テーマは〈未知との遭遇〉 “UFO・赤ちゃん・高速道路のペットボトル”でヒラく世界

編集部が選ぶ今月のZINE3冊。ペットボトルでヒラく世界って、なに!
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今度はあんなもの入れたペットボトルの写真を載せただけなんて…。世界一敷居の低い文芸で、ルールが存在しない世界一自由な文芸「ジン(ZINE)」。自分の頭の中身を奔放に綴じあげた四角形の(とも限らない)冊子のことだ。今月の自由を満喫する3冊を紹介しますよ。UFO、赤ちゃん、◯入りペットボトル。ずばりテーマは〈未知との遭遇〉。

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「“空飛ぶ円盤”に誘拐されたことある?」
女子大生ジャーナリストの真面目なUFOジン

The Truth Is Out There

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Image via Jordyn Haime

宇宙人と交信するためテレパシーを発信…ではなく、より多くの人と空飛ぶ円盤・UFOの知識を共有するためジンを発信。米大学生ジャーナリストのジョーディンちゃん(20)だ。元々「UFOなんてありえない!自分で見たものしか信じない!」だった彼女が、UFOにハマったきっかけはニューヨーク・タイムズの未確認飛行物体に関する記事。世界的に著名なメディアがいうのなら…ねぇ…と、独自研究をスタートした(さすがジャーナリスト)。
モノクロ10ページにわたり、UFOの歴史、著名UFO学者の紹介、主要UFO事件などをカットアンドペーストで詰め込まれている。エイリアンがテーマのおすすめ曲プレイリストや、いち押しUFO短編集紹介もあって、UFOの歴史・科学・エンタメを一気に体験できるのだ。

「UFOの話をすると、よく『信じてるの自分だけだと思ってた!』と反応されるの。変人扱いされるのが嫌で口にしない人が多いけど、みんな、実は気になってるよね」。初目撃から71年経ったいまも謎多き未知の空飛ぶ円盤。その存在、信じるか信じないかはあなた次第。「“空飛ぶ円盤”に誘拐されたことある?」 と問いかけるこのジンが、あなたのUFO観を変えてくれるかも…(ニヤリ)。

「赤ちゃんを押し出したときは、空が裂けたようだった」
妊娠中の“フシギな”経験を書き留めた

Expecting

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EPSON MFP image
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Image via Alicia Dornadic

女性にとっての大仕事、妊娠・出産。自分のお腹から新しい生命が出てくるなんて、よく考えてみたら未知の世界? ジン『Expecting(エクスペクティング)』は、サンフランシスコに住む作者アリシアさんが妊娠中の女性のためになればと、自身の“フシギな”妊娠経験をゆるゆるイラストとともに24ページに記録した一冊だ。

綴られているのは、出産アドバイスでも育児への不安でもなく「自宅訪問に来た産婦人科医さんが自分の体重を測ったり、『果物やフルーツを食べてはダメ』という。なんとも不思議な体験だった…」「妊娠しているだけで、赤の他人に『あなたは美しいわ』と褒められる」などなど、妊娠中の独特体験。

それから、「多くのウェブサイトでは、胎児のサイズを果物や野菜でたとえる。20週目はセロリ、28週目はキャベツって。なんで?」といった“謎の基準”や、「最近の親たちは、ベビーシャワー(出産前に妊婦を祝うパーティー)のケーキを青・ピンクにして赤ちゃんの性別をお披露目するんだって」「『生のチーズ・生肉を食べてはいけない』『自転車に乗ってはいけない』。なんで??」と疑問と正直な気持ちを吐き出す。

赤ちゃんいらっしゃい、ハッピー! 育児が不安…、などではなくて、「赤ちゃんを押し出したときは、空が裂けたようだった。一瞬、世界がパカァと開いたかのような?」とアリシアさん独特のレポがおもしろい。「妊娠前と出産後の私はまったくもって別人のよう。子をもつということは、これまでとは完全に違う人生を歩むということ。不思議なことに、妊娠前はどのように時間を過ごしていたか、覚えていないわ」

高速道路に落ちてた「尿入りペットボトル」の写真集作りました。
そして大御所写真家にも気に入られました。前代未聞の謎ジン

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Image via Ricky Adam

未だかつて見たことがない。でも、よく聞く。「高速道路の路肩には〈尿入りペットボトル〉がよく落ちている」と。高速道路を運転中「トイレに行きたい…でも次のサービスエリアまでまだまだ。ええぃ空きペットボトルにしてしまぇ!」という冷や汗ドライバーたちの置き土産(なの?)。

普通の人なら見つけてもガン無視か、そもそもお茶ではなくおしっこが入っているなんて気づくものなのか。英国の写真家リッキーはすごいぞ、創作のネタにしてしまいました。ちなみに、リッキーは90年代の紛争地区・北アイルランドのパンクシーンをドキュメントした写真家でもある(ネタの振れ幅がすごいな)。

2年間にわたって、英国ロンドンから北部の都市リーズまで約300キロのロードトリップ(長距離の車旅)中、高速道路で遭遇した20本の「尿入りペットボトル」をご丁寧に持ち帰り、プロ仕様の撮影セッティングでパシャ、きちんとリタッチもして写真集に。題名は、ボトルたちを見つけた高速道路の名前『M1』。「ニューヨークの街中で見つけた紙飛行機を20年間集めた芸術家のハリー・スミスに影響を受けたんだ」。いかにも“ロードトリップ”なビジュアルは嫌だったという彼、「でも、拾ってる最中に警察に見つからなくてよかったよ。職質なんてされてたら気まずいからねぇ」。よかった。

驚くことに、英国を代表する大御所写真家マーティン・パーがM1を気に入り、直々に「この狂気さ、好きだ!」ラブコールしたうえ、「この写真集、彼のコレクションの一部になっちゃったよ!」。尿入りペットボトルの写真集が、名だたるテート美術館所蔵の“マーティン・パーコレクション”に仲間入りしてしまったというのだからさらに驚き。このキャリアチャンス、まさに未知との遭遇ってか?

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Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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