メディアが(あんまり)報じない中国ミレニアルズの実態。その3、“デパート派”の親世代から「私たちは断然セレクトショップ派!」劇的に変化する中国人の買い物事情
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「尖閣諸島」「爆買い」「PM2.5」。これがわが国での近年3大トピックで、印象は「良くない」「どちらかといえば良くない」と答えた日本人、なんと91パーセント(日中共同世論調査)…。そう、お隣の中国のこと。みんな中華は好きだけど、国となると急に印象が悪くなる。
そりゃあそうよね、だってなかなかイイ話を聞かないんだもの…。
ということで、親世代とは違った方法でうまーく時代を生きる中国ミレニアルズの諸々を紹介しているこの連載(前回▶︎「結婚はしなくてもいいかなあ。あ、でもお見合いはおもしろそうかも」。彼らの恋愛・結婚・仕事観)。
今回は、ミレニアルズの消費思考についてファッションシーンを起点に紹介。ここ数年で増えている中国の「セレクトショップ」事情に触れたい。

***筆者は1996年に北京で語学留学し、その後、現地で職につき5年ほど北京で生活。東京に拠点を移してからもほぼ毎年中国出張をしている。

価格を気にしないで買い物をする若者。アジアトップは「中国」

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上海のセレクトショップ

 空港や街中で、中国からの旅行者がハイブランドの紙袋を手にしている姿を見かけた人も少なくないはず。シャネルにエルメスにプラダを、それも一つじゃなく二つ三つ手にしている旅行者もいる。若い旅行者の場合が多い。

 20歳代の消費動向を調べたアジア10ヵ国の若者調査で、「価格」を重視して“いない”国トップが中国であるという結果が出ている(2015年、日本経済新聞社による)。日本の若者の約40パーセントが価格を気にしているという回答をしているのに対し、中国では10パーセント弱という。

「外見なんて二の次」から、外見第一へ

 ハイブランドを好むミレニアルズの中には、自分の好きな芸能人が着ていたからとか「私にはこのブランド買えるのよ」という見栄を張りたいからという理由で買い求める人もいる。ところで、親世代からしたら服やバッグにお金をかけるのはもってのほか。「身体に良い食べ物、寝心地のいい寝具とか生活にお金をかけてるわね」と80年代生まれのジン・シャオウェイ(金暁薇)は自分の両親のことを例にあげて教えてくれた。

 外見にお金をかけるミレニアル世代に対し、親世代は「生活」第一で中身にお金をかける。親世代の若い頃は「ファッション」という言葉も定着していかなかったし、いまのような選択肢はなかった。現代、他先進国に追いつけ追い越せと、驚異的なスピードで中国のファッションシーンは劇的変化を見せている。その背景の一つには「セレクトショップの増加」が要因となっているようだ。一方でこれは、中国人の消費傾向が変わったことにより「セレクトショップが成功するようになっている=増加を続けている」とも言える。

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右:ジン。昨年、セレクトショップで友人とお揃いで購入したコート。お気に入りの一枚。

 上海在住のインテリアデザイナーのジンは、子どもが生まれる前は、一ヶ月に多いときで4、5枚は服を買っていた。中でも、セレクトショプがお気に入りだ。セレクトショップは、ファストファッションや誰もが知っているブランドにはない「特別感」があるのだそう。「価格もハイブランドほど高くないし、自分のお給料内で買えるからいい。なにより、他の人と違うスタイルが楽しめるしね」。昨年の冬、セレクトショップのセールで買ったコートは、4,000元(約64,000円)に下がっていた。好きな中国のブランドだったので、迷わず購入。
 以前は一年に2回は日本に旅行で訪れていて、その度にセレクトショプ巡りを楽しんだ。「日本の店員はほっといてくれるから楽よね。中国はいまでは良くなったけど、以前はお客さんにくっついて、あれこれ勧めてきたりね。お店に入る前から、ストレスを感じることもあったな」

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ジン:友人のデザイナーがデザインした服を着て、SNSで宣伝してあげることもある。

中国セレクトショップの生まれ

 私が北京に留学をしていた1996年、服を買う場所といえば「北京動物園周辺の問屋街」が定番だった。北京動物園は、北京の西側に位置していて、市内中心部で生活をしていた私にとっては、地下鉄やバスでわざわざ行く場所だった。積み上げられた大量の衣類の山から、一枚一枚引っ張りあげて、自分の気に入ったデザインの服を探し出して買う。時間をかけて探せば、無印良品など知っている海外ブランドの商品も安く購入できた。ただ、移動に時間はかかるし、気に入った服が見つかるかは運次第だった。

 その後、私が北京で仕事をしていた2003年頃から、ファッション好きな若い子が、その「問屋街」から物色したセンスのある服を販売している小さなショップが増えはじめた。それからは、動物園の問屋よりはちょっと高いけれど、わざわざ行かなくても、可愛くていい感じの服が手軽に買えるようになった。

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photo by Jianing Sun, 北京のセレクトショップ

