次のWeWorkは「診療所」?LGBTQ専門、妊娠・産後の女性専門セラピストが揃う。現代の〈シェア“セラピー”スペース〉

WeWorkっぽいコワーキングスペースがまた新たに誕生? と思いきや。セラピスト用のシェアオフィス。
Share
Tweet

現代を生きる世代への心遣いをつめた新感覚のシェアスペースが、「シェア“セラピー”スペース」として登場。見た目も使い方もコワーキングスペースっぽい。カウンセリング場所を探すセラピストと、自分に合うセラピストを探す人を上手に繋げるスタートアップが昨年末の創始からメキメキと成長中だ。

セラピストのための、“コ・プラクティシング(開業)”スペース

 心の病が珍しいことではないとの認識が進むにつれて、メンタルヘルスを隠すことなくオープンに話すことも増えてきた昨今だが。まだまだカウンセリングに対して敷居が高いと感じてしまう人の方がが多いようだ。ある調査(2017年)によると、成人の5人に1人がなんらかの精神疾患をもっているという結果が出ており、なかでも最も一般的なのは不安障害で、全米不安抑うつ協会によると約4,000万人の成人に影響を及ぼしているそう。きちんとしたケアを受ければ快方に向かうといわれている不安障害だが、実際にケアを受けているのはたったの約37パーセントなんだとか。

 と、メンタルヘルスの当事者が「行きにくい」という問題を抱える一方で、メンタルヘルスを提供するセラピストにも悩みごとがある。それは「最適なカウンセリング環境づくり」だ。
 “カウンセリング先進国”と形容される米国では、大学院で臨床心理を専門的に勉強し資格を取得、独立開業するセラピストも多くいる。その独立系のセラピストたちは、プライベートプラクティスと呼ばれる個人開業のオフィスを持つものの、その運営がなかなか大変らしい。「独立した開業医たちが、小さなオフィスを構えて苦労しているのを目の当たりにしたんです。新規クライアントの開拓から、患者とのカウンセリングのスケジュールや会計などの日々の業務まで、てんてこ舞いになっていて」。

 こうした現状に対して、昨年10月にニューヨークにて設立されたのは、メンタルヘルスのスタートアップ「アルマ(Alma)」だ。「セラピストやメンタルコーチ、ウェルネス関連の専門家たちの〈コ・プラクティシング(開業)”コミュニティ」を謳う。コワーキングスペース大手の「WeWork(ウィーワーク)」になぞらえ、 “セラピストたちのウィーワーク”とも喩えられている、シェアスペースだ。



 患者のスケジュールに合わせたスペースの貸し出しや、ビデオチャットでカウンセリングをおこなうための機材の提供、請求やスケジュール管理代行など、セラピストたちが簡単に開業と運営をすすめられるよう会員制サービスを提供している。選べるプランは3つで、月1万5,000円〜5万2,000円。アルマでの定期の交流イベントや業界ネットワークアクセスへの参加のみのプランもあり、スペースが必要なセラピストらも、固定の患者数にあったプランが選択可能。このあたりも昨今のシェアオフィスに類似している。

 現在アルマには、6年から15年のキャリアを積んだ、48人の経験豊富なセラピストが常駐(スペースには最大約115人が在籍可能だ)。精神科医、心理学者、臨床心理士はもちろん、栄養士、鍼灸師、ヨガ講師までと、ヘルスケアをしっかりカバーする顔ぶれだ。




Screenshots from Official Website of Alma

LGBTQ、女性専門のセラピスト。若者世代の心に届くメンタルヘルスサービス

「私たちは、セラピストと患者の両者を尊重します」とは創業者のハリー。医療保険スタートアップ「オスカー・ヘルス」の元・副社長で、独立系開業セラピストたちの苦悩を間近で見ていたのも彼だ。

 アルマの“患者への尊重”を見てみると、特に、若者世代の心にピタリとハマるような環境づくりをしているようにうかがえる。たとえば、女性の妊娠や産後のメンタルヘルスに焦点を当てる精神科医や、うつ病や人生の変化に悩む若年成人を専門とする心理療法士、あらゆる年齢のLGBTQを専門とするソーシャルワーカーと、現代の若者の悩みを網羅するセラピストが顔を揃える。

 また、もう一つの世代に寄り添った特徴が、「セラピストのオフィスっぽくないオフィス」だ。映画やドラマなんかでよく見るセラピストのオフィスといえば、壁に本棚が並び革のソファー、といったところか。一方アルマでは、「インテリアデザインがメンタルヘルスケアに違いをもたらす」という信念のもと、内装にこだわりをみせる。16の診察室には、米国心理学会のアドバイスのみならず、インテリアデザイナーによって選ばれたモダンな家具が並び、癒しの観葉植物ももちろん、アートのオブジェも忘れない。カウンセリングオフィスというか、まるでウィーワークを彷彿させるコワーキングスペース…。インスタグラムをスクロールしても、オフィスのインテリアや常駐セラピストたちのイベント風景や団らんポストばかりで、ますます流行りのコワーキングスペースのようなビジュアル・プレゼンテーションだ。



 そのスタイリッシュさから、毎年恒例のデザインの祭典「NYC × DESIGN」では、ファイナリストにノミネートされたほど。カウンセリングを受ける患者にとって、セラピー期間中の環境の一貫性が大切であるということを踏まえて、すべての部屋は同じ家具、同じ本、同じアートワークで統一されている。しゃれているだけでなく、患者への配慮が部屋全体に反映されているようだ。

 若者世代から支持のある人気企業とのコラボも、若者たちにとっては親近感がわくだろう。例をあげると、ミレニアル世代に人気のある寝具バス用品ブランド「パラシュート」とコラボし、睡眠とメンタルヘルスの関係についてのイベントを開催。瞑想ガイドアプリ「ヘッドスペース」とも手を組み、待合室に「瞑想ステーション」を設置。カウンセリングの前後にガイドつきの瞑想を提供している。

この投稿をInstagramで見る

Right in the heart of midtown.

Almaさん(@hello_alma_)がシェアした投稿 –


@Alma

 若年成人18歳から25歳の精神疾患にかかる率は、25.8パーセント。26歳から49歳の22.2パーセント、50歳以上の13.8パーセントと比較し、最も高いという結果が出ている。最近の若者の心の悩みにも専門的に対応してくれる幅広いセラピストたち、コワーキングスペースに通うような錯覚にさせてくれる空間、人気企業とのコラボ。ライフスタイルの延長線にある“心の休憩場所”のようなスタンスで、無理ないケアを促してくれるのがアルマだ。

—————
All images via Alma
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

Share
Tweet
default
 
 
 
 
 

Latest

勝手にデザインしやがれ!! フライヤー、ポスター、ピンズetc 商業メインストームに楯突いたパンク・グラフィックの飄々40年

ニューヨークとロンドンでパンクが誕生してから40年あまり。パンクは「退廃的で挑戦的で衝動的な音楽」や「反骨精神をむき出しにするアティチュード」「世の中でまかり通る“正しいこと”を疑い自分たちの正しさをDIYする精神」など…
All articles loaded
No more articles to load