ブラジル金鉱労働者の四肢を彫刻的に描き出したモノクロ写真。“神の眼を持つ写真家”セバスチャン・サルガドの視点

SUNDAY ART SCROLL -リアルタイムで芸術速報/世界の名画から新進気鋭クリエイター最新作まで、各地ギャラリーより「現在展示中(時々、ついこの前まで)」をお届け中。
Share
Tweet

“神の眼を持つ写真家”と呼ばれる、世界的に有名なブラジル出身写真家セバスチャン・サルガド。これまでガラパゴス諸島の自然からサハラ砂漠に生ける人々などを被写体に、戦争や飢餓、宗教、環境などを切り取ってきた。ブラジル・サンパウロのSESCパウリスタにて開催中の『Gold – Serra Pelada Mine – Sebastião Salgado』では、ブラジルのセラペラダ金鉱で1986年に撮影された写真作品を展示している。セラペラダ金鉱は、アマゾン川河口から430キロメートル南にある。1970年代後半に金が見つかってから、金を求めに無数の人々が押し寄せ“ゴールドラッシュ”を迎える。しかし、劣悪な労働環境に暴力、犯罪がはびこる周辺村落など、マイナスの歴史も含んでいる。サルガドは、約一ヶ月間、金採掘の現場に密着し、そこで働く人々の日常生活とその背景に隠された社会的状況に迫った。

サルガドの写真の特徴は、リアルな質感と神々しさを兼ね備えるモノクロの色彩。今回の展示でもこの色彩感覚が被写体に絶妙にマッチしている。画面いっぱいに広がる大量の労働者たちの身体。土や泥にまみれながら自主性を失った機械のように、手作業で働き続ける彼らの様子を彫刻的に描き出している。その一方で、モノクロだからこそ時代錯誤を引き起こさせる。あえて現代性を消し去り、植民地時代・奴隷制度の慣例を彷彿させる。それは終わった歴史ではなく、今日まで続いている政治による搾取的なプロセスの一部なのだ。近年、世界で注目を集めつつある「芸術と政治」の関係性について新たな視点を与えるだけではなく、あまり語られることのない「金鉱労働者」のリアルを写真を通して描き出すサルガドの個展。日本を含めた世界中に対し、労働者の権利について警鐘を鳴らしている彼の声を訪ねて、サンパウロのギャラリーへ。


photos of the exhibition at Sesc Avenida Paulista by Gean Carlo Seno

photos of the exhibition at Sesc Avenida Paulista by Gean Carlo Seno

photos of the exhibition at Sesc Avenida Paulista by Gean Carlo Seno

Sebastião Salgado, Serra Pelada Gold Mine, 1986. © Sebastião Salgado.

Sebastião Salgado, Serra Pelada Gold Mine, 1986. © Sebastião Salgado.


Text by Haruka Shibata
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

Share
Tweet
default
 
 
 
 
 

Latest

All articles loaded
No more articles to load