青春を〈気候変動〉に捧げる21世紀の若者たち「大人は未来を考えてない!」危険にさらされた私たちの将来、自分で声をあげなきゃ

"THERE IS NO PLANET 'B'."(地球"B"なんて、どこにもないから)。
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負けぐせがついた身勝手な大人たち。忙しさを理由に何もしない大人たち。だから、彼らは自分たちで真っ向から行動する。自分たちの未来の地球を確かなものにするために…。
昨年の夏、スウェーデンの一人の少女からはじまった気候変動への対策を求める「気候のための学生ストライキ #friday4future」は、インターネットを通じて世界各国に広がった。そこから約半年後の3月15日の金曜日には、世界約40ヶ国の学生が学校を休んで、同時多発的に路上で抗議の声をあげるという、今後の政治史に残るであろう歴史的な“絵”を作り出している。

3月15日、ニューヨークでも朝から国連や市議会前、ワシントンスクエアパークなど複数の場所でストライキがおこなわれていた。ヒープス編集部も午後から参加。その様子をお届けする。

集結した若者たち。青春をかけて守りたい未来 #friday4future

 奇しくもこの日の最高気温は20度を超えていた。3月半ばのニューヨークにしては、確かに「暖かすぎる」。誰かが「Climate Change is not a lie (気候変動はウソじゃない)!」と叫ぶと、その声を聞いたまわりの人たちが「Do not let our planet die (地球を殺しちゃいけない)!!」とレスポンスする。

 テンポがよくてキャッチー。かつ韻もしっかり踏んでいるせいか、コールに便乗してみると、不思議と気持ちが高揚した。

 3月15日、金曜日の午後2時、地下鉄をコロンバスサークル駅で降りて地上に上がると、リズミカルな叫び声が聞こえてきた。プラカードを持った無数の若者たちが、セントラルパーク南西の入り口にある巨大なモニュメントによじ登り、口々にあの聞き慣れたコールを叫んでいた。

“This is what democracy looks like”
(これがデモクラシーだ!)
“Hey hey, ho ho, climate change has got to go”
(ヘイヘイ・ホーホー、気候変動はいなくなれ!)

 彼らの多くは地元の中高生。みなこの日のストライキのために学校を休んで参加しているという。叫び声には、変声期特有の声の裏返りが入り混じる。また、短めのトップスに太めのアイラインというパッと見は大人びて見える子も、背中にはリュックサックというアンパランスな格好からも10代ならではの若々しさが垣間見れる。


 キャッキャ、キャッキャと、まるでフェスにでも参加しているかのような浮き足立った様子もあるが、「今日のデモに参加しようと思った動機はなに?」と聞くと、自分の言葉で理路整然と答える。

「大人は自分たちのことしか考えていない。私たちが子どもや孫を持つ頃まで、地球が安全かどうかなんて考えてくれていない。だから、黙っていないで、声をあげることに決めたの」

「世界中に山火事や大気汚染で苦しんでいる人たちがたくさんいる。何もせずにそれをただ見ているだけなんて辛すぎるから」

「いまなら、まだ間に合う。私たちが18歳になってからじゃ手遅れ。そうなる前に地球温暖化を止めなきゃならないから」

「写真を撮らせてもらえる?」と聞くと「もちろん!」と躊躇しない。自作のプラカードを掲げて、顔を隠したりすることなくポーズをとってくれる。学校を休んでいることに後ろめたい気持ちなどない、という証なのだろう。自分たちがやっていることが正しいと信じて疑わない自信というのだろうか。若者特有の強気、根拠のない自信というのとはまたちがう、新年のある勢いが滲む。



 中には、「君はタバコを吸うか? ウィードはどうだ? もし、吸うなら環境に悪いってことを覚えておいてくれ。燃やすと有害物質が出るんだ」と、からかい半分だったのか、やや一方的なレクチャーをしてくれた少年グループもいた。足元はジョーダンのピカピカのスニーカー。「友だちに誘われて」ちょっと気になったからついて来た、という学生もいた。
 興味深いのは、この学生ストライキには、10代の若者を「なんだかよくわからなくても参加してみたくなる」「ワクワクさせる何かがある」とごく自然に、自主的に参加させているということだった。それは「自分たちが声をあげれば、社会を変えられるかもしれない」という可能性や希望に対してなのかもしれないし、「自分は無力なんかじゃない」というそれまでに感じたことのない勇猛な心持ちに対してなのかもしれない。





