“織るエロとフェミニズム”。巨大タペストリーに「女性の本音」を織り込むアーティスト、Erin M. Riley
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織物の一種で、壁に掛ける装飾品「タペストリー」。  

いまどき全工程が手動の超アナログ織機で、1枚1枚丁寧に作品を織り上げるタペストリー作家がErin M. Riley(エリン・M・ライリー)。彼女の作品に織り込まれているのはヌードの女の子たちだ。
なぜいま、彼女は織物を織るのか? そしてなぜ、それはいつもエロいのか。

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Image via Erin M. Riley

毎日10時間。地道に織るのは、フェミニズム

 ぜーんぶ手動の超アナログ織機を駆使し、1日10時間以上の気が遠くなるような時間を充て、地道にタペストリーを制作するアーティストがブルックリンにいる。

「この作業、嫌いじゃないの。それに仕事だし」。窓もエアコンもない地下のアトリエであっけらかんと話すのは、タペストリー作家のエリン。全身タトゥーにオンザ眉毛、拡張中のピアスがチラリ。バーテンダーとかしてそうな出で立ちは、織物織ってる感ゼロだ。

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Photo by Saori Ichikawa

 外見はさておき。時代錯誤な手法で作るんだもん、作品だってきっと昔ながらのほっこり系…と思いきや。題材はネットから拾ってきたというディルドで遊ぶレズビアンカップルや、自身のヌードセルフィーだったりで、「NSFW(Not Safe For Woek:職場では見ない方がいい)」。

 何だかギャップだらけの彼女と彼女の作品。タペストリーにフェミニズムを織り込む理由って?

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Image via Erin M. Riley

HEAPS(以下、H):あのぅ、ここ、暑くないですか?

Erin M. Riley(以下、E):そうなの。ごめんね。でも地下だから、夏でも夜中や朝方は割と涼しくて快適よ。今日も朝7時まで作業を止められなかったわ。

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Photo by Saori Ichikawa

H:朝まで!お疲れ様です。さっそくですが、タペストリーとの出会いはいつでしょう?

E:大学のとき。それまで縫い物はしてたの、洋服とかね。系統でいえば似てるけど、初めて見る織機は完全に未知の世界。「何これっ!」って、一気に好奇心をそそられてそのままどっぷりハマった。

H:制作は長期戦。我慢強さが必要かと。

E:私ね、一度仕事モードに入ると取りつかれたように没頭するタイプなの。去年の冬の個展のときなんて、締め切りが信じられないくらいタイトで。結局1ヶ月間、ほぼ外出せずに1人で作業。アシスタントもつけてないから、あんまり人と喋らなかったわ(笑)効率的にはよかったけどね。

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Photo by Saori Ichikawa

H:ストイック!写真やペインティングではなく、なぜあえて労力を要するタペストリーを?

E:超アナログなこの織機に、一目惚れしたから。あと、当時周りにタペストリーをしてる人って全然いなくて。チャレンジ精神からっていうのも大きかったかな。

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Photo by Saori Ichikawa

H:幼少期はインターネットに囲まれて育ったとか。

E:そう。毎日放課後は家でチャットルームばっかりしてたの。子どもの頃、すごくシャイだったから、ネットを介してのコミュニケーションが居心地良くてね。

H:そんなにシャイだったのに、自分のセルフィーヌードを作品に?

E:それまではネットから拾ってきた、知らない女の子の画像を使ってたの。そしたらメディアに「他人のヌードを無断で使用」みたいなことを描かれたことがあって。それで自分のヌードにシフトしたの。結果、その方が愛着も湧くしよかったかなって。

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Image via Erin M. Riley

H:毎日お忙しいかと。アトリエでの1日とは?

E:起きてコーヒー飲んで、さっ仕事。今日もこのあと、朝まで集中よ。

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Photo by Saori Ichikawa

H:なんと。まだ午後2時ですけど…

E:あはは、心配ありがとう。仕事だからね、妥協はしたくない。それにネットフリックスとかポッドキャストを流しながら楽しんでやってるわよ。好きなことできてるんだもん、文句はないわ。

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Photo by Saori Ichikawa

H:エリンの作品は繊細な部分まで忠実に再現されています。特にタトゥー部分とか。でも、いつも顔の表情はつるりとのっぺらぼう。これはあえて?

