長く腰を据えるとどうしても「別に見なくてもいいや」と思ってしまう。今日も明日も多分このままの、自分のいる見飽きた街だ。インドの何気ない日常を写真で綴った「Concorde(コンコード)」、切り取られるのは「ストリートのバーバーショップで髭を剃ってもらうおっさん」や「半壊状態のアパート」。毎号、被写体は“ちょっと退屈”と思われがちな身近な風景ばかり。だが、退屈に見つけるおもしろさこそ地元の住人が逃しがちなたのしみかも、と教えてくれる一冊だ。
「現代人は自分のことに忙しく、日常生活に溢れる美しさを見落としがちです」と、作者でフォトグラファー、インドのハイデラバード在住のキショー。「画面上でモノを見ることが増えた彼らに、紙面上で母国インドの日常にある素晴らしさを発信したい」と、2015年から隔月で世界に向けて自費出版を続ける。タージ・マハルやガンジス川の沐浴を特集する旅行雑誌とは違い、気取らない被写体がリアルで土臭いインドが垣間見える。「インドで生まれ育った僕が、外人目線で世界遺産や観光名所でなく、ローカルの視点から地元を撮っているからね」。大学時代に異国で暮らした経験も、インド愛を一層強くした理由の一つという。そんな彼の毎号のインスピレーションの源は、街を散歩すること。
「インドは“エキゾチックな国“として定評がある。でも10億人以上のローカルにとって、ここはただの日常にすぎない。西洋の方がフォトジェニックな街に見えることもあるけれど、やっぱりインドの魅力は計り知れないんだ」。見慣れた日常も語り尽くされたと思われた場所にも、新たな魅力は発見できる。
All images via Concorde
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine