元来、テーマも体裁も何もかもが“自由”である冊子として存在する「ジン」。だからこそ、その容(い)れものの中では「何をやってもいい」が唯一許される出版物ではないだろうか。自分で、自分のために作るジンっていうのも、もちろんアリだ。
![Karoshi_Cover_heaps](https://heapsmag.com/wp-content/uploads/2017/03/Karoshi_Cover_heaps.jpg)
ドイツ・ベルリンを拠点に活動するイラストレーター、パトゥ(Patu)が作るイラストレーションジンのタイトルは、「Karoshi(過労死)」。発音そのままに“karoshi”として、世界中で認知されている日本特有の社会問題だ。
ただこのジン、日本の社会問題「過労死」を根本的に問う、というものではない。
資本主義のこの世の中で「道半ばなフリーランス・無保険・不安定な生活」で悶々としていた当時のパトゥが、夢と仕事と私生活の間で葛藤する心の内を描いた、とってもパーソナルな一冊だ。
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![seite 08_heaps](https://heapsmag.com/wp-content/uploads/2017/03/seite-08_heaps.jpg)
主人公はおそらくパトゥ本人、20代半ば、不安定な生活に加え、理想と現実のギャップに心労する彼の内が、エキセントリックイラストで表現されている。どこか、つげ義春や伊藤潤二のような日本のホラー漫画を彷彿とさせる世界観。
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![karoshi_underwater](https://heapsmag.com/wp-content/uploads/2017/03/karoshi_underwater.jpg)
「『Karoshi』は日本社会を問題視したものでもなければ、社会に対し何かを投げかけるようなものでもない。当時自分の頭の中で起こっていたものをそのまま描き出した、とってもパーソナルなもの。ただ、このジンを作ったことによってぼくは救われた」
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「過労死」の名を借りて、外国人イラストレーターが内なる葛藤を描いたジン。ここから学べるのはジンのあり方だと思う。外の世界に向けたものである必要はなく、自分の内に内にと、どこまでも自分のためでいい。
いま現在、鬱屈(うっくつ)の日々を募らせる人。一度、自分のためのパーソナルジン、処方箋がわりに作ってみるのもいいかもしれない。
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All images via Patu
Text by Shimpei Nakagawa
Edited by HEAPS Magazine