“日本のハワイ”と呼ばれ、バブル期には団体観光客で大いに賑わいをみせた「熱海(あたみ)」。しかし、その後バブル崩壊とともに廃墟が目立つようになり、すっかりさびれた街のイメージがこびりついてしまった。でも、もはやそれも昔の話、となるだろう。「自分たちの手で町おこし」なミレニアルズ世代が、いま熱海に注目している。
Photo: ゲストハウス MARUYA/ Hamatsu Waki
すでに「クリエイティブな30代に選ばれるまちへ」をテーマに、空き家をリノベーションしたゲストハウスやコワーキングスペースなどが誕生している同市。“グランピング(*)”という新しい角度から町おこしを目指すのが、プロジェクト「NAGISA CAMPING LOT(ナギサ・キャンピング・ロット)」だ。
*「グラマラス(glamorous)」と「キャンピング(camping)」を合わせた造語。野営の豪華なテントやロッジに宿泊して、自然との触れ合いを楽しむこと。
ブルースタジオの「b-caravan」(提供:ブルースタジオ)
同プロジェクトは、キャンピングカーとトレーラーハウスのためのシェアスペースを作ろうというもの。拠点は熱海市渚町で、海から徒歩1分、海風漂う市営駐車場を市から借り、木と芝生を植えてリノベーション。「みんなの集う森」をコンセプトに、都心と熱海の二重生活をしたいキャンピングカー、トレーラーハウスオーナーを集め、グランピングのためのシェアスペースにするというのだ。
駐車場には、デザイン審査を突破したトレーラーハウスとキャンピングカーが月極めで長期駐車。所有者が車を使用しない日は、フードトラックや民泊、企業の合宿、コワーキングスペースやイベント会場などレンタルスペースとしても活用する。また、ブルースタジオがリノベーションした子どもの遊び場となるキャンピングカー「b-caravan(ビー・キャラバン)」も常設し、子どもから年配者まで、地元民から旅行者まで、多世代が集うシェア広場を目指す。
一時は「財政危機宣言」までした熱海市で、新たな価値観をもつ若い世代が行政と手を取りあい、シェアリングエコノミーやグランピングなど、時代に沿った方法で取り組む町おこし。都心から新幹線でわずか40分足らずと、週末にふらりグランピング。今夏はナギサ・キャンピング・ロットで、変わりゆく熱海の前線を感じたい。
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Text by Shimpei Nakagawa
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine