地元の若者たちが、お宅の芝生に「畑インストールします」。新たなアーバン・コミュニティ・ファームとミニマルな食生活
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「お宅の立派な芝生、ひょっとして、ただのお飾りですか。でしたら、食べられる芝生にしませんか?」
フロリダ州のオーランドの新しい「アーバン・コミュニティ・ファーム」の作り方がおもしろい。かつてのアメリカンドリームの象徴の一つだった前庭の芝生が「ミニ畑」に変わり、パッチワークのように街中、いや全米中に広がっているという。

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何も生み出さない芝生なら、いっそ畑にしちゃいません?

 青々とした前庭の芝生。それは、アメリカンドリームの象徴、庭つきの一戸建て住宅に欠かせないものだった。どの家庭もマイ芝刈り機を所有し、日々、芝の手入れに余念がない。そんな郊外のアメリカ人のライフスタイルは、映画で観たことのある人も多いのではないかと思う。フロリダ州のオーランドは「まさにそんな街」だった。
 
 一昔前までは、“持っていること” に意味があった前庭の芝生だが、「何も生み出さない、だけならまだしも、維持するために大量の水と環境汚染に繋がる除草剤を使わなければならない芝生になんの意味があるのか?」。地元の若者たちの目にはそんなふうに映るようになっていた。
   

「お宅の芝生を “食べられる芝生” にしませんか?」

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 自宅の芝生を畑にする活動、通称「ファームレット(farmlette) 運動」はいまから約2年半前にはじまった。運営するのは環境問題に取り組む非営利団体(IDEAS For Us)のプログラム「フリート・ファーミング(Fleet Farming)」のメンバーだ。地元の20〜30代の若者が中心となり、各家主に「コミュニティのために、お宅の芝生の一部を畑にしませんか?」と交渉を続けてきた。まずは2年間限定で前庭の寄付を募る、そんな草の根活動として広がりをみせている。 

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 システムはこうだ。個人(もしくは市)が所有する芝生の一部を寄付してもらい、ボランティアメンバーが畑に変える。そこでできた収穫物の5〜10パーセントは所有者へ、残りは地元のレストランやファーマーズマーケットで販売。売上金は、団体の運営費や材料費に還元される、という循環になっている。
 また、参加したボランティアは、ノウハウを無料で得られるだけでなく、収穫した野菜を割引価格で購入できる。つまり「ファームレット運動」は、参加者全員が利益を得られる好循環モデルの地産地消なのだ。

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半径3.5km以内で育む生活革命

「ぼくらが口にする食べ物は、産地から食卓にたどり着くまでに約2500kmもの旅をしている」
「食糧生産に起因する温室効果ガスの総排出量は、全体の1/3にも及ぶ」

 こういった現状を改善するためにフリート・ファーミングは、なんと「半径3.5km以内で取れる地元産の食材を食べよう」と呼びかけている。移動・移送はすべて自転車で、化石燃料の消費ゼロを目指す。

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 芝生を畑に変えるには、まず7週間ほどビニールで覆い、雑草を取りのぞき、マッシュルームコンポストで堆肥を作る。土に栄養分を整えてからトマトやニンジン、レタス、ルッコラ、いちごなどの種を植え、育て、収穫する。小さいながら立派なファームレットだ。
 各ファームレットを訪ねる月に2回のボランティアツアーには、小学生からリタイアした人たちまで、毎回15人ほどの老若男女が集まる。15人全員が自転車に乗って街を移動し、キャッキャッと楽しそうにご近所さんの庭いじりをするその姿は、訴求力抜群。
「うちの芝生もぜひ使って!」というオファー数は、オーランドだけで600を超えるという。

「予想以上の反響」に対し、代表のクリスとジャスティンはこう話す。

「たくさんの人々を巻き込めたことに驚き、希望も感じています。それだけ多くの人たちが街や環境を良くすることに興味を持っていたことがわかったので」。

「ある『食域』内に暮らしていることを意識すると、その地域へのつながりと責任感が生まれるのを実感しています」

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「農業の人」ではなく、「農業もする」がちょうど良い

 地産地消を推進する彼らだが、なにも地元に農夫を増やそうとしているのではない。もっと一人ひとりが農業をできる人になればいい、というのが彼らの考えだ。個人が家で料理や洗濯をするように「農業もする」未来を描く。

 事実、クリスとジャスティンも農業経験は「学校の野外活動くらい」で、ほぼ無いに等しかった。現在、日中は他のフルタイムの仕事をし、実際、土をいじるのは週末のみ。だからこそ「専門的な知識がなくても、また、長時間のコミットができなくても、環境問題や社会を良くすることに興味がある、というだけで参加できる敷居の低いプログラムにしたかった」と話す。
 
 ただ、敷居は低くありながらも、インパクトは大きいのがポイント。参加者に農業のノウハウを無料でシェアし、半径3.5キロメートル以内でできた野菜や果物のおいしさを実感してもらうことで、「個々の意識と行動は確実に変わっています」。

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 現在、フロリダ州だけでなく、カリフォルニア州のオークランドや、テキサス州のオースティンなど、ファームレット運動は全米各地に広がっている。
「アメリカには40ミリオンエーカー(約16万㎢)もの芝生があります。これらを生かさない手はありません。芝生が各コミュニティのファームレットに変われば、私たちの食事情はもちろん、どれだけ環境問題を改善できるか…」。ファームレット運動が秘める明るい未来の可能性、それはパッチワークのように全米中に広がっている。

Fleetfarming
@fleetfarming

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All images via Fleetfarming/span>
Text by Chiyo Yamauchi
Edit : HEAPS Magazine

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