たきたてご飯に生たまごおとす瞬間って、無意識に息止めてません? すでにたまごのソースがたっぷり絡んだカルボナーラにさらに卵黄をおとすギルティそそるロマン、それからふかふかのスクランブルエッグを固めに焼いた薄焼き卵で巻く“スクランブルエッグ入りたまご焼き”の存在について(もしかして家だけ?)。
なんのこっちゃ、今日紹介したいジンはタイトルだけで考えを巡らせてしまう『Put A Egg On It(プット・ア・エッグ・オン・イット : たまごのせちゃお)』だ。
アンディ・ウォーホルのキッチンにて、晩餐会のポートレート。テキトー(で、うまい)レシピ集
たまご嫌いも安心して。『Put A Egg On It』はあらゆる料理にたまごを載せるフード・ジンではない。食とそれを通したあらゆる人の考え、経験談、レシピ、食べ物、食べ物と人のポートレートなど盛りだくさんだ。たとえば10号では、アンディ・ウォーホルのキッチンで皿を洗う友人たちのポートレートなんかも掲載。パーティー後の皿を洗う、楽しさと疲れの余韻がみえる中年の友人の笑顔がいい。“テキトーに作っておいしいレシピ集”も人気のコンテンツだ。
創刊は、まだまだフード・ジンが少なかった2008年。ブログに飽きてきたし、とはじめてから現在では「フード・ジンといえばプットアエッグ!」の大御所。アジア・ヨーロッパ・北アメリカの51都市にて展開中だ。
フード系のマガジンでよくある綺麗めとは一線を画し、「食と食まわりの体験の楽しさ、素晴らしさを伝える」というコンセプトをビジュアルで見せるよう、デザインにおいて「多めの余白」は避け、「背景は白よりも緑」と少しごちゃっと目に賑やか。道具散らばるクッキングや、汚れて重なる皿にスプーンとフォークが入り乱れるパーティーの楽しさを思わせる。おいしそうなご飯をきれい映して載せる食のマガジンではなく、食べかけの皿、かじった野菜、カットに失敗したケーキなども映し、食と食にまつわる人々のドキュメンタリーという感じ。
「食ってすごい。老若男女問わず盛り上がる万国共通の話題だもん。それに交友関係が広がるのって、大体テーブルを囲んでるときだしね」と、作者の2人組、R&S(ラルフとサラ、ブルックリン在住)。 そう、食のすごいところは会話の沈黙をおおらかに受けとめ(これはタバコでもお酒でもできる)、さらに、時には会話のまわし役にもなってくれるところ。「これうまいね、こういうので、もっと辛い料理をどっかの国で食べたことある」「へえ、そんなところ行ったの」なんて。もう少し直接的だが、筆者は納豆とかオムレツにちょい足しでうまいものって何だろうね?にはじまり(例です)、〇〇家の名物料理、そんなもの入れるの味噌汁に!?なんて話が大好きだ。
2013年からはポップアップショップも兼ねたイベント「IF I KNEW YOU WERE COMING, I’D HAVE BAKED A CAKE(来るって知っていたら、ケーキを焼いたのに)」も各都市で不定期開催。「食事を楽しみながら輪を広げているのを見て、最高だった。このジンそのものも、食べものの紹介というより、“人と繋がる経験のための手段”として作っているわ」。テーブルを囲めば、ましてや好きな食べ物が被ったりしちゃったら、もう何人だろうが他人ではいられない。
最後に、作者の二人からお気に入りのレシピ、「なんにでもつけたくなっちゃうサルサ」。プットサルサオンイット(サルサのせちゃお)!ってとこでしょうか。
〜プットサルサオンイットなサルサ〜
1、大量のトマトを半分に切り、断面を下にしてクッキングシートにのせる。オリーブオイル、塩、ブラックペッパー、それからガーリック少しを振りかけ、オーブンへ(オーブンがなかったら、フライパンで焼くのでも大丈夫)。
2、ちょっと焦げ目のつくいい色になるまで焼く。
3、取り出して、そのトマトと両手いっぱいのナッツ(ピーナッツやかぼちゃの種がグッド)、白玉ねぎのみじん切り、フレッシュなチリと、さらに塩を加えて混ぜる。
4、シアントロ(パクチー)の切ったのを加えたり、ライムを絞っても◎。
5、たとえば、あっためた柔らかいトルティーヤにのせて食べる。
(フレッシュチリがない場合はドライチリでもOK、香りはよりスモーキーに)
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Photos via Put a Egg On It
Text by HEAPS, Editorial Assistant: Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine