あまり意識してなかったが、文化人には“プロレス好き”を公言する者が多くいる。最近では、プロレス好き女子のことを指す「ぷ女子」なんて造語まで生まれた。強さの権化としてなのか、堂々たる恰幅のせい、それとも強烈に放つキャラクター性なのか。いつの時代も絶えず特定多数の人々を熱狂的かつ魅了し、偏愛的に思いを寄せられる「プロレスラー」たち。
ロサンゼルス在住のイラストレーター、アダムも「ガキだったオレのスーパーヒーローは“プロレスラー”だった」。5年前からはじめたのが、イラストレーションジン『Dead Wrestlers(デッド・レスラーズ)』。残念ながらこの世にもう命なき往年のプロレスラーたちを集めた一冊だ。
誌面に並ぶのは、プロレスの名門家出身で新日本プロレスに参戦したこともあるオーエン・ハート(99年、試合中の事故が原因で死亡)、日本でも「虎の爪」のあだ名で知られるテキサス・トルネード(93年、自殺)、日本のプロレスラー蝶野正洋と一騎打ちして話題、ポルノ女優でもあったチャイナ(2016年、薬物過剰摂取で死亡)、初来日の際は入国審査に引っかかったという逸話も残す怪しい風貌のポール・ベアラー(13年、心臓発作で死亡)など。
オーエン・ハート
テキサス・トルネード
チャイナ
ポール・ベアラー
「残念ながら、多くのレスラーが短命だったり、不自然な死を遂げているんだ。だからジンでは、彼らの強烈な個性ではなく、その悲劇に目を向けてほしいと思い制作した」。80・90年代、毎日のようにテレビで流れるWWE(世界最大の米プロレス団体)の試合を食い入るように見つめていた元“プロレス小僧”は話す。
再三にわたって囁かれる「レスラーの短命さ」。『デッド・レスラーズ』に並ぶレスラーたちの企み顔や闘志むき出しの表情。その裏には人々の血を沸かせるために身を削ってリングに立ったプロフェッショナリズムが隠れているのだ。
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All images via Adam Villacin
Text by Shimpei Nakagawa
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine