ブルックリンのローカル蜂蜜は巨大墓地生まれ!? 580万体が眠るお墓でハチミツ・ビジネスはじめました
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色、香り、値段。食材を買うときに一通り見定めたあと、どうも気になるのが産地の表示。「◯◯県産」「国産」「外国産」。だってそれが明記されているのといないのとじゃ、やっぱり安心感が違いますから。でももし、あなたが気に入って手に取ったハチミツ、「お墓生まれ」と書いてあったら?

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罰当たり!?“お墓×ハチミツ”の異色ビジネス

 ブルックリンにある「Green-Wood Cemetery(グリーンウッド・セメタリー)」は、178年も続く巨大墓地だ。各界の著名人が眠ってるってことで、国定歴史建造物にも指定されているのだが。

 Googleマップなしじゃ絶対迷うほど(実際迷った)だだっ広い敷地に、個性的なお墓、開放的な眺め(自由の女神も見えた)。昔は「ナイアガラの滝」に次ぐ観光スポットとして大人気だったらしい。今でもローカルから観光客までが“癒し”を求めて足を運ぶ、ちょっとした憩いの場だったりする。

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 実はアメリカでは映画上映会やハロウィンパーティーなど、墓地を利用したイベントやビジネスは珍しくない。日本とはひと味違う念概を持つ墓地で、これまたひと味違うビジネスを持ち込んだのが、養蜂家のDavin Larson(ダヴィン・ラーソン)。「ここはミツバチにとって、最高のオアシスなんだよね」とこの男、ハチミツ作りをはじめてしまった。

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「罰当たり」「気味が悪い」「そんなの食べたくない」なんて声が聞こえてきそうだけど…。墓地側の協力のもと、たったひとりで去年の4月から始めたハチミツビジネス。同年10月に販売した800個のハチミツはあっという間に完売。今年も無事収穫を終え、数週間後の販売に胸を躍らせる彼を訪ねてみた。

120万匹のミツバチ!!!!!

 子どもの頃から養蜂家の父を手伝ってきたので、ノウハウはすべて身体が覚えていたという。豊富な蜜源植物に、近隣迷惑にならない広い土地。養蜂に必要な環境が少ないニューヨークで「ココだ!」と目をつけたのが、かねてから墓地を利用した催しに積極的だったグリーン・ウッド墓地。
 企画書片手に直談判、「快く承諾してくれた」らしい。さらに「正門にセキュリティがいるから悪さをされる心配もないし、暑さに弱いハチ、夏は墓石の陰で暑さをしのげるし」と大変気に入っている様子。

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 女王バチの産卵が始まる春に、ハチミツが増える夏。収穫真っ盛りの秋に、冬眠中の保温対策や巣箱のメンテナンスが主な冬。1年を通し、毎週土日の1、2時間がダヴィンの出勤時間だ。仕事内容は、6つの巣箱と120万匹のミツバチの産卵状況、ハチミツの貯蔵状態、病害虫のチェックなどなど。防護服をまとい、活動的なミツバチに「Take it easy(リラックスして)」と声をかけながら、丁寧にこなす。

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興奮気味のハチには、燻煙機(くんえんき)で煙を吹きかけて落ち着かせる。
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1ヶ月前にダヴィンに弟子入りした、養蜂家見習いのエイミーもお手伝い。

 ちなみに。ダヴィンには本職がある。したがってこれ、あくまで「趣味が高じてはじまった副業」なので、ハチミツが収入源なわけではなく、ただ好き好んでやっている。

「地味で泥臭い作業さ。刺されたことは数えきれないほどあるし、糞を浴びるなんて日常茶飯事。でも、黄色くてブンブン飛び回るこの生き物が、大好き」

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他のハチミツとの差は、特にない

 墓地の他に、近所のアパートの屋上でも同時養蜂中のダヴィンに「墓地と屋上での養蜂の違いは?」と聞いてみると、「うーん、“お墓生まれ”っていうインパクトの違いくらいかな。味は一緒だと思うよ」とあっさり。もっとこう、暑苦しい返答を期待していたんだけど…。

 580万体が眠る巨大墓地で丹念に作られ、年に1度だけグリーン・ウッド墓地の正面入口と公式サイトで購入可能なハチミツ「Sweet Hereafter(スイート・ヒヤアフター)」。日本の常識からするとなんとも罰当たりなビジネスだが、いやはや、ブルックリンという寛大な土壌のおかげかなと思う。

 作業中のダヴィンに図々しくもお願いし、巣枠にあるハチミツを指ですくい、パクッ。その甘さと、とろ〜り濃厚な舌触りに、思わずもうひとすくい。他のハチミツとの差は特にないなんて言っていたけど、あんなに美味しいなんて、幽霊もこっそり手伝っているからだったりして。

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ダヴィンに聞いた蜂豆知識

ハチがいなくなると、人類は4年以内に滅びる!?

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甘〜いハチミツを与えてくれるミツバチだが、彼らの役目、どうやらそれだけじゃあないらしい。なんと世界の約3分の1の農産物は「ミツバチを主とする、授粉から産出されているんだ」。

オーストラリアにいたっては、80~90パーセントの農産物がミツバチの受粉から恩恵を受けているんだとか。すなわち、ミツバチが減少すれば野菜や果物の生産性も低下。価格高騰や食料不足にも繋がる。
「ハチがいなくなると、受粉ができなくなり、そして植物が消え、そして人間がいなくなる」とアインシュタインが言った説も。

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Photos by Kohei Kawashima
Text by Yu Takamichi

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