「個人送金アプリでリア充自慢」お金のやり取りで“交友関係も丸見え”、こじらせるミレニアルズ
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ベンモするね」。すでに動詞として使われるほど、日常生活に浸透している個人間送金サービスアプリ「ベンモ」。米国で、特に若年層を中心に圧倒的な人気を得ている。その理由は、手数料が無料であること、そしてフェイスブックのようなソーシャル機能があること。また、絵文字が送りあえるカジュアルさもウケた。友人との楽しいソーシャルの時間を応援する送金アプリは、若者のニーズにピッタリ—のはずだった。ベンモのヘビーユーザーが急増する中で、ミレニアルズたちは使えば使うほど気持ちをこじらせているらしい

ビール代もスマホで友だちに送金!

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Photo by Bruno Gomiero

 
 たとえば「みんな(3人)で車を借りてキャンプ行こう」というとき。一人がまとめて車のレンタル代やガス代、保険代など諸々を支払い、それをあとで割り勘しようといった際にベンモが便利だ。合計金額を複数人で割れば細かい端数が生じることもある。現金で割り勘だと小銭分は切り上げたり下げたりしていたが、送金アプリ「ベンモ」ならスマホから金額を入力するだけなので、「7,152円(71.52ドル)」といった1円単位の金額まできっちり、簡単に送りあえる。
 
 自分の友人リストから支払いをしたい相手を検索して金額を入力、送金内容の項目に何の送金かのメモを残す。ここは「レンタカー、ガス代」と書くことも、たとえば車の絵文字だけを残すことも可。
 これに対して受け取った人も「Thanks(ハート)」と反応でき、日常のチャットのようなカジュアルなやりとりが「新しい!」と若者たちに大ウケしている。

 ベンモが、従来の個人間送金サービスや割り勘アプリと異なるのは、ソーシャル機能を搭載していること。フェイスブックのように友人申請をし合い、上述のように友人リスト間で送金やメッセージのやり取りができる。また、繋がっている友人同士は、「いつ」「誰が」「誰に」「何の支払いをしたか」を閲覧することも可能だ。

 お金のやり取りが見える、イコール、自分の周りのアクティブな交友関係が見える。送金とソーシャルネットワークの組み合わせこそベンモならではの魅力*、と見込まれていたし、ミレニアルズも「良い!」とこぞって利用した。支払いも楽になったし、送金アプリのソーシャル機能も新鮮だった。

*ちなみに2012年ペイパルのCEOは、このベンモのソーシャル機能に惚れ込み、傘下に入れることを決めたそう。この時のベンモのユーザー数はたった3,000人あまりだったにも関わらず、だ。以後、ベンモは急成長を遂げ、16年の送金総額は前年から126%アップの180億ドル(約2兆円)、最終クオーターだけでも56億ドル(約6,222億円)を記録した。ベンモは公開していないが、月間のアクティブユーザー数は700万人以上と見積もられている。(Verto Analytics調べ)。

「今日、現金持ってないんだ」は、もう通用しない。

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Photo by Freddie Collins

 
 複数の友人たちとグループで行動する際に、いつも払える人がなんとなく多めに支払っている…、というケースは誰しも経験があるのではないだろうか。多めに払うのは、好意からなのか、しょうがないからなのか。いずれにせよ、その時々で、持つ者が持たざる者をカバーして一件落着していたことが多かれ少なかれあり、持ちつ持たれつでうまいこと保ってきた友情もあったはずだ。

 ところが、ベンモの出現により「ごめん、いま、現金持ってないんだ」が通用しなくなった。以前は「とりあえず私が払っとくね、今度会ったときによろしく!」などと、気前の良いメンバーがその場を丸くおさめてくれていたが、最近では「じゃ、ベンモして!」が合言葉に。

 先述のような三人での割り勘のケースだと、ベンモは言い逃れをしようとする友だちを取り締まるには適したツールであるともいえる。なぜなら、繋がっている友人同士は、「誰が」「誰に」「何の支払いをしたか」をアプリのフィード上で見られるから。つまり、たとえば上述のような三人での割り勘の場合、誰がベンモ済みで、誰がまだなのかを、グループの全員で「共有」(言い換えれば「監視」)することができ、「あいつ、いつもベンモするのが遅いんだよな」と思われないように、なるべくはやく送金しようという励み(またはプレッシャー)にもなるんだとか。
 それでもなかなか払わない人には、アプリ上で支払いを催促することもできる。だが、友だち同士とはいえ、お金を催促するのは気まずいもの。そんな時に「支払いをお願いします」ではなく「〇〇の件、ベンモしてね」と絵文字でつけてカジュアルに催促できるのがうれしい。

