• SERIES
  •      
  • May 16, 2017
メディアが(あんまり)報じない中国ミレニアルズの実態。 その2、「結婚はしなくてもいいかなあ。あ、でもお見合いはおもしろそうかも」。彼らの恋愛・結婚・仕事観
Pocket

「尖閣諸島」「爆買い」「PM2.5」。これがわが国での近年3大トピックで、印象は「良くない」「どちらかといえば良くない」と答えた日本人、なんと91パーセント(日中共同世論調査)…。そう、お隣の中国のこと。みんな中華は好きだけど、国となると急に印象が悪くなる。
そりゃあそうよね、だってなかなかイイ話を聞かないんだもの…。
ということで、親世代とは違った方法でうまーく時代を生きる中国ミレニアルズの諸々を紹介しているこの連載(前回▶︎ネット規制もなんのその。SNS超楽しいです)。
今回は、より中国ミレニアルズの実態を掘り下げるべく、恋愛観、結婚観、そして、ワークスタイルについて紹介したい。

***筆者は1996年に北京で語学留学し、その後、現地で職につき5年ほど北京で生活。東京に拠点を移してからもほぼ毎年中国出張をしている。

「奢る、買ってあげる、迎えに行く」これ結構、当たり前

「デートで奢るのは当然だし、彼女の欲しいものは基本、買ってあげる」。これは、まわりのミレニアル世代の中国人男性数人に聞いた「デートのときって割り勘?」「彼女の欲しいものは買ってあげる?」に対する回答。中には「彼女に限らず、女友だちとの食事でも奢るよ」と、なんとも羨ましい回答も。
「でも『ブランドのバック買って』ってせがまれたら、速攻で別れるけどね」など良識ある回答もあった。また、「男性が女性の職場まで迎えに行く」というのは、恋人・夫婦の間では結構当たり前と聞き、中国の男性って結構大変なのねと思った。

 この「男性が奢る、買ってあげる、迎えに行く」は、ミレニアルズに限ったことではないようで、彼らの親世代の若い頃もそれが普通だったんだとか。ただ、一点大きく違うのはその手段。自転車で迎えに行っていたのが、いまでは車(持っている場合)に変わった。「職場が離れていたら、わざわざ迎えに来てもらうより、中間で待ち合わせした方がいいんじゃない?」と言いたくなるが、迎えに来てくれた彼氏を迎える彼女は、同僚たちから羨望の眼差しを浴びることになり、「私の彼、こんなに私のこと思ってくれているの」ということらしい。中国の男性たち、本当に大変…。

 親世代との共通点を持ちながらも、明らかに変わってきているのはその「出会い方」だ。80年代終わりから90年代初め、中国各地に増えてきた「ディスコ」は、親世代にとって身近な出会いの場となっていた。しかも、ディスコといっても、職場の一室がディスコ会場になる(会議室が夜になるとディスコに早変わり)こともあったというから、“会社も認める出会いの場”。踊るのは社交ダンスで、気になる女性に声をかけ「Shall we dance?」となる。そんなわけで、当時は職場恋愛・職場結婚が多かったそう。

IMG_8177

 それでは、ミレニアルズはどういった出会い方をしているのか。そこは日本とあまり変わらず、同級生やナンパ、出会い系サイト、人の紹介などなど。出会う場が明らかに増えた。でも、そこから結婚まで行き着くかどうかは、親世代以上に選択肢や誘惑が増えた分、簡単ではないみたい。2015年の中国の平均初婚年齢は26歳(中国幸福婚姻家庭調査報告)。70年代の中国の平均初婚年齢が22.8歳(華律網)というから、中国も晩婚になっているのがわかる(ちなみに、日本の2015年の平均初婚年齢は、夫31.1歳、妻29.4歳)。

 自分が20代早くに結婚をしていたら、“もう”20代半ばなのに結婚はどうするのか、なんてしつこく一人娘に問いたくなる気持ちもわかる。でも、「なんで結婚のこととかあれこれ言われないといけないの? 私の人生なのに!」、1991年湖北省(こほくしょう)生まれの友人、ワン・モンチェン(王夢辰、仮名)がWeChat(中国版LINE)で思わずそう呟きたくなる気持ちも十二分にわかる。「いつまでも子ども扱いで本当にイヤ」。一人っ子政策のせいで、中国には一人娘をいつもいつも心配している両親がいたるところにいるのだ。

