次世代の燃料は「わかめちゃん」 “藻の起業家に、藻のコミュニティーファーム”で藻の一大市場が築かれる?
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唐突だが、これはふえるわかめちゃんの話である。いま、世界が注目するふえるわかめちゃんの話だ。

わかめの親に当たる藻類、近年この「藻(も)」への期待値が世界レベルで急上昇している。それはやっと欧米にも定着しつつある“食”としてのシーウィードだけではない。石油に代替する“エネルギー”としての藻だ。藻の底なしのポテンシャルにより、テクノロジーを駆使して藻を大量に増やし、“藻の一大市場”が築かれようとしている

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意外に隠れ優等生だった

 藻は賢い。カリウムやミネラル分を多く含むことから、遡ること古代ローマ時代から肥料として利用されていたほか、二酸化炭素や窒素、リンなどを吸収することから、畑や工場、下水処理場から垂れ流された汚染化学物質の処理にも役立つとされている。藻は、肥料であり汚染処理を担いながら、さらには藻類から抽出されたエキスがエイジングケアコスメにも化けたりと、さまざまな分野で優等生をやってきた。そして、近年さらなる注目を集めているのが、微細藻類が産生するオイルが化石燃料(石油)に代わるバイオ燃料*になるという事実。藻から取り出した燃料で走る自動車の開発にも期待は高まった。汚い水でも成長できると耐性も抜群、健康優良でこれまでのバイオ燃料よりも格段に育てやすい。世界銀行のデータ(2012年)と米国エネルギー省の推測(2016年)による藻のポテンシャルを表す、すごいデータを見て欲しい。

・世界の年間藻生産は300万トン(25mプールおよそ5555杯分)で、推定60億ドル(約6652億円)上の経済価値。

・現在アメリカには褐藻・紅藻合わせて5億トンを生産できる地理と環境条件があり、これをエネルギーに換算すると、米国内の年間輸送エネルギー需要のおよそ10パーセント(2.7クワッド)を生み出す。

 ちょっと小難しい話が続いているが、つまるところ「藻はとんでもないポテンシャルを秘めていて、現代ならばテクノロジーを用いてそれを最大限に利用することができる。藻を大量生産し、枯渇する化石燃料から藻類のバイオ燃料に切り替えてはどうなのか?」と研究が進められているのである。次世代のエネルギーは、藻が主役になる、のか?

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*再生可能な生物由来の有機性資源(バイオマス)を原料に作られる燃料。バイオ燃料は燃焼時に二酸化炭素を排出するが、原料作物の成長過程で二酸化炭素を吸収するため、排出量はゼロとされる。

藻バイオ燃料を安く、テクノロジーの出番

 確かに藻は海に大量に浮いているわけだが、そこまで単純な話ではない。最大の課題は、藻から海藻バイオ燃料を、いかにコストをおさえて生産するか、だ。
 藻類由来のバイオ燃料は原油に比べてまだまだ高い。あるエンジニアリングコンサルタント会社の調べによると、藻のバイオ燃料は3.8リットルにつき約800円、従来のガソリン価格約180円(2016年12月時点)と比べたら一目瞭然だ。

「藻には二種類の“テクノロジー”があります。一つは海藻本来が数千年前からもつ母なる大地から授かったテクノロジー。つまり藻が藻であるだけで食料にもなってしまうオーガニックパワー。そしてもう一つが、藻を燃料として利用するために人間が発達させていかなければならないテクノロジーです」 。そう話すのは、次世代の海のファーマーを育てる団体「GreenWave(グリーンウェーブ)」創設者のブレン・スミス氏。

 グリーンウェーブが考案した「3Dオーシャン・ファーミング」は、海水面下に垂直にロープを垂らし、海藻とともに貝類を育てる技術で、通常の水面上近くで一種類の海藻を育てるモデルを縦にしたもの。複雑な仕掛けなしに、1エーカー(サッカーグラウンド1つ分)につき年間、10トンの海藻と15万の貝類を生産可能で、3万7000ドル(約409万円)の収益も見込める。また、海藻ファームからとれるデータ管理もテクノロジーの役目。水位や水温、水の透明度など海藻が育つのに最適な環境をどこからでもトラッキングできるようにデータを残し、大量培養の効率性を図る

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藻×テクノロジー、まだ門出に立ったところ

 実際、「藻をバイオ燃料として活用する段階に入るまで、あと15年はかかりますね」が、正直なところらしい。グリーンウェーブは現在、風力発電所に海藻ファームを組み込もうと風力発電所会社と話を進めているほか、海藻バイオ燃料を生み出すプロジェクトを科学者やエンジニアのチームと一緒に取り組んでいる。また、効率よく藻の苗を育て大量培養するために、海藻の培養場にもテクノロジーは改良される必要がある。

 さらに最近は、“シーウィード・プレナー(seaweed-preneurs)”と呼ばれる、藻の起業家やスタートアップも続々登場。自宅のバックヤードに大きなたらいで海藻を育て地元レストランに売る個人なども増えてきた。さらに「アンダーウォーター・コミュニティガーデンも作っていきたいです」。誰にでもアクセスがある訳でない海をコミュニティメンバーでシェアし、協力しながら海の生物を育てていくのだ。そこで育った海藻は食、肥料、数十年先はエネルギーとして地産地消されるのだろう。味噌汁にゆらゆら浮かぶ藻(ワカメちゃん)を見る目が変わったのではないか。

TIO Mussels

Interview with GreenWave

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All images via GreenWave
Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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