バーニングマン歴24年の“自作のテント”を「あっという間にミリオンダラービジネス」にした世界各地のニーズ
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砂漠でフェス。人生観が変わるとかなんとか言っても、滞在期間中はできるだけ快適に過ごしたいもの。生死の淵はさまよいたくない。「キャンピングカーもいいけれど、やっぱり大地に触れていたいよね」。そんなバーニングマン歴24年のベテランキャンパーが発明した一枚布のオリガミ式テント「シフトポッド(Shiftpod) 」が大売れしている。もちろん、砂漠のパーティーピープルのために作ったのだから、彼らがこそが一番の顧客—、かと思いきや「もっと大きなニーズが他にあったんです」。そのテントはいま、まったく別の分野で大活躍を見せている。

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2分で建てられる?!銀色に輝くテントで今日からノマド

 広大な土地を有する米国には、各地に砂漠が点在し、毎年、様々なお祭(フェスティバル)が行われている。合い言葉は、NO SPECTATOR(傍観者であるな)でおなじみの「バーニングマン」や、カリフォルニア州のインディオの砂漠地帯で行われる「コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル」、またラグジュアリー版のバーニングマンと言われる「ファーザー・フューチャー・フェスティバル」など。ここ数年、それらの砂漠イベントで着実に数を増やしているのが、この銀色に輝く六面体テント「シフトポッド」だ。

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 発明したのは、バーニングマン歴24年のベテランキャンパー、クリスチャン・ウェバー氏。「23歳の頃からバーニングマンに参加し続けていることになるかな。これまでに、様々なタイプのテントや、キャンピングカーなどを試してきた。『テントよりキャンピングカー』に落ち着いていた2014年、友人の一人が素敵なユルト*を建てていてね。中に入って思ったんだ。『大地に触れているっていいな』って。その時に、次の年は原点回帰してテントで過ごそう、と決めたんだ」
  
*円形の骨組みにフェルトなどの天幕を被す様式で、遊牧民が使用する伝統的な移動式住居。

 ただ、テントはパーツが多くて組み立てが面倒。砂漠の中じゃ人の手を借りないと建てられない。これをなんとか解決できないか…。そこでひらめいたのがオリガミ。「オリガミのように一枚でできたテント」で、強風にも負けない頑丈さをもち、断熱素材で灼熱の太陽の下でも涼しく過ごせ、夜は凍えず、砂埃から身を守ってくれたら…最高じゃないか!と構造を練った。何より、シフトポッドの一番の魅力は「2−5分で建てられる手軽さ」。その評判は口コミで広がり、バーニングマン最強のテント計画は、あっという間にミリオンダラービジネスに転じた。15年に発明された初代シフトポッドは1張り800ドル(約88,000円)。改良が加えられた新バージョンは1,499ドル(約164,890円)で販売されている。ちなみに、室内の広さはクイーンサイズのベッドが入る大きさ。

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レジャーはもちろん、被災地でも大活躍

 さて、ユートピアから現実に戻ると、彼の住むカリフォルニア州では初夏から相次いでいた山火事が悪化していた。あたえることを喜びとする「ギフティング(Gifting)」の精神を実践してきたばかりの彼は、前日まで砂漠で使用していたシフトポッドの砂埃を洗い、被災地に送ることに。この他にも、地震災害により被害を受けたネパールやハイチ、日本や、難民が押し寄せたギリシャ、またこの夏、カリブ海や米国南部を襲った大型ハリケーン「ハービー」と「イルマ」、さらにメキシコで発生した大地震などの被災地にも、複数のテントを提供し支援を行なっているという。
  
 もともと、シフトポッドは「20張り売れたら、1張り寄付」というギフティング・システムを築いてきた。「いま、世界では、内戦や災害、貧困などの理由でたくさんの人々が家を失っています。シェルターがあるとはいえ、彼らはとても快適とはいえない状況下にいます。そういった人たちに、シフトポッドを届けたい」。

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 現在、シフトポッドのほか、より長期の野外滞在に向けに作られた、シェルターポッドやリスポンスポッドといった新商品も展開中。日本をはじめ、彼が拠点とするカリフォルニア州のような自然災害を受けやすいエリアに住む人々には、いざという時のために「一家に一つ、シフトポッド」を提唱している。

*1ドル110円で換算

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Photo Via Advanced Shelter Systems Inc.
Text by Chiyo Yamauchi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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