IMG_8179

車と家、なくてもオッケー

 現在26歳のワンには、つき合ってそろそろ3年になる4つ年上の彼氏がいる。「つき合い当初は週3は会って、毎日電話したし、彼が会社まで迎えに来てくれて一緒に夕飯を食べてたんだけど」。毎日のように彼との結婚を夢見ていたワンも3年の間に(彼の浮気とか)色々あったため、いまは結婚は考えていないそうだ。

「いまは結婚のことは考えられないけど、この人と思える人ができたら考えるかも」。中国の女性が結婚相手に求める条件の「家と車を持っていること」に対しては批判的。「別に車がなくても移動はできるし、家を買うお金がなければ、賃貸でもいいしって思う」

 一方、今年の秋に「車と家を持っている」彼との結婚を控えている女性リュウ・ファン(劉帆、仮名)。山西省(さんせいしょう)生まれの28歳だ。高校時代から北京で生活、大学では日本語を専攻。卒業後、東京の大学院での留学経験もある。帰国後、日本語を活かせる北京のメディアで半年働いたけれど、給料が低いことと仕事の内容に引っかかりを感じて退職。人のつてでいまのエンジニアリング会社に転職。せっかく学んだ日本語が使えないという不満はあるけれど、残業はないし、月収は13,000元(約210,000円)と高いので満足している。

 地域や仕事内容、勤務年数などによって差はあるが、2017年4月のデータによれば中国の都市部の平均月給は手取りで3,329元(約53,000円、中国国家統計局。平均を軽く上まわるリュウの月収はかなり良いことになる。とはいっても、やっぱり日本語を使うメディアの仕事がしたくて、先日、面接を受けてきた。でも、給料が三分の一に下がるというのがかなり引っかかっているという。

FH020028
Photo by junjun、ジュンジュン:東京では彼とネコと犬と暮らしている。二人ともやりたいことが明確なので、いい関係が続いている。

 恋人との関係だが、お相手はアメリカでの留学経験のある彼。ちなみに、デートでは「前回は奢ってくれたから」という理由でリュウがお金を出すことも多々あるそう。二人とも海外での生活経験があるので、前述のような中国スタイルではないカップルも少なからずは存在するようだ。

親の主観で子どもの人生決まる

 順調に見える彼女たちにも数年前、危機があった。結婚したい彼女と再びアメリカ留学を希望していた彼との間でずれが生じた。娘の気持ちを知ったリュウの母親は、直接彼に連絡し「結婚できないなら、娘と別れて」。それからしばらく会わない期間もあったが、リュウの両親と話し合いの場をつくりうまくおさめた。今年の秋に結婚が決まったそうだ。

image3-4
リュウ:旅行は大好き。友人と北京から5時間のところにある草原にも行った。

 リュウの母親のように、子どもの恋愛・結婚に口を出す親の存在は、中国のテレビ番組を見ても顕著だ。『中国式お見合い(中国式相亲、チョングオシーシャンチン)』は、親が自分の子どものために結婚相手を選ぶという番組。やり取りを見ていると、特に娘親が相手に求める条件は、かなり厳しいことがわかる。たとえば、「両親が健在であること」。この条件は、彼らの親世代に多く見られる結婚観のようだ。

 実際に、「両親が健在」という条件がクリアできず、結婚が破棄されたケースがある。1992年福建省(ふっけんしょう)生まれのジュンジュン(君君)の一番上の姉の結婚だ。ジュンジュンの両親は、兄弟姉妹がいた方がいいということで、一人っ子政策への違反として罰金を払い、娘たち4人を育てた。その姉は、20代の頃に結婚を考えていた彼がいた。でも、その彼は幼い頃、事故で両親を亡くしている。ジュンジュンの両親は両親不在ということが引っかかり、結婚を認めなかった。姉は、その彼とのことが忘れられず、現在も独身。両親からはお見合いを勧められ男性と会うものの、なかなか結婚までにはいかないよう。親の主観で子どもの将来が決められてしまいがちな中国の親子関係は、日本以上に複雑だ

image1-24
リュウ:東京にいた時、友人と瀬戸内海を旅したこともある。

孫の人生まで「私の人生」

 とはいえ、子も子で、実は結婚相手よりも親を優先するケースも多々あるみたい。もう一つの中国のテレビ番組『誠意なる婚活(非诚勿扰、フェイチェンウーラオ)』は、24人の女性が1人の男性を巡ってやり取りをする7年続く人気のお見合い番組だ(24人の男性が1人の女性とやり取りをする回もたまにある)。ある回では、22歳の西安(せいあん、北京から飛行機で2時間。経済発展都市)在住の女性が男性といい感じでやり取りが進んだ。お互いに気があることがわかり、カップル誕生かと思われた最後の最後に「両親が西安にいるので、西安での生活しか考えられないの。西安に来れますか?」と問う女性。男性は、仕事の関係で簡単には西安に引っ越せないと伝えると、女性から「ごめんなさい」。

