若者とキョリを縮める駅地下の“次世代キオスク“「メディアもリテールもエージェンシーもかね備えるのが僕らです」とは?
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ニュースは紙ではなくデジタルで読み、健康のために禁煙を心がけるーー、人々の生活習慣の変化に伴い、 街や地下構内の「ニューススタンド(キオスク)」は、姿を消しつつある。もう潮時か…。街のキオスクから悲痛な声が響く中、“次世代のキオスク”がニューヨークの地下鉄に現れたのは2015年のこと。

あれから2年、彼らは確実に店舗数を増やしている。なぜなら「これからの時代のリテールショップのあるべき姿を体現している」から。「ここは商品のショールームであり、マーケットリサーチのハブであり、プランドを紹介する広告エージェンシーでもあります」と、もはや我々の知っているキオスクではない

「新世代のキオスク」は、ただの小洒落た店ではない

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Photo by Roman Kraft

 その昔、ニューヨーカーは毎朝ニューススタンド(Newsstand) で新聞とコーヒーとタバコを買うのを習慣にしていた。ニューススタンドこと街角や駅構内のキオスクは、ニューヨークのランドマーク的存在だった。1950年代のピーク時には、シティ内に1,500以上ものインディペンデント・キオスクが存在していた*と言われている。それが今では、約300店舗まで縮小。その最も大きな理由は、テクノロジーの発展により人々の生活スタイルが変わったことと、タバコの値上げだといわれている。
 
*その多くは、移民や第二次世界大戦などの戦争から帰還したアメリカ兵によって営まれていた。 

 これ以上、生き残るのは難しいかもしれない。街のキオスクから悲痛な声が響く中、「ニュー・スタンド(New Stand) 」という名の「新世代のキオスク」が現れたのは2015年のこと。駅の地下道で、なんだか異様なまでに、まばゆい光とご機嫌な音楽を響かせながらー。

インスピレーションは日本の地下街

「日本の地下には、お洒落な雑貨屋や服屋、飲食店が並んでいるが、ニューヨークの地下には人を惹きつけるものが少ない」と。
 
 白を貴重にした近未来的デザインの店内には、従来のキオスクと同じように新聞や雑誌、飲み物やスナックも並ぶが、後者はやはり「ヘルシー系」。コーヒーはブルーボトル(ロケーションによってはジョー・コーヒー)、ジュースはコールドプレス。サンドイッチはブルックリンの人気ベイカリーのもの。“やはり”というのは、見た目がもう「ミレニアルズ(およびジェネレーションZ)向けです」といってはばからないからだ。ヘルシーとかネオンサインとか、小物のフォトジェニックさとか。若者の“好物”を抜かりなく抑えている。

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出典元:New Stand Official Website

 
 店内を彩る多くの商品は、流行を抑えつつも「誰もが知っているようなブランドは置いていません」という言葉通り、新興のオンラインブランドが多い。炭の歯ブラシや、オール・ナチュラル・コンドーム、ヨガマット、傘、ヘッドフォンなど。なんだか商品名だけ聞いていると一貫性がないように思えるが、どの商品も「インスタでいま話題のもの、話題のテイストである」という点で共通する。つまりこのキオスク、情報感度の高い層にとっては「これ昨日フィードに出てきたやつ。おすすめに出てきてた〜」なモノがいち早く揃っている店、なのである。

 いわば、セレクトショップのようなキオスク、といういままでにないコンセプトなのだが、ただ小洒落たモノを意外な場所で売っているだけではすぐに淘汰されてしまう。このニュー・スタンドがすごいのは、「リテールでありながらメディアであり、またその逆もしかりであること」だ。

リテールでありながらメディアでもある、とは?

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Photo by Priscilla Du Preez

 近年は「リテールはより多くの顧客にリーチするためにメディアになろうとし、(ウェブ)メディアは、広告収入を得るためにビューワー数などを売ってるだけではダメなので、モノも売ってリテールになろうとしている」と、次世代キオスクことニュー・スタンド共同創始者のアンドリュー氏。長年広告業界で活躍してきたベテランだ。

 ニュー・スタンドの特徴の一つは、専用のアプリと連動していること。アプリと連動することで「メディアもリテールも兼ねている」ということになる。アプリは無料でダウンロードでき、フェイスブック、もしくはグーグルのアカウントで会員になれる。試してみたが、登録はたったの1分程度で完了した。
 会員になるメリットは大きく3つあり、1、キュレートされた新しいニュースが毎日届く。2、オススメのプレイリストが聞ける。3、会員限定の商品割引クーポンが手に入る。また、アプリを使って商品を購入したり、毎日届くニュースやプレイリストをクリックるする度にポイントが貯まり、それが溜まれば貯まるほど、ニュー・スタンドにてお得な買い物ができるという仕組みになっている。ティンダーのように右へ左へとスワイプしていくと、次から次へニュースやプレイリストが現れる。その中の記事の一つをクリックしてみると、あらま。早速、1ポイントが溜まった。

 さらに、顧客側にとって非常に便利なのが、商品をアプリで予約して指定の店舗でピックアップできること。また、店舗で購入して自宅へ配送というのも可能というオムニチャンネルサービスだ。現在、アクティブユーザー数は約1万人。全体の売上の40パーセント以上がオンライン経由で、これからもっと増えていくと予想されている。

 ニュース・スタンドは、アプリでメディア機能を果たしながらユーザーを抱えることで、毎日店に来ない顧客とも途切れることなく繋がることができている。配信情報は朝と夕方、一日2回も更新され、アプリを開くたびに新しい情報が目に飛び込む作りになっている。そして、アプリを通して「 顧客のデータが取れる」というのも彼らにとって大きなメリットだ。こんな商品を買った人(主に若者)は、こんなニュースに興味をもち、こんな音楽が好きっぽい、と。若者の興味や消費行動は「謎が多い」といわれているご時世に、こういった情報が結構な額のお金に化けるのは言うまでもない。
        

モノを売って顧客のデータをとって、ブランドのプロモーションまで担う

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Photo by Jeff Sheldon

 

 ニュー・スタンドは、“キオスク”だけに狭いが、その小さなスペースで3つの機能を果たしているという。「ここは、ショールームであり、マーケットリサーチのハブであり、プランドを紹介する広告エージェンシーでもあります」。
 
“僕ら”はモノを売り、“消費者”はモノを買い、時にフリーサンプルをもらえたりする。そして、“ブランド”は消費者の購買データを入手できる」。そう話す彼ら4人の共同創設者は、マーケティングや広告、メディア業界で経験を積んできたプロフェッショナルたち。店の見た目こそポップでフレンドリー、なんだったらウェブサイトの文面に絵文字が使われていたりして、ちょっとチャラついている感すらあるのだが…彼らのビジネスモデルには隙はない。いまではマンハッタン内に全3店舗をオープンし、現在4店舗目をブディックホテル「モクシーホテル」内に建設中。今後は中部や西海岸にも進出予定だという。

 地下構内で、煌々と光を放ち、通行人たちを次々と確保。せっかくだから水でも買おうかなとレジに行くと「会員になるとお得だよ!」とアプリのダウンロードを勧められ、言われるがままにダウンロードするとこれが結構おもしろい。適当にクリックしていると、あっというまにデータを取られ、それが店(というかブランド)のビジネスに活用されているなんて知る由もない。新時代のキオスクは、なんだかコワイ…、もとい、スゴイのだ。

New Stand

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Text by Chiyo Yamauchi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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