あぶない“ハイ運転”。マリファナ合法化、「はぁ〜」で取り締まるのは飲酒運転だけじゃない?検出器スタートアップも続々登場

あまり知られていない“ハイ運転”の危険性。世界各地でマリファナが一般社会に浸透しているいまだから、考えなくてはならない。
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2012年に、米国で初めて嗜好用大麻が合法化されてから7年。全米あわせて33の州で医療用大麻が合法化、12つの州でも嗜好用大麻が合法化された。イギリス、韓国、タイでも医療用が解禁になるなど、世界規模で“マリファナ容認”の風潮が漂っている。

このムードに背中をおされるようにして激増しているのが、酔っ払い運転ならぬ「“ハイ運転”による事故」だ。今後さらに増えると予測されるハイ運転を未然に防ぎ取り締まるため、「マリファナ呼気検出器」を開発するスタートアップも続々登場している。

酔っ払い運転より認識低し、マリファナ合法化とともに増える“ハイ運転”と検出器

「飲酒運転」は、誰もが知っている“絶対にしてはいけないこと”の一つ。一方で、マリファナが合法化する米国でもなかなか認識が進まずにいるのが、「ハイになった状態で運転する、“ハイ運転”」だ。自動車死亡事故の約25パーセントに飲酒運転者が関与している米国では、運転に関する調査で、約8割が飲酒運転を「深刻な問題」と回答しているのに対し、マリファナを吸い“ハイ”になった状態で運転することに対しては、なんと約7割が「あまり問題でない」と回答している。

「マリファナ=チル、心を落ちつかせる」というイメージが先行してなのか、深刻視する人が少ないのが現状のよう。しかし、現実はというと、自動車事故で死亡した44パーセントの運転者が、マリファナ、もしくはオピオイド(がんの痛みなどに使用される鎮痛薬)、またはそのどちらも摂取していることが判明(2016年)。10年前は28パーセントだったというから、12年の合法化後にその数は確実に増加している。特に嗜好用大麻が合法のコロラド・ネバダ・オレゴン・ワシントンのなかには、12年以降の自動車事故が6パーセント増えた州も。またマリファナを吸った場合、事故にあう確率は2倍ともいわれている。ここまできたら「マリファナ合法化と交通事故の増加には、まったく関係性がありません」は通用しない。


Image via Hound Labs

 嗜好用大麻合法化のさらなる拡大を目前にし、ハイ運転を未然に防ごうと、スタートアップが動きだした。たとえば、カナダのスタートアップ「SannTek(サンテック)」は、今夏「カンナビス・ブリーザライザー」を開発。飲酒運転の呼気検出器「ブリーザライザー」のマリファナ版だ。運転者が検出器に息を吹きかけると、検出器は呼気中の大麻の分子を検出。ハイにさせる有効成分(THC)が体内に存在しているか、どれほどの量を吸ったのかを割りだしてくれる。

 マリファナフレンドリーなカリフォルニア発のスタートアップ「Hound Labs(ハウンドラボ)」も、マリファナ検出器を開発。同社ではマリファナに関する調査を進めており、常用・一時的な使用に関係なく、摂取から3時間を経過しても、THC呼気濃度はピーク時と比べてほぼ変わらなかったと発表。つまり「マリファナを吸ったかどうか」は3時間以内であれば呼気検査で確実に把握できるということだ。さらにピッツバーグ大学の研究チームも、呼気によってTHCの濃度を割り出す箱型のデバイスを発表。デバイス内には「人間の髪の毛のサイズの10万分の1」という極小カーボンナノチューブが搭載されており、THCの存在の有無を教えてくれるという。


「ハウンドラボ」のマリファナ検出器。

実験の様子。
Image via Hound Labs

どこからが取り締まり対象に?マリファナ=セルフケア時代の複雑なルール決め

 開発が進むマリファナ検出器だが、これにより「マリファナ陽性」という結果が出たら、どうなるの? 捕まるの? マリファナが合法なら、別に吸ってたって問題ないじゃん、と思うなかれ。米国では「ハイ運転」は違法行為となっている。3人に1人のティーン、4人に1人の親が「マリファナ運転は違法」だとは知らないらしい。

 もとより米国では、飲酒運転だけでなく薬物の影響下での運転も全州で禁じられており、これまでは尿検査、血液検査、あるいは唾液検査で取り締まりをおこなっていた。しかし、州によって合法・違法状況が異なるいま、「ハイ運転」を取り締まる包括的な法律はまだ制定されていない。たとえば、運転者の血中に5ng/ml(ナノグラム・パー・ミリリットル)以上のTHCが確認されれば違法と厳密な規定を指定している州もあれば、体内に少しでもTHCが認められれば違法となる州も。マリファナの成分が体内から完全に抜けるまでタイムラグがあることや(血液からは2週間、尿からは1ヶ月)、女性の方が男性よりマリファナの代謝に時間がかかるという調査結果を考慮すると、取り締まりのルール化は複雑だろう。
 マリファナは、もはや“セルフケア”の一部にもなるほど、ポジティブに利用されている。メンタルを癒すためのリラクゼーション目的で一服したり、マリファナ×ヨガ「ガンジャ・ヨガ」でマインドフルネスを追求したり。マリファナを吸うことが多くの人の日常の一部になっていく時代だからこそ、安全を守るための「ダメ」の線引きは、早い方がいい。

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Eyecatch Image by Midori Hongo
Text by Haruka Shibata
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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