 親は子を心配し、子は自分を大切に育ててくれた親のことが気になる。東京で20数年生活している中国人の女性は、日本の親子関係と比較して「中国の親は、子どもの人生は私の人生、孫の人生も私の人生と思っちゃうのよね」と言っていた。祖父母が健在の場合は、子どもへの関心と束縛が二倍になるわけだ。もちろん、精神的に自立している親子関係も存在するけれど、友人の話を聞いたり、中国のテレビ番組を見ていると、親離れ・子離れができないケースの多いことがわかる。

結婚はなあ。でも、お見合いはしてもいいかも

 結婚しても子どもはいなくてもいいと考える人たちを「丁克族(ディンコーズ、子どもは欲しくない人たちの総称)」という。これは若い世代に多くみられ、結婚観を表す時代のワードでもある。子どもに余裕のある生活が与えられそうにない、と考えているようだ。

 1987年四川省生まれの男性、シャー・マオティエン(夏茂恬)も、その一人。現在、杭州(こうしゅう)の劇場で制作者として働いている。独身で、現在、彼女はいない。離れて暮らす両親は「結婚、結婚」と口うるさくないので助かっているし、 正直、結婚はしてもしなくてもいいと思っている。余裕のある子育てはできそうにないし

IMG_5193
Photo by Xia Maotian、シャー:前列左。中国は広いから、移動に時間がかかる。唯一ゆっくり家族、親戚と過ごせるのは正月だけ。

 しかし、3年前には結婚を考えた女性がいた。当時、生活がまだ安定していなかったので、すぐには結婚できないと伝えると、彼女は離れていった。いまの仕事は、月収は8,000元(約130,000円)で悪くない。別段不満があるわけでもないが、最近、なんとなく居心地を悪く感じているので、チャンスがあれば転職も考えているという。
 正月に実家に帰れば親戚一同が集まり、話題はやっぱり「結婚」。面倒くさいので、来年は帰省するかどうか迷っている。「でも、お見合いはおもしろそうだから、してみてもいいかも」。彼の両親は、1980年代半ば頃まで続いた国家のイニシアティブによる「统一分配(トンイーフェンペイ、職業分配)」制度にならい、国から派遣された職場に就職し、そこで出会い、職場結婚したそうだ。「先のことは本当に分からない」。でも、演劇の仕事は続けたいと思っている。

IMG_6051 maotian
シャーの職場の劇場前の風景。この風景を見て、いつも夜の公演がうまくいきますようにと願っているという。

 デジタルネイティブ世代には選択肢も増え、親世代のような決められた道を歩むのではなく自分らしいライフスタイルを選択できるようになった。しかし一方で、愛情がたっぷり注がれる一人っ子は、自由な恋愛を求めつつ、親のことを気にしながらも結婚を夢見るという、なんとも複雑な一面があるようだ。

 次回は、ミレニアルズの消費思考をファッションシーンを中心に紹介しよう。
 目立つことを好まない上の世代とは違い、「人とは違う」ファッションを望むミレニアルズの増加に伴い、ここ数年で一気に増えた中国の「セレクトショップ」。その背景と動向についても触れたい。

***
5月17日
記事を修正しました。
修正内容:
「2017年4月のデータによれば中国の平均月給は手取りで7,184元(約118,000円、中国国家統計局)」より「2017年4月のデータによれば中国の都市部の平均月給は手取りで3,329元(約53,000円、中国国家統計局)」に修正いたしました。

▶︎オススメ記事

メディアが(あんまり)報じない中国ミレニアルズの実態。 その1、『ネット規制もなんのその。SNS超たのしいです』

いま絶対に売れる「ミレニアル・ピンク」について。店内がピンク一色のレストランもオープン、雑誌の表紙もピンク、ピンク、ピンク。

▶︎▶︎週間トップ人気記事

【連載】「ベルリンの壁をすり抜けた“音楽密輸人”」 鋼鉄の東にブツ(パンク)を運んだ男、マーク・リーダーの回想録

エロく強く。LAパンクのど真ん中を突っ走った最強の女たち。70・80年代、粋なガールズパンクス・シーン

———–
Text by Hitomi Oyama
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

Pocket

FH020028 copy (1)
この記事が気にいったら
いいね!しよう
HEAPS Magazineの最新情報をお届けします

You may also like...