消費者と商品を正しく繋ぐ、マリファナ薬局〈バドテンダー〉のお仕事。元プロ販売員に聞いた現場、“売人”とのブアツイ一線

マリファナ薬局、カウンターの向こう側から「いらっしゃいませ」。お客一人ひとりに適するグリーンを見定める〈バドテンダー〉のお仕事、拝見。
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加速する世界のマリファナシーンを追いかけてもう3年になるヒープス。これまでにもマリファナ価格比較サイトや、年配マリファナ起業家、今後のグリーン産業の鍵を握る「医療大麻大国」イスラエルなど、さまざまな角度から、グリーンなカルチャーの成長を観察してきた。

無視できなかったヘッドラインが最近も一つ。「マリファナ産業にはもっと多くの〈budtender(バドテンダー)〉が必要です」。バドテンダー? バーテンダー? Who Are You?
 

マリファナのバーテン〈バドテンダー〉? 元カリスマ“バドテン”に仕事内容を聞いてみた。

 昨年10月、カナダで娯楽用の大麻が合法化された。その勢いに続き、11月には韓国で医療大麻が合法化。タイでも一部、合法化。アジアまで広がるこの動きに、ついにマリファナ解放もここまできたか、と世界がどよめいたことだろう。止まることを知らないマリファナ産業だが、その拡大とともに需要も拡大している職業がある。その名もバドテンダー。バーテンダー…ではないぞ、「バドテンダー」だ。

 バドテンダーは、マリファナの隠語である〈バド(bud)〉と、客の注文にあわせて酒をつくる〈バーテンダー(bartender)〉をくっつけた造語。仕事内容は(お察しの通り)「ディスペンサリー*にて、マリファナを求めてやって来るお客さんをカウンセリングし、症状にあったマリファナを選ぶ」。お酒をおいしく調合、という塩梅で、マリファナについての相談や販売をカウンター越しに対個人で対応してくれる店員が、バドテンダーなのである。

*娯楽用大麻や医療大麻(要処方箋)を合法的に購入することができるマリファナショップ。

 いまだマリファナを断固拒否する日本からすると「はて?」な職業だが、米国では近ごろ需要高まる人気ジョブらしい。むむ、気になる。大麻薬局のカウンター越しにどんな仕事をこなしているんだろう。そもそも、どうやったらバドテンダーになれるのだろう。

 マリファナ業界が欲しがるバドテンダーは何者かを知るべく現役バドテンダーを探すが、なかなかすんなり見つからない…なかで、鮮やかグリーンヘアの“マリファナ・エデュケーター”を称する女の子を発見。元バドテンダーで、過去にはポートランドのベスト・バドテンダーに選出されたこともあるというエマ・チェーセン(26)さんに、あやしい匂いがふんわり漂う“バドテンダー”の仕事裏を聞いてみることにした。


元カリスマ・バドテンダーのエマ・チェーセンさん。

HEAPS(以下、H):26歳という若さで、急成長のマリファナ産業界にてエデュケーターとして、またコンサルタントとして活動しているエマさん。はじめてマリファナを嗜んだのは、さぞ早かったのかと。

Emma Chasen(以下、E):そうでもないかな。18歳のときだったっけ。

H:あら、意外と遅め。

E:当時住んでた州(ロードアイランド)では合法ではなかったんだけど、まわりは当たり前に吸ってた。「マリファナはバカな人たちが吸うもの」っていう偏見を抱いていたから、あえて遠ざかっていたこともあった。でも、入学したブラウン大学(アイビーリーグの超名門エリート校)で、世界の秀才たちの多くがマリファナを吸っていたことに気づいたのね。それで、それまで持っていた偏見が間違っていたんだ、って。

H:すみません、“バドテンダー=勉学とは縁遠いマリファナ常用者”と勝手ながら想像してしまってました。元カリスマバドテンダーは、ブラウン大卒…! 大学卒業後、すぐにバドテンダーに?

E:卒業後は、ガン研究の仕事に就いていて。でもガン研究産業が製薬会社の利益によって動かされていることを知って、すぐに辞めちゃった。それからオレゴン州のポートランドに移住。

H:東から西への大移動。なぜまたポートランドに?

E:もう直感(笑)。それまでポートランドに行ったことすらなかったんだけど、なんだかお告げが聞こえたような気がして。

H:思い切りましたね。そして、そのポートランドでバドテンダーに。

E:後にポートランドでも指折りのマリファナショップになる店で、すぐに雇われることになってね。

H:ガン研究員からマリファナ販売員に。これまた大胆な転身だ(笑)。

E:当時、家族は私のことをクレイジーだと思ってたみたい。アイビーリーグでの学歴を無駄にしてまでマリファナを売るなんて! って。

H:それに下世話ですが、稼ぎもやっぱり減った?