金の切れ目は縁の切れ目。1円単位まできっちり割り勘の妙

 と、まぁ、ベンモは友人への送金に適したアプリなのだが、だからこそ「1円単位まで割り勘できる」や「お金の催促をしやすい」のは、時に厄介なのだという。

 毎月の家賃の支払いからハングアウトのお金のやり取りまで、ベンモをヘビーユーズする米国人の友人はこう話す。「ベンモのおかげで、後味が悪いハングアウトも少なくないよ」。
 
 各自がドリンクや食べ物を持ち寄る、カジュアルな「ポットラックパーティー」でのこと。ポットラックは「何をいくら分買って持ってくるかは個人の自由」というのが暗黙の了解だったところがある。つまり、ビールを6本持ってくるも、高級ワインを6本持ってくるも、はたまた、手作りのケーキを持ってくるも自由で、もちろんお金も自分もち。

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Photo by Dave Lastovsky

 それなのに…。ホームパーティーのあとは、いまじゃベンモ上でこんなメッセージが届くのだという。 

「昨日のパーティー、私が持っていったビール代は2682円。遅れてきたエミリー以外の6人で割って一人447円ずつベンモしてね!」

「ステーキと白ワイン代、4986円。一人831円ずつベンモよろしく!」

どう思う? しかも一円単位まで割り勘って、仕事の経費申請じゃあるまいし」と呆れ顔。相手の家に招待されて、色々とご馳走になったら、次回は自分がご馳走する—彼女にとっては、それが持ちつ持たれつなフェアな友情だったが、彼女の友人にとってのフェアは「毎回きっちり割り勘」。ベンモの出現により、それぞれの感覚の違いが浮き彫りになる機会が増え、友人は萎えていた。

お友だちのベンモ取引をみて気づく「あれ、自分だけ誘われてない」

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Photo by Kaizen Nguyen

 ベンモのソーシャル機能は、使い方によっては「リア充アピール」にもつながるのだとか。ポイントはベンモのメモ機能。送金内容を記入するのに加えて、そこまで詳しくわざわざ書かなくてもいいのに「〇〇(人気レストランの名前)でのブランチ代」「野外フェスのチケット代」「プール付きのループトップバー、カクテル代」と、暴走する人が少なからずいるそうだ。

見る人を意識した、明らかなリア充自慢」と、顔をしかめる友人も、こういったベンモフレンドのお金のやり取りを追跡し始めると「クセになる」と明かす。「いつ」「誰が」「誰に」「なんのお代を支払ったか」。ベンモをみれば、友人たちの交友関係やどんな生活を送っているのかがみえてくる。たとえば、「リサってば、あの日、私の誘いを断ってボブとディナーに出かけたんだ」「ってか、また昨日もボブと出かけてる」「深夜のタクシー代…」「あの二人、映画にも一緒に行ったんだ…」「<絵文字絵文字絵文字>ってなに? なにしたの?」など。
 
 また、仲良しグループのメンバーが「昨日は楽しかったねー!ガールズナイト」と投稿し、みんなが同じ日に支払いを行なっているのをみて、「え、私誘われてない」と心を痛めたこともあったそうだ。さらに、ガールフレンドの女子会費用をベンモで払って、株をあげようとするボーイフレンドというのもいるらしい。「今日はお友だちとの女子会、楽しんできてね! ラブユー!」。恋人間のサプライズプレゼントも、せっかくやるなら、人にみもらってなんぼ、なのか?

 便利すぎるベンモをヘビーユーズしすぎて、今度は気持ちをこじらせるミレニアルズだち。一応、自分の取引を人に公開しないプライバシー機能もあるのだが、わかりにくいからか「使ってる人、あまりいない」という印象らしい。ベンモは間違いなく便利なアプリだ。だが、どんなにカジュアルなやり取りに見えようとも、「お金はセンシティブなトピック」であることは変わらない。

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Text by Chiyo Yamauchi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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