もう二度と同じものは作れない(作りたくない)」という余力ナシのもの作りをする。「普段はお金をもらっての製作ですから。製作をしてからお金をもらうって、また違いますよね」。
 すべての製作物に、誰の目も光らないところで職人にしかわからない手の加え方をする。瓦屋の廃材で作った星型のトレーには「折り返し」というかなり面倒な工程が加えられているらしいが、素人目にはわからず、パッと見の「すげえ」が起こるわけでもない。見えない社会の部品を正確に作り続けてきた、ブルーカラーたちの性(サガ)なのか。

「ぼくらって、どんなにいい腕と技術を持っていても世間では無名のブルーカラーなんです。でもそれでいいんです、ぼくらの製作を知ってもらえたら。そこから職人理解に繋がったらいいですね」。そして、「ぼくらの小さな晴れ舞台になったら、うれしいっすね」。無名のブルーカラーたちが内に秘めてきた製作意欲。パチパチとまだ小さくも確かに起こりはじめたその爆発は、間違いなく日本のもう一つの「価値ある余剰資源」だ。

Interview with Saturday Factory

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Saturday Factory

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All images via Saturday Factory
Text by Tetora Poe
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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