E:働きはじめたときの時給は12ドル50セント(約1,385円)。アイビーリーグの学位を取得してガン研究の仕事を経て、12ドル50セント。ポートランドでの生活賃金を考えると、低すぎる時給かな。

H:親御さんの言い分もわからんでもない(笑)。バドテンダーになる経緯も聞いたことだし、そろそろ今回の核心をつきます。ずばり、バドテンダーの仕事内容を教えてください。

E:お客さんからのマリファナ製品に関する質問に答えたり、製品の推奨したり、投与量や製品の安全性に関する専門的なアドバイスを提供すること。私がバドテンダーだった当時、オレゴン州では嗜好用大麻の販売は合法ではなかったから、働いていたディスペンサリーにはマニュアルどころかシフト表すらない状態で。ゼロからいろいろと整えていった感じ。
私の場合は、午後3時から閉店まで週5で勤務。シフトリーダーでもあったから、他の従業員たちのスケジュールも管理していたし、店頭での接客販売以外にも、在庫管理に発注作業なんかも任されていたり。バドテンダーとして働きはじめてからまもなく、現場マネージャーに昇進しちゃった。

H:大昇進です。どんな人がマリファナを買いに来るんでしょう。

E:私が勤めていたディスペンサリーの客層は、スーツをビシッとキメたビジネスマンから主婦、アーティストにおじいちゃんおばあちゃん、治療のためにマリファナが必要な患者さんや、20代半ばの若者までバラバラ。接客はかなり忙しくて、毎日だいたい150人から200人のお客さんを対応してた。

H:それだけ客層の振れ幅があるなら、マリファナのコンサルも十人十色だったかと。

E:そうねえ。「どれくらいの量を買えるの?」「どんな種類を買えるの?」「THC*とCBD**って何?」「テルペン***って何?」「“ウィード・アイスクリーム”って本当にあるの?」といった具合に、たくさんのお客さんからたくさんの質問を受けた。私たちバドテンダーの仕事は、それらの質問を心を尽くしてわかりやすく答えてあげること。

*テトラヒドロカンナビノール。マリファナの主成分。
**カンナビジオール。痛みや嘔吐を緩和しホルモン分泌や睡眠促進などマリファナが医療用になり得る成分。
***マリファナの成分の一つ。

H:カリスマバドテンダーには、会話をする前にお客が何が欲しいのか瞬時に見抜くスーパーパワーが備わっていたり?

E:ないない(笑)。お客さんそれぞれの症状にどのマリファナがあうのか把握するため、お客さんとの会話は必須。バドテンダーが絶対お客さんに聞かなきゃいけないことは「マリファナを通して、どんな体験を求めていますか」。この質問をすることで、お客さんは「こんな気持ちになりたい」と話してくれる。あと、マリファナ摂取後の症状は人によってさまざまだからマリファナ日誌をつけることを勧めたりもしたし。どの種類のマリファナがどんな効果を発揮したかを書き留めておけば、自分にあったマリファナを見つけやすくなるから。

H:同じ職場のバドテンダーはどんな人たちだったか気になります。

E:私が働いていたディスペンサリーのバドテンダーたちは人種も性別も、年齢も経歴もそれぞれだったかな。ほとんどは大卒じゃなかったけど、みんな優秀でマリファナに情熱をもっていた。よく仕事後にみんなで一服なんかもしたなあ。ちなみにそのチームメンバーのひとりとは親友になって、いまのビジネスパートナー!

H:いい人との出会いもあったようで、なによりです。大学卒でなくても、バドテンダーになるには特別な資格の取得は必要? 最近だとマリファナについて学べるオンラインコースとかもあります。

E:特別な資格はね、驚くことにナシ。ただオレゴン州の場合、マリファナ業界の専門家は州のマリファナ規則に関する試験を受ける必要があるけどね。ちなみに私がバドテンダーに応募したときは、二次面接まであった。一次はディスペンサリーの重役と電話面接で、二次はオーナーたちとの対面面接。学歴や実務経験、将来の展望についても聞かれた。

H:エマさんを選んだディスペンサリーはお目が高い。2016年には、ポートランドの「ベストバドテンダー」に選出されたそうで。

E:そう! 一般投票だったから誰でもノミネートすることができたんだけど、ポートランドの市民が私を選んでくれたことはとても光栄だったな。自分でいうのもなんだけど、バドテンダーは私にとって天職だと思ってる。お客さんにはいつも笑顔で温かく接することができる素質もあるし、大学でも薬用植物研究にフォーカスした生物学を習っていたからその知識もあるしね。

H:でも実際「バドテンダーやってます」っていうと、好奇の眼でみられることもあったり?

