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  • May 28, 2017
ラクダでサハラ砂漠横断、タイの三輪タクシーにクルーズ…「30年越しでブームの兆し」なあのツーリズムのこと、知ってる?
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サステナブル・ファッションにサステナブル・フード。サステナブル(持続可能な)という言葉はここ近年で随分と浸透したように思う。来たる東京オリンピックだって「サステナブルな大会目指します」。そのオリンピックの前に…今年2017年は「サステナブル・ツーリズムの年」らしいけど、知ってた?

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ところでまず「サステナブル・ツーリズム」ってなに

 サステナブル・ツーリズムの年と言われてもピンとこない。なんとなく予測はできるものの、そもそもサステナブルツーリズム、「持続可能な旅行」って厳密になに? 
「観光客の増加に伴って生じる観光地の過度な商業化や環境悪化、文化継承の阻害を避け、観光地本来の姿を求めていこうとする概念」らしい。平たく言えば「観光地と環境にマイナスにならない旅しましょう」。
 地域の文化や歴史遺産、自然環境を守りつつ、地域コミュニティの活性化も図る。これこそいわば観光の理想的な姿ですよ、と。はーん、流行りのサステナブルに乗った旅行業界の戦略だな? と思うも実は逆。これ、80年代後半にはすでに推奨されはじめていた。サステナブルの後追いどころか一番乗りだったかも?  
 今年になって、国連がその「サステナブル・ツーリズム」を銘打った。現在、持続可能(サステナブル)な観光を目指し、各国政府機関や観光産業が急ピッチで対策を進めている。理由はいわずもがな「溢れかえる観光客により、観光地が悲鳴をあげているから」。いや、世界各地であげ続けていた。みんなも知っている観光地の悲鳴を例にあげてみよう。

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屋久島:「ウミガメが海から出てきません」
珍しいウミガメの産卵を拝み、あわよくば記念に残そうと「ウミガメさんフラッシュ撮影」が相次ぐ。浜への無秩序な立ち入りにより、産卵やふ化に悪影響が。警戒心の強いウミガメ。上陸はしてみるものの、産卵せずに海へ帰ってしまうように(ウミガメの産卵期及びふ化期における夜間の自由な立ち入りを制限した)。

ボリビア・ウユニ塩湖:「もう塩の下にゴミ埋めるしか…」
日本でも人気の観光地、ウユニ塩湖。ここ、焼却場などの処理施設がないため、観光で出たゴミは埋め立て処分している。地中で分解されないスーパーのレジ袋やお菓子の容器といったプラスチックごみは再び地表に上がってくる。1日に排出されるゴミは約120トン、25メートルプール2杯分!(出典元)だという。

ペルー・マチュピチュ遺跡:「頼むから水筒持参してくれ」
天空の城ラピュタのモデルになったという説もある、人生で一度は拝みたい絶景・空中都市「マチュピチュ遺跡」。観光客は2002-08年で倍増(08年には約86万人が訪れている)。人口(推計)5000人の村(出典元)で、毎月1トンの投棄ペットボトルが回収されている(遺跡内へのペットボトルの持ち込みは原則禁止)。

他にも、
グランドキャニオン:野外で用を足すことからトイレットペーパーなどの紙ゴミが急増
タイの海:観光客やダイバーによってサンゴが傷つけられる。観光客が池に投げたコインをウミガメが飲みこんでしまう。 
など、あげればキリがない。

 マチュピチュ遺跡は筆者も行った(曇ってて全然見えなかったんだよなそういえば)。スマホにいい思い出を詰め込んで「また行きたい!」なんて思っていたが、その地にはゴミが積まれていたんだな…。
 各地の散々な状況を危ぶみ、「過剰な観光客によって生じる観光地の過度な商業化、環境悪化、文化継承の阻害を避け、観光地本来の姿を求めていこうとする概念」サステナブル・ツーリズムを取り入れましょう!と、今年改めて提唱されたわけだ。
 では、サステナブル・ツーリズムの実践とは「気をつけながら旅行すればいいのか?」。注意を促すだけでは劇的な変化は生まれるはずもない。サステナブルな旅をする、という概念を広く行き渡すには、旅行業界が牽引する、サステナブル・ツーリズムに直結する観光ビジネスが必要なのだ。

