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  • Jul 27, 2016
動き出す、肌の黒いミレニアルズ。“旅をしない人種”の「ブラック・トラベル・ブームメント」とは?
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2013年はわずか3%。そして2年後の昨年、19%。 
これは一年間に一度以上海外に旅に出た米国内のアフリカ系アメリカ人の割合だ。

これまで「旅とは無縁」だと思われてきた人種、黒人たち。その彼らがいま、パスポート片手に世界を飛び回っている。
その主たる層はミレニアルズ。旅行業界を賑わし「Black Travel Movement(ブラック・トラベル・ムーブメント)」といわれるムーブメントにまでなった、ブラック・ミレニアルズたちの動きに迫る。

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Image via Nomadness Travel Tribe

  

9割以上が黒人。旅のオンラインコミュニティ発足

 
 ブラック・ミレニアルズによるトラベルムーブメントを牽引するのはオンラインコミュニティ「Nomadness Travel Tribe(ノマドネス・トラベル・トライブ、以下ノマドネス)」だ。
「有色人種(people of color)のあいだで“旅に出ることのよさ”を共有しよう」「“有色人種は旅をしない”という偏見に打ち勝とう」との目的で2011年に立ち上げられたこのサイバー上のコミュニティ、いまや世界中に13万人以上ものメンバーがいるほど大きくなっている。

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Image via Nomadness Travel Tribe

「ノマドネスは旅する黒人たちが旅経験を共有できるプラットフォームね。旅する黒人たちをはじめとする“young diverse urban colored-travelers(若くて多様な有色人種のアーバントラベラー)”のホームのような」と話すのはノマドネス創設者で自身もブラック・ミレニアルズのEvita Robinson(エビタ・ロビンソン)、32歳。

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Photo by Hayato Takahashi

参加条件は、パスポートスタンプ1つ

 ノマドネスへの参加条件を問うと、「パスポートの入国スタンプ1つだけよ」。1回でも国外に旅をしたことがあり、旅の世界をもっと広げていきたいと考えるすべてのミレニアルズのためのオンラインコミュニティなのだ。
 と同時に、肌で感じることのできる”オフラインコミュニティ”としての面も果たす。世界各地から集まるメンバーでのグループ旅、それに加え年に一度ニューヨークでの“旅の協議会”などを開催。オンラインではじまり、オフラインの関係に発展させる。

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Image via Nomadness Travel Tribe

 発足から5年間で20回以上企画した、黒人のグループ旅シリーズYoutubeチャンネル『Nomadnesss X Trip(ノマドネス・エックス・トリップ)』は、世界中のいたるところにいる15〜35人のノマドネスメンバーが現地集合して世界各国を探索、その旅の様子をビデオに収めて放映する。
 参加したメンバーの旅先での思い出を蘇らせる、“タイムカプセル”としての役割も担っているそうだ。

 毎年9月には旅行業界人や旅のスペシャリストなどさまざまなゲストを招致し、「LGBTQの旅」「一昔前の黒人旅」などをテーマに旅についてパネルディスカッション(#NMDN ALTERNATIVE TRAVEL CONFERENCE)を開催。アーバントラベラーの育成に力を入れる。

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Photo by Hayato Takahashi

「黒人は旅に出ない」。偏見はこうして生まれた

 そもそも、なぜ「黒人は旅にでない」というステレオタイプが生まれたのか。その根元は人種隔離政策時代にまで遡る。

 その昔、“黒人が旅すること”は容易いものではなかった。宿では宿泊や食事の提供を拒まれたり、有色人種立ち入り禁止地区「Sundown Town(サンダウン・タウン)」では通行できない彼らに対し、安全に自動車旅行するためのガイドブック『The Negro Motorist Green Book (ザ・ニグロ・モータリスト・グリーン・ブック)』が発行されるほど、黒人が旅に出ることは危険なことであったという。

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Photo by Hayato Takahashi

 そんな歴史背景も手伝ってか、「黒人は旅に出ない」というステレオタイプを植え付けたのが、マスメディアの存在。
「新聞やテレビ、雑誌などのメディアに、“旅する黒人”は登場してこなかったわ」。そうエビタが語るよう、旅行客の役も旅の広告もモデルが有色人種ということは少なかった。

