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  • May 9, 2017
政治でなくテクノロジーが統治する社会。未来都市計画ヴィーナス・プロジェクトの実行者が明かす「地上の楽園」とは?
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平和のために発明したダイナマイトを“濫用”された化学者アルフレッド・ノーベルに、原爆開発計画の主任に“任命”された物理学者ロバート・オッペンハイマー。人類を破壊する“武器”を生み出したのは、図らずも天才科学者たちの頭脳だった。そして彼らは、自分の発明が人命を奪うのを目にし、どうしようもない後悔と罪悪感でいっぱいになったという。

「私たちが恐れるべきなのは、テクノロジーではありません。その“利用方法”なのです」

科学技術・テクノロジーを悪用ではなく有効活用。政治や宗教の代わりにテクノロジーに都市オペレーションを任せ、オートメーション化のもと資源を共有する“平等で平和な世界”を築こうと、いま“現代のダビンチ”と呼ばれる一人の天才が提案する。彼が40年前から指揮をとる未来都市計画が「ザ・ヴィーナス・プロジェクト(The Venus Project)」だ。

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貨幣でなく“資源”が「幸福」を実現?

 フロリダ州郊外ヴィーナスの広大な土地で、現在も遂行中の未来都市計画(詳しくは記事▶︎“現代のダビンチ”が提唱する「お金のいらない世界」を参照)。13歳で学校を辞め、金属部品を眺めては都市開発に役立つと信じていた“現代のダビンチ”、ジャック・フレスコ(Jacque Fresco)氏が推進している。

「戦争や飢餓、貧困、犯罪など“現代にはびこる悪”は、すべてお金とそれを追い求める人間が原因。つまり“貨幣”を撤廃すれば問題は解決する
資源への平等配分が人類の平等を生み出す(=資源ベース経済)
政治でなくテクノロジーやロボットが社会を動かす
 この三つが、そのプロジェクトにおいての軸となるコンセプトだ。

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 これが実現すれば、そんないいことはない。人々が血と汗と涙を流して経験した苦労や困難、試練が解消されるというのだから。とはいえ疑問は残る。たとえば、「感情のないテクノロジーに統治を任せて大丈夫なの?」「物々交換の社会に戻り、若干の貧富の差も出るのでは?」「いずれ個々の能力や特性に差が出て争いが起こるんじゃ?」「労働の報酬はお金でなく、何になる?」。

 それらの問いへの答えと現在のプロジェクト進行状況を探るため、今回HEAPS Magazineはフレスコ氏と40年にわたって共同開発に従事し、研究所で生活をともにする助手のロクサンヌ・メドウズ(Roxanne Meadows)氏に取材した。

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HEAPS(以下、H):本プロジェクトの目的は、現代社会に蔓延する数々の問題を解決することです。そして、その問題の根源は「貨幣制度」にあると。まず、あなた方の“問題”の定義を教えてください。

Roxanne(以下、R):私たちが直面する多くの問題の主な原因は、昔からずっと変わっていません。貧困、戦争、犯罪、貪欲、ホームレス、環境悪化。

アメリカでは、一握りの富裕者がそれ以外の者の富をかき集めても敵わないような財産を持っています。貨幣制度下では、物価を上げるために供給を少なくし、その結果、飢餓や汚職が生まれます。

そして戦争。これが起きるのも、戦争が利益のある“ビジネス”だからです。政治家と癒着した大企業は自らの有益になるよう規則を定めていますし、人々の価値観を決めるメディアだって、業界の一部の層が牛耳っています。

教育については普及していますが、戦争や軍国主義は悪化するばかりです。さらに、人類の将来を左右するような環境危機にも瀕している。

現在、人間の生活向上のために活用すべきテクノロジーは、利益を得るための競争力となってしまっています。テクノロジーをこれらの問題解決に利用したいのです

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H:テクノロジーやロボットが、あなた方の考える未来都市の要ですね。「政治家ではなくセントラルコンピューターが統治する社会」、これは具体的にはどのように科学技術を導入するのでしょう。

R:生活に必要な“決断”のために、さまざまな環境面で導入します。たとえば、水や大気の清潔度を制御したり、生産と流通、交通、ゴミ、エネルギーシステムをコントロールしたり。つまり市の管理をすべてコンピューターが行います。ただし絶対に“人”を規制することはありません

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誰もが同じ距離からアクセスできるように主要な施設は、都市の中心に。危険で非効率的な「車」はなくなり、誰でも便利に迅速に目的地まで行かれる安全な交通手段(設計デザインではモノレールのような電車)が無料で提供される

H:しかし、テクノロジーがコントロールする社会ですと、感情や人情など“人間のソフトな部分”が欠如してしまう可能性も考えられないでしょうか?

