先週の“かぶりたくなるよう”なヘルメットに続き、今週も「都会のサイクリストを救うアイテム」を紹介しますよ。今回は、ニューヨーク同様、通学通勤サイクリストが街を横断するロンドンにて生まれた〈自転車用ライト〉だ。
夜間ライドには必須の自転車用ライト。走行中に周囲の状況を確認するため進行方向を照らすほか、正面から来る車や歩行者に「いま私はここを走っています」と自分の存在を知らせる役割も担う。しかし、このライトに関する問題点をちらほら聞く。たとえば「ライトの盗難がよくあるため、盗まれてもいいように安物をつけているが、安物ライトだと光量が弱い。走行するのが怖い」「夜間でもネオンの光で明るい大都市では自転車の小さなヘッドライトは埋もれてしまう。いまいち頼りない」など。一方で、「最近では車のヘッドライト並みの強いライトもあり、眩しすぎて逆に危険」という歩行者や車の運転手の意見もある。
そんななかで登場したのが、世界で最も安全な自転車ライトを謳うレーザー光線を利用した自転車用ライト。サイクリストや歩行者、そして車のドライバーの不安を解消するというそのライト、どストレートに名付けられて「レーザーライトコア」だ。「もっと都市に自転車乗りを」をモットーとするロンドンのサイクリングブランド「Beryl(ベリル)」が開発した。6メートル前方の路面にレーザー照射し「自転車、ここにいますよ」と、周囲の車や歩行者に存在を知らせ、注意を促す。
ここまで聞くと、そんなに目新しいものなのかと小首をかしげるかもしれない。確かに、レーザービームつきの自転車ライトはこれまでにもあったし、前方を明るく照らすヘッドライトは存在した。が、ベリルの特徴は前方の路面にぺっと浮かび上がる「緑の自転車マーク」だ。ネオンが拡散している大都市でも、路上に描かれる自転車マークは存在感大。さらに、マークを前方に投影することで、車の死角を走っているときにも、運転手に「いまあなたの隣を走っています」と知らせることができるほか、車と自転車の出会い頭での衝突事故が多い交差点でも、角で待機している車に「自転車が近づいてきます」と注意を引くことができる。ちなみに、その自転車マークは実際の自転車専用レーンと同等の幅に設計されているという。
はて。「自転車マークの投影ライトって、どっかで聞いたことあるような?」。はい、今回の自転車ライトのベースとなったのは、2012年に「Blaze(ブレイズ)」社が発売した「レーザーライト」。日本でも紹介されていたのでご存知の方も多いかもしれない。一人の女子大学生が卒業課題として開発したものだった。その後、キックスターターでの資金調達も成功し世界中の自転車に取り付けられたのだが、今年10月、「可能な限りもっと多くの人のために安全な製品をつくりたい」と社名を現在のベリルに変えてパワーアップ。ユーザーからのフィードバックを踏まえ、改良版として開発したのが今回のレーザーライトコアだ。前モデルより小型化され、特許取得済みのレーザー技術を使用し、自転車マークをより鮮明に投影させることに成功。さらに昼間点滅モードが加わり、昼間走行の安全性も高まった。
設置はマウント(ライトを取り付けるツール)にはめ込むだけだから工具不要。
レーザーをオフにして、単にライトとして使うこともでき、満充電状態なら14時間利用可能(レーザーなしのライトのみなら41時間)。充電はUSBケーブル経由だからどこでもでき、完全防水だから雨に濡れても心配ない。値段は約7,800円(69ドル)で、出荷は今年12月予定。
レーザーライトコアの改良は数字にも表れていて、ある調査によると、サイクリストの視認性(他者からサイクリストが見えるかどうか)は最大32パーセントまで向上。さらに車の死角においての視認性(車からサイクリストが見えるかどうか)は97パーセントまで上昇したという(トランスポートリサーチラボ)。これなら、見通しの悪い曲がり角や、裏道の交差点などでも安心して走行できる。また、バスの運転手は「サイクリストの存在を見つけやすくなった」と大満足。この圧倒的な“見つけられやすさ”は、サイクリストの心理にも好影響をあたえており、サイクリストの75パーセントは「ライトのおかげで安心して走行できる」と回答した。これら寄せられた生の声が評価され、同ライトは現在ロンドン市内のシェアバイクに設置されている。
いまでは世界60ヶ国以上に出荷し、今後はカナダのモントリオールやスコットランドなど、大都市のシェアバイクにも実験的に搭載する予定とのこと(ニューヨークのシティバイクでも実験したが、予算の関係で滞ってしまったとのこと。残念)。6年前に生まれたいち大学生の発想が、世界中の大都会の、不安な夜道に自転車マークを放つ。
All images via Beryl Media Kit
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine
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