SNSに「自由」をもとめる価値観が肝

「でもね、SNSの登場によってそんな状況が180度変わったの。SNSがブラック・トラベル・ムーブメントを起こしたといっていいわ」。

 フェイスブックにツイッター、インスタグラムにスナップチャットには、若き黒人トラベラーが異文化に触れている写真たちが流れ、ユーチューブでは旅行中の動画がストリームされる。肌の黒い同胞が自分のまだ見ぬ土地に訪れる姿に、旅をしようと思い立つのだ。

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Image via Nomadness Travel Tribe

 人気の旅先は南アフリカやケニア、ガーナなどアフリカの国々、そしてカリブ海周辺諸国、ブラジルやコロンビアなど、黒人のルーツが残る国々。自分たちのルーツを辿る旅が多いそうだ。

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Image via Nomadness Travel Tribe

 さて旅をすれば自ずとか、ライフスタイルにも変化がある。

「“お金”があったとしても“自由”になる時間がなければ意味がないじゃない? ノマドネスメンバーの中には、平日は大都会で仕事をこなし、気持ちも少し週末モードに差し掛かる木曜にはパソコン一つで飛行機に搭乗、週末はジャマイカでビーチを目先に仕事をするひともいるのよ」

 大学に進学し、就職、結婚、家庭を持つ。マイカー・マイホームを手に入れ、犬を飼い、安定した老後生活に備える、と、親世代からの幸せの定説は通用しない世界のミレニアルズ。
 ブラック・ミレニアルズたちも例にもれない。特に女性は、子沢山で家庭に入ったきり旅行とは無関係だった母親世代から大きな変化を見せている。ノマドネスの90%は黒人、80%は女性たちだ。

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Image via Nomadness Travel Tribe

「インターネットが浸透したいま、これまでにあったルール、尺度がもう適応しない時代になってきていると思うの。新たな尺度でものごとや社会を作っていく最初の世代が私たち。職業だって自らで作り出せるし、ライフスタイルだって自分でアレンジできる時代」とエビタ。その時代は、ブラック・ミレニアルズたちにも浸透しているのだ。
 

参加者から主催者へ。ノマドネスが目指すもの

 これまでは旅路で参加者として世界各地のお祭りやイベントに赴いてきたノマドネス、今年からは“主催者”として現地の人たちと交流できるイベントを開くのだという。

 たとえば日本でアニメやゲームをテーマにしたイベントを開催したり、南アフリカでは地元の料理学校を訪ねディナーパーティーを開き、生徒が作った料理を堪能、料理代を彼らの授業料として寄付するなどし、受動的に参加するだけでなく、能動的に地元の文化や生活のなかに新たな交流の場を作ろうというのだ。

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Photo by Hayato Takahashi

「私にとって旅とは、Freedom(自由)とLove(愛情)ね。旅が人をopen minded(偏見のない広い心をもつひと)にするの」。
 ついこの間まで、旅と無縁の人種とされてきた黒人が旅に出て異文化交流をし、SNSでその姿を発信する。黒人たちが世界各地を知ると同時に、それは各地に黒人文化を知らせることでもある。

 ブラック・ミレニアルズ、つまり「旅する黒人たち」が巻き起こすムーブメントは、彼らのライフスタイルの変化はもとより、初めて世界各地と黒人文化とをしっかりと繋ぐのかもしれない。

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Nomadness Travel Tribe

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Photo by Hayato Takahashi
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Photo by Hayato Takahashi
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Photo by Hayato Takahashi

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余談:実は、黒人旅行革命の原点は「新潟県」だった
 
 ブラック・トラベル・ムーブメントの立役者ノマドネスだが、意外にも原点は日本にあった。大学卒業後、パリ、タイに住んだエビタが1年間過ごした土地、新潟県。

「私はその町で唯一の“黒人”だったわけ。生徒たちも最初は会ったことない人種の私に恐る恐るという感じだった」

 現地の小学校で英語を教える「エビタセンセイ」として人生で初めての“黒人”のいない街で1年を過ごした彼女。次第に心を開いてきた生徒たちと過ごし、海外で生活し現地の人と直接交流することが黒人への偏見を壊すことのできるチャンスだと感じたという。

 そしてエビタ、地球の裏側にある母国アメリカの家族や友人に、自分の住む日本というまったく異なった文化を届けるためにユーチューブ動画をはじめた。これが、ノマドネスの原型。
「ノマドネスは日本の新潟県からはじまったのよ。だから、日本は私の第二の故郷ね」と笑顔がほころんだ。

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Text by HEAPS, Editorial Assitant: Shimpei Nakagawa

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