R:いえ、テクノロジーは使用方法で“人間味”を持つことができます。人々の安全な移動手段、世界中の人々とのコミュニケーション手段になり、病気を治し、住を与え、温度を調節してくれる。

要は、テクノロジーを「どう使うか」なのです。ロケットは破壊行為にも繋がるし、宇宙に衛星を打ちあげることもできる。ドローンは人々や街を爆破することもできれば物資を運ぶこともできる。ハンマーは人を殺めることもできれば建物を立てることもできる。

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H:次に、未来都市での「労働倫理」についてお聞きします。現代社会では、多くの人がお金のために労働する。貨幣制度のない未来では、人々は何を目的に労働するのでしょう。

R:資源ベース経済における労働のモチベーションは、「人々の幸福」と「環境の保護」です。たとえばキング牧師、彼はお金稼ぎでなく自分の信念を貫くために、公民権運動を率いた。

未来都市での利益(モノの開発や問題解決)は人種、性別、国籍に関係なくすべての人に平等に還元されます。だから労働で誰かを負かす必要もないので、協力が芽生えるのです。幸福というよりは「達成感」がモチベーションでしょうか。

H:ということは、物々交換も存在しない?

R:ありません。資源ベース経済では物々交換も預金も、強制労働もない。モノや労働の交換が存在すれば、必ず他者を出し抜こうとする者が出てくるからです。“料金なし”でモノやサービスが手に入る豊かな未来都市では、そのようなシステムはいりません。

モノは共有します。「図書館」を想像してみるとよいでしょう。中心部にある“アクセスセンター”では楽器や自転車、カメラなどありとあらゆる物資を借りることができる。もちろん医療ケアも無料。
コンセプトは「『許可・面倒な手続き・値札』なしですべて必要なモノを手に入れることができる」ですから。

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H:そのような社会での「教育」はどう変わるのでしょう。また「宗教」は“存在しない”とも?

R:競争でなく“協力”しあう教育になります。特に力を入れるのは、科学知識、そして分析的に思考できる能力。これを早期に養わせます。反対に、貨幣経済を操作してきたような株式や広告、法律、銀行、保険などの学問は不要です。

宗教についてですが、この未来都市で聖職者はいったい何を説くというのでしょう?「貧しき者に食糧を与えよ」「この世で試練を乗り越えよ。そうしたら天国で報われる」とは言えません。貧しき者はいなくなり、この都市が“地上の楽園”となるのですから。

H:その“地上の楽園”実現に向けプロジェクトは進行中ですが、いまの段階を教えてください。

R:これまでジャック(フレスコ氏)は5500の設計デッサンを描き、多くのドキュメンタリーを制作、書籍出版、10の建物を完成させてきました。毎週土曜日には、研究所の見学ツアーとセミナーも行い、101歳になる彼自らが参加者にプロジェクトを紹介しています。最近ではプロジェクトを非営利団体として登録し、さらなる開発に努めています。

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H:ずばり、何年以内にプロジェクト完成を予測していますか? テクノロジーも刻々と進化していきます。

R:具体的に何年とは言いきれません。プロジェクト賛同者の協力にもよるからです。最新のテクノロジーは、CAD(キャド、コンピューター上での設計)の時点で随時、考慮・加味します。

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H:フレスコ氏は未来都市の研究開発に一生を捧げてきました。彼は現代社会をどう見据えているのでしょう。また、彼の先見の眼や科学者・発明家・エンジニアとしての力量を、長きにわたり“右腕”として支えてきたあなたの言葉で教えてください。

R:彼は現代社会には「共存実現のためのシステム」が欠如している、と危惧しています。ですから、人が他者と自然と共存できるために人生の大半を費やしてきました。

そして彼はいつもこう言います。「培った知識を周りの人に広めなさい」。また「この都市設計は現時点での最大限の可能性である。未来の世代には未来の世代の都市計画があるだろう」とも。

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フレスコ氏が大事にするのは「繋がり」。「将来は“愛”に代わり、人々が互いの人生をクリエイティブ、サステナブルに構築していく」と考えている。

 開発者の見解を聞いた後でも賛否両論わかれそうな、ヴィーナス・プロジェクト。そんなユートピアはできるのか? きっとまた貨幣経済に元どおりになるだろう。そんな声も聞こえてきそうだが、重要なのは、「モノの図書館」や「クリーンエネルギー利用」「オートメーション化」など101年生きてきた発明家がとうも昔に考えていたシステムが、着実に現代社会に出現していることではないか。

 さて、現代のダビンチは次世代に“青写真”を残した。私たちはこれを理想論として片付けてしまうのか、あるいは現実論として切り拓いていくのだろうか。

Interview with Roxanne Meadows

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The Venus Project
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All images via The Venus Project
Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine: HEAPS Magazine

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