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宿も移動手段も「クルーズ旅」もエコ。だがそれが魅力的

 世界は旅人で溢れかえっている。世界の海外旅行者数は7年連続で増加し、昨年は3.9パーセント増の12億3500万人(国連世界観光機関調べ)に及ぶなど、観光人口はうなぎのぼり。
 そして、同じく上昇を見せるは、サステナブルトラベル専門の旅行会社やエコフレンドリーホテル(*)。 続々と登場してきている

*節水と再生可能なアメニティ、リサイクルなどで廃棄を削減する環境に優しいホテル。なかにはソーラーパネルで電力生産、建物にリクレイムドウッドの素材を使用しているホテルもある。

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 たとえば、オーストラリアのサステナブル旅行会社「イントレピッド・トラベル(Intrepid Travel)」。カーボンオフセット「CO2の排出をできるだけ削減するよ!(*)」な旅を提供。1000ほどあるツアーすべては「ローカルに根付いた交通機関での移動+地域密着型の宿泊施設のみ」という徹底ぶり。
 大手ホテルチェーンには泊まらない。タイだったら三輪タクシー、サハラ砂漠だったらラクダ乗りなど、なるべく現地特有の移動で、現地の文化を守りながら現地コミュニティの活性化を促すというわけだ。
 ちなみに、あの環境保護活動に熱心なハリウッド俳優レオナルド・ディカプリオ(レオ様)は、来年カリブ海の国ベリーズに完全エコフレンドリー・ホテルを建設する予定

*日常生活や経済活動におけるCO2(カーボン)の排出をできるだけ削減し、直接削減することができない排出に対しては、植林やクリーンエネルギー関連事業への投資などで相殺する。

 さらに、サステナブル・ツーリズムに貢献しているのは、ちょっと時代遅れ(?)感もある「クルーズ客船」の旅
 クルーズ会社「ペレグリン・アドベンチャーズ(Peregrine Adventures)」は今年、10のカーボンオフセットコースを用意。同社だけでなく多くのクルーズ会社が、ガソリンの代わりに燃料電池と天然ガスを使用した“環境に優しいクルーズ客船開発”に目下奮闘中だ。クルーズの旅というと、年配富裕層の余暇、というイメージが強いが、クリーンな船の旅なら、サステナブルと新しいものに敏感なミレニアルズにもウケそうだ。

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でも、エコだから!だけじゃリピートしないよね。

 遡れば1980年代後半にはすでに存在していたサステナブルツーリズム。これがからっきしダメだった。なぜか? 80・90年代といえば「旅はリッチに」の時代。日本は特にバブル景気で、海外旅行に出かけては高級レストランにブランド物まとめ買い、「贅沢・散財」が当然の風潮…。隙間なく札ぎゅうぎゅうの財布のように、サステナブルが入り込む隙なんぞなかった。

 時は流れ30年、ついにサステナブル・ツーリズムが日の目を見そうだ。それはサステナブルというコンセプトがジャストフィットした世代であり、現代最大の消費者であるミレニアルズの登場に寄るところは大きい。旅行好きだし。
 事実、その兆しは数字にも現れており、世界最大宿泊予約サイト「Booking.com(ブッキング・ドットコム)」が各国の旅行者を対象に行ったアンケートでは「エコ・フレンドリーな宿泊施設に最低でも一度は泊まってみたい」と回答した旅行者は65パーセント。世界レベルで旅人たちのサステナブルツーリズムへの意識は徐々に高まっている。

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 そのツーリズムをリピートするかどうかは「純粋にそのツアーや宿泊施設が楽しいか・おもしろいか」にかかっていると思う。エシカルファッションの「デザインが良くて手に取った結果、エシカルであると知ってもらうのが一番」と同じで、旅行会社の工夫溢れるツアー(先述の砂漠のラクダ移動とか)が「いままでと違う旅行したい。人と違う旅行したい」という層に、純粋にアピールし「結果エコだった」というのがベストなんだろう。そこから、旅行はエコフレンドリーが当たり前、になり「観光地にマイナスになるって最悪じゃない?」と根づき…。
「サステナブル・ツーリズムの年」という標語だけが一人歩きしないよう、魅力的なエコ旅をいかに提案していくか。やっと土壌ができた世界のサステナブル観光業界は、ここからが踏ん張りどころだ。

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Text by HEAPS
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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