毎月、生理によって嫌な思いをしているのは女性だけじゃない。
そのことに気づいたのはTHINX(シンクス)、女性のための生理用下着のメーカーだ。
「1960年に男性によってタンポンが開発されてから、革新的な進歩を遂げていなかったのが、生理用品。信じられないでしょ!?」。半世紀にして初の革新的なプロダクト、ナプキンいらずのセクシーでスタイリッシュな生理用下着を開発してきた。
そのTHINXがいま新たにプロダクトを届けるマーケットは、「生理のある男性たち」だ。
普通の下着と見た目は一緒。な、生理中の下着
「女性って毎月に一度、必ず生理がある。その一週間、いつも落ち着かないし、漏れてないかとか、ナプキンの位置も気になるし、キュッとしまったパンツも履けない。デザインもおばちゃんパンツみたいで変だし。いいことなんてないじゃ無い?」
生理だから今日も履いてる!というTHINXの下着を見せてくれた。
「ね、セクシーでしょ!」と黒いレースの下着を覗かせながら悪戯っぽく笑う彼女はMiki Agrawal(ミキ・アグラワル)、THINXの発案者で、最高責任者だ。
ええっ、漏れないの?と思うのも当たり前。ナプキンしなくていい生理パンツってどういうこと?タンポンもしなくていいの?と疑問だらけだと思うので、まずはTHINXのプロダクトから説明しよう。
4層からなっていて、1、2、で水分吸上、抗菌。3の層で吸収、4の層で漏れないようキープ。1、2のおかげで長時間の着用でもさらりとした肌触りを保ってくれて不快感はない。
その日に使用した下着は水で部分洗いをして洗濯機で洗うだけ。ナプキンがいらないから節約にもなるし、環境にもよい。
特筆すべきは徹底された機能性と同じだけ洗練されたデザイン。両方を兼ね備えた同プロダクトは、まさにこれまで存在しなかった生理用品だ。
発売と同時に寄せられた注目と絶賛。現在は他都市でポップアップショップを開催、日本にもネットで取り寄せて愛用している人もいるようだ。
しかし、賞賛と同じだけあったのが「男性からのコメント」。
「生理があるのは女性だけじゃないんです。女性の体を持った男性である僕たちトランス・ジェンダーにも、生理があるんです」
男性用トイレにはナプキン入れが無い
同僚に見られるかもしれないから、ナプキンをカバンに入れておけない。替えに行けないから、漏れないようにと何枚もナプキンを重ねづけするしかない。
生理のある男性もいる、と気づいてからは、彼らのいとまのない悩みに気づくのは難しくなかった。何よりも深刻に寄せられたのは、精神的な苦しみ。男性として生きているのに、纏うスーツや男性服の下に、毎月ナプキンをつけているという事実は、耐えがたい違和感なんだと。
「For Women With Period(生理のある女性たちのために)」から、新たに掲げたのは「For People with Period (生理のあるすべての人のために)」。
THINX(シンクス)が新たに開発し2015年の11月より販売を開始したのは、ナプキンをつける必要のない「ボクサー型」のアンダーウェアだ。
僕たちのようなその中間は、どうしたらいいのかわからないんだ。
Sawyer DeVuyst
「髭を生やして肉体も鍛えて、傍目には、僕は男に見える。でも、その服の一枚下で僕は、毎月に一度ナプキンをつけている。そのたびに僕の男らしさは削がれていっている気がする」。一人のトランス・ジェンダーの言葉だ。
セックスとジェンダーは別物だとされる昨今。しかし、その対極の二つとつき合っていかなくてはならないのがトランス・ジェンダーたちだ。
毎月生理を迎える彼らの、その抱える過ごし辛さと精神的な苦しみを、限りなく小さくしてみせたTHINXの下着。
「トランス・ジェンダーたちの間でも、生理についての相談事はしない。だから、それぞれが一人で悩んできた」と何人ものトランス・ジェンダーが、THINXのプロダクトへの喜びとともに、ミキに打ち明けたそうだ。
いい下着をつければ女があがるとは言ったもので、妥協なき機能性とデザインのTHINXの下着は、ミキの目論見どおり「生理中の女度」を上げてきた。“7日間”でも、普段日のように堂々と、セクシーに。
そのTHINXが今回男性に対して応えたのは、もっとシンプルで、しかし何よりも大切な思いに、じゃないだろうか。ライフスタイルの最も核である、いつでも自分らしくいたい、という思いだ。
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Photos Via THINX
Interview Photos by Kohei Kawashima
Text by Sako Hirano
THINX
https://www.youtube.com/watch?time_continue=4&v=W-MQyta6aLc
THINXの毎下着購入ごとに、布ナプキンの販売を通してアフリカの女性の
生活環境改善を行う団体(AFRIPads)の資金として寄付される。
アフリカでは「10人に一人が、生理が原因で学校に行けない」。
ウガンダだけで見れば二人に一人だ。
理由は「ナプキンが無いから」。ナプキンの変わりにマットレスをちぎったり、
Tシャツやカーテンを破いたり。すぐに漏れてしまうから、学校に行かないのだそうだ。
THINXの下着を一枚購入すると、一人の女の子が布ナプキンを手に入れることができる。
「私たちが下着を変えれば、世界も変わる」。
生理あるすべての人のためにあるTHINXの、掲げるミッションは強い。