 ブルックリンからコロンバスサークルにいく電車の中で出会った蛍光色のプラカードを持った高校生の少女は、学校の友人と一緒にではなく「一人で」の参加だった。ソーシャルメディアを通して今日のデモのことを知り参加を決めたのだそうだ。昼にかけておこなわれていたニューヨーク市議会前でのデモに参加したその足で、午後から行われるアップタウンのデモに向かっているという。現地には彼女のように一人で参加しているティーンの姿や、10歳以下の子どもが保護者同伴で参加している姿もチラホラ。そして、以前、ヒープスで取り上げた、トランプ大統領の仮面をつけた反トランプ「デモ・セレブリティ」ことエリオット氏の姿もあった。 

 59丁目のコロンバスサークルからセントラルパーク西側を、81丁目にあるアメリカ自然史博物館まで、黄色のベストを着た若者たちの誘導のもと、約20ブロックを練り歩く。彼らは、学生中心の気候変動アクティビストグループ「ゼロ・アワー」のメンバーで、このコロンバスサークルからアメリカ自然史博物館へのマーチのオーガナイザーを勤めていたことをあとで知った。


 マーチの最中も、どこからともなくコールがはじまっては終わり、また次のコールがはじまって…、というのが繰り返されていた。

“What do we want?”(私たちが求めているのはなに?)
といえば、
“Climate justice!”(気候の正義!)

“When do we want it?”(いつ欲しい?)
といえば、
“Now!”(いま!)」

そのほかにも、

“No more coal, no more oil, Keep your carbon in the soil”
(石炭や石油を燃料にするのはもうやめよう。炭素は土の中に留めておこう!)

といった、地球温暖化のメカニズムを理解していないと、とっさには出てこないようなものまであった。まだ小学生と思しき子どもや、ピンクや緑色に髪を染めた若者たちが、「炭素を、タールサンド(油砂)を、土の中から掘り出すな」と訴える姿には、さすがに面食らってしまった。


 午後3時半頃、アメリカ自然史博物館の正面の階段には、無数の学生アクティビストたちがひしめき合い、上述のような様々なコールを熱っぽく繰り返していた。階段上には、このニューヨーク学生デモの中心人物、13歳の活動家アレクサンドラ・ヴィラゼナーの姿もあった。彼女は、昨年12月からたった一人で、毎週金曜日にニューヨークの国連の前で気候変動に対して行動を起こすよう求めてきた人物だ。彼女のスピーチがはじまるとその言葉に耳を傾ける。あいにくスピーカーの音量が小さく、あまりよく聞こえなかったのだが、スピーチが終わると、盛大な拍手と歓声が沸き起こった。それは、彼女と心を同じくしていること、そして、あなたをサポートしますという意志を表明する歓声だったように思う。




 参加していて前向きな気持ちになれたのは、アクティビストたちに「明るさ」があったからではないかと思う。もゆる情熱、安易を振り捨てた冒険心、希望に満ち溢れた様子には、青春の二文字がよく似合う。 
  
 性別や人種、宗教、おそらく学力や家庭環境、きっと聴いている音楽や趣味もさまざまなのだろう。異なるタイプの若者たちが「地球の温暖化を食い止めたい」という志を一つに、インターネットを通じて団結し、たった半年で世界規模のムーブメントを巻き起こす‐‐その様子に、新しい時代の幕開けを感じずにはいられない。

 帰り際に目にとまった「I can Vote in 2020.(2020年の大統領選のときには、私も投票できます)」のプラカード。気候変動を“信じない”、現大統領が選ばれた責任は、彼らにはない。

「私たちが投票できるようになった日には、みておけよ」。そんな頼もしい心意気を感じた。


※現在ヒープス編集部では、13歳の活動家アレクサンドラ・ヴィラゼナーに取材打診中。後報を待って。

#friday4future #Youth4Climate #WhateverItTakes


















“Save Our Earth.(私たちの地球を守って)”

Photos by Sako Hirano
Text by Chiyo Yamauchi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

 

  

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