 そんな時代を知っている私がここ数年、中国を訪れて強く感じるのは、「セレクトショップが年々増えている」「中国のデザイナーズ・ブランドが増えている」ということ。セレクトショップは、上海や北京などの大都市だけでなく、杭州や成都や南京、武漢などの地方都市にもできているという。それだけ、各都市に消費者がいるということなのだ。

とりあえず「デパートはヤダ」

 1989年湖南省(こなんしょう)生まれのイエン・リン(顔琳)は、現在、成都の広告代理店でPRの仕事をしている。イギリス留学時にセレクトショップというものを知って以来、すっかりセレクトショップが好きになった。現在も、成都に好きなセレクトショップがあり定期的に訪れる。5,000元(約80,000円)の靴を買ったこともある。母親もセレクトショップに連れて行ったことがあるけど、「デザインが奇抜で高いわね」とあまり興味はなさそうだった

 親世代は、断然、デパートで服を買うことが多い。どちらかといえば「目立たない」「人と同じ」服を選んでいる親世代とは違い、ミレニアルズは子どもの頃からインターネットに親しみ、海外留学、海外旅行を経験し、海外の影響を受けたことで人とは違う自分が好きなファッションを楽しむようになっていった。

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イエン:この日のコーディネート、バッグ、靴も入れるとトータルで約34万円。

 1985年生まれのリュウ・シンシャー(劉馨遐)は、2009年にオープンした「中国のデザイナーに特化」した人気のセレクトショップの共同創業者だ。「ここ5年くらいでセレクトショップに対する認知度がぐっと増した気がする。また、ファッション好きのミレニアルズやもうちょっと上の世代でお金のあるファッション好きが自分の街でセレクトショップをオープンするケースも増えている」と語る。
 一方で、デパートの顧客は高齢化し、現在の強力な消費能力を持っているミレニアルズは、大量生産された服が陳列されるデパートには行かなくなり、自分らしさがアピールできるセレクトショップや便利で安い商品が手に入るオンラインショップを好むようになった。
 
 1990年北京生まれのリー・ムーラン(李慕然)は、北京のセレクトショップでマーチャンダイジング・マネージャーをして1年半になる。大学卒業後、イギリスでファッション・マーケティングを勉強し、帰国後、いまの仕事をはじめた。彼女が働くセレクトショップ、中国では個人経営によるセレクトショップの走りとして人気がある。

セレクトショップはただモノを売るだけでなく、消費者を育てる必要もある」とリー。よくお店に来てくれる顧客だけでなく、たまたまお店に入ってきたお客さんにも、お店の魅力を伝え、扱っているブランド、デザイナーのストーリーを伝える必要がある。そのため、ショップのSNS通知にも力を入れ、ブランドやデザイナーの情報も頻繁に発信。扱いのあるデザイナーとは長くつき合い、新しいデザイナーを扱うときは、将来性があるかを見極める。デザイナー、お客さんとともに歩んでいきたいと願っているという。

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photo by Jianing Sun, 北京のセレクトショップ。

偽物買ったり、体裁気にしたり

 しかし、この流行りともとれるセレクトショップの台頭を慎重に分析しているミレニアルズもいる。1988年深圳(しんせん)生まれのチェン・シャオタン(陳小堂)は、現在、ブランドコンサルタントとして働いている。「中国の消費者は徐々に“見る目”を持つようになってきているので、あと3年から5年は、セレクトショップやデザイナーの動向を見る必要がある。淘汰されて、本当にいいモノだけが残るはず」。

 先述では、正規品を購入できる比較的裕福で、服にお金をかけられるミレニアルズを紹介したが、お金のないミレニアルズの中には、オンラインショップで人気ブランドを真似た「偽物」を安く手に入れている人もいるそうだ。その彼らもまた、「このブランド買えるのよ」という体裁を気にしている人も多い。また、著名なハイブランドの偽物だけでなく、若手のデザイナーズ・ブランドの偽物も出てきているというから、少人数で少量生産をしている彼らにとって、真似されて大量に消費されるとは何とも皮肉な話である(もちろん、消費者の中には偽物だとは知らずに購入している人もいる)。

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東京で生活する東京ファッション大好きなワン。バイトで貯めたお金は服に費やすことが多い。写真を撮られることも多く、以前、VOGUEにも掲載された。

 人とは違うスタイルを好み、自分にあった消費をする傾向にあるミレニアルズ。さて、その「提供側」である作り手たちも、実は同じだけ著しく成長している
 ニューヨークのファッション大学など、欧米の学校でも中国からの留学生の活躍は目立つ。卒業ショーでもかのドーバーストリートマーケット(Dover Street Market)のバイヤーに目をつけられたり、フォーブスの「30アンダー30(10分野において30歳未満の重要人物を30名選出)のアジア枠にもノミネートされる者が出たり。さらに、留学組の活動のみならず、国内のデザイナー育成の土壌も着実にできあがってきている。次回は、今後の中国のファッション、世界のファッションを牽引するであろう中国ミレニアルズたちを紹介しよう。

Text by Hitomi Oyama

▶︎02「結婚はしなくてもいいかなあ。あ、でもお見合いはおもしろそうかも」。彼らの恋愛・結婚・仕事観
▷01「ネット規制もなんのその。SNS超たのしいです」

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Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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