E:色眼鏡でみられることは間違いなくある。だらしないストーナー(マリファナ常用者)だと勘違いされることだってあるかもしれないし。でもそれってとんだお門違い。たんなるマリファナ愛好家なだけじゃ、バドテンダーにはなれない。バドテンダーは長けたコミュニケーション能力と、包括的な製品の知識をもっていなければならないから。

H:では、ポートランド公認のバドテンダーが考える“いいバドテンダー”って?

E:私ね、実際にバドテンダーの採用もおこなってきたんだけど、それも踏まえて個人的に“いいバドテンダー”を構成する要素は3つあると思っていて。1つ目は「変容するマリファナシーンを追いかけつづける終わりなき知的好奇心」、2つ目は「お客さんへの思いやりを常に持ちつづけて、人との繋がりを大切にすること」。バドテンダーは、いわばセラピストや医者。マリファナとともに生活することを手助けしてあげるから。そして3つ目、「己とマリファナとの深い関係」。バドテンダーは、マリファナ喫煙者か、マリファナ食品の嗜好者、あるいは、なにかしらマリファナとの個人的なつながりがなければいけない。

H:ふむふむ。ちなみに“悪いバドテンダー”は?

E:スマホに夢中で接客態度が悪かったり、お客の助けになる気がサラサラなかったり、もとい勤務中に吸っているとか。これ最悪。ダメ、絶対。

「ディスペンサリーは、もっとバドテンダーへの教育をしっかりすべき」

H:現在、米国では10州とワシントンD.Cで嗜好用大麻が、33州で医療大麻が合法です。合法化が進めば自ずとディスペンサリーの数も増加するわけで。そうなると、バドテンダーの需要も上昇する。いまの時点でバドテンダーって何人くらいいるんだろう?

E:はっきりとは言い切れないけど、数千人はかたいわ。

H:おぉ、そんなに。エマさんのように、マリファナ業界での最初のキャリアがバドテンダーっていう人、多いのかもしれませんね。

E:うん、もしマリファナ業界でキャリアを積みたいのであれば、バドテンダーという仕事はぴったりだと思う。ディスペンサリーを通して、消費者はもちろん、栽培農家や加工業者といった業界のあらゆる分野の人々と出会えるし、これから先、業界のどこの職種へ進むべきかを知ることができるからね。

H:そのためにも、バドテンダーへのトレーニングは重要かと。

E:その通り。バドテンダーはマリファナと消費者を適切に繋ぐ大切な橋渡し役。消費者の大半はマリファナについてあまり学ぶ機会がなく、正しい知識を身につけていない。だからこそ彼らにマリファナが医学的にどう役立つかを明確に説明し、知ってもらう必要がある。私も後輩バドテンダーには、お客への製品の推奨方法や投与量の指示、最良な消費方法などをゆっくりと時間をかけて指導した。

H:通常、ディスペンサリーではバドテンダーへのトレーニングプログラムを実施しているの?

E:残念ながら、そうじゃないのよ。バドテンダーは十分なトレーニングを受けていないし、そうするとディスペンサリーとの繋がりも薄くて、結果、離職率が高いのが現状。ディスペンサリーは、バドテンダーにマリファナの基礎や製品の知識、顧客サービスなどについてのトレーニングを提供するべきなのに…。だから私、オンラインで受講可能な独自のトレーニングプログラムをつくったんだ。

H:今後、世界規模で爆発しそうなマリファナ市場、需要大ありですね。その一方で、マリファナに対するネガティブなイメージは、まだまだ根強くはびこっているのも事実。

E:間違いない。だからこそ、ここでバドテンダーの出番。業界の最前線で消費者と直接繋がることのできるバドテンダーは、親切に思いやりを持って接客すればその偏見を壊していくことができると思う。私自身、今後はマリファナのエデュケーターとして、マリファナが医学的にどう役立つかを消費者にしっかり伝え、彼らが自分で自分にあった製品を選択できるよう尽力していくつもり。

H:カリスマ・バドテン、頼もしいです。そのポジティブな性格もさることながら、エマさんの真っ緑の髪、好きです。最後に言いたかったんです。

E:ありがとう。バドテンダー時代から髪色はいつもカラフルだった。お客さんに覚えてもらいやすかったし、コミュニティでの認知度も高かった。派手な髪色にタトゥー、私は間違いなく「現代のマリファナユーザー」って感じの見ためだよね。でも中身は、知的で勤勉、やる気に満ちあふれている。そのギャップが推しポイントかな(笑)。

Interview with Emma Chasen
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All images via Emma Chasen
Text by Chaz Bear
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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