E:だって、最初は他の女の子の画像を使ってたから(笑)。顔を出しちゃうとさすがにね。

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Photo by Saori Ichikawa

H:そうでした(笑)。でも今はエリン本人。

E:体型やタトゥーが私のものだったとしても、見方次第では誰にでもなりうる。たとえば広告なんかでも、誰でも自己投影できるようヘッドレスな女性を起用してるものが多いでしょう?

H:確かに。

E:それに真夜中に気になる男の子に「ヌード送って」って言われたとき、メイクなんてもうとっくに落としてて、身体はOKでも顔はNGなときってあるじゃない? 表情に重点を置いたポートレイトっていうより行為自体を強調したくて。

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Photo by Saori Ichikawa

H:作品のほとんどはインターネットから引っ張ってきた画像とのこと。

E:画面の向こう側のオンラインで見る人間と、こちら側のリアリティで見る人間のパーソナリティーのギャップに魅了されたの。スクリーンが創り出したバリア1枚で、同じ人間とは思えない振る舞いをする。良い意味でも悪い意味でもね。ヌードセルフィーがいい例。だって、彼の目の前でひとり大胆なポーズなんて、絶対やらないでしょ?

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Photo by Saori Ichikawa

H:絶対しません!聞くところによると、ファンが作品にしてほしい画像を送ってくることもあるとか。

E:そうなの。送られて来た画像はまずじっくり観察して、その情景を読み取る。で、より普遍的にするために背景とか髪型を少し変える。こうやって共有したい画像を送ってくれるのってすごく嬉しい。なかには彼氏にも送ったことない、ヌードセルフィーを送ってくれた子もいたわ。

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Photo by Saori Ichikawa

H:ズバリ、タペストリーだからこそ表現できることとは?

E:テキスタイルを使った作品には、暖かみがある。見て楽しむだけじゃなく、素材の温もりも感じれるものね。そこに落とし込むフェミニズムは、アグレッシブに感じさせることなく、受け取る側にフレンドリーに伝わる。さらに時間を費やして制作したっていう背景があるから、1回見て終わりじゃなく、リピートして足を運んでくれるの。

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Photo by Saori Ichikawa

H:“4am Hookup Prep” はエリンの代表作かと。裏話とかあったりします?

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Image via Erin M. Riley

E:これは当時付き合ってた彼の家に行く準備中のひとコマ。「家来ない?」って誘われてウキウキしてたわ。で、むだ毛処理してる時に足を深く切っちゃって。その時ふと思ったの。「毎回血だらけになりながら、わざわざ手間をかけて痛みを伴うことをし続ける。女の子になるって、バカバカしくておもしろい」ってね。

H:同感です。ところでアメリカ人って、毛、剃らないと思ってました。

E:えっ!本当?まぁ確かにそういったムーブメントがあったり、若い世代やフェミニストは剃らないかもね。でも一般的には剃る人の方が多いと思うわ。

H:ほぅほぅ。今後の活動プランって、あります?

E:今は主にヌードセルフィーを中心に取り組んでいるんだけど、もっと繊細な描写にこだわって、よりリアルに表現していきたいわ。あと、これまで制作してきたポルノシリーズにも引き続き尽力する予定。

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Photo by Saori Ichikawa

H:これまで色んな大学でワークショップを開いてきたんですよね。それって、若い世代に受け継いでほしいからとか?

E:それもある。でも一番伝えたいのは、ギャラリーのルールだったり、アーティストとして成功するための秘訣。若い頃って“アーティスト”の意味をよく理解してないと思うの。それを知ることは彼らにとって、絶対にプラスだから。

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Photo by Saori Ichikawa

H:エリンにとって織機って、どんな存在?

E:こういうと変に聞こえるかもしれないけど、友達みたいな感じかしら。長い時間を一緒に過ごして、信頼できる相手よ。これから先もずっとお世話になる、大切な存在。

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Photo by Saori Ichikawa

Erin M. Riley

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Text by Yu Takamichi

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