米国初〈大麻クレジットカード〉がついに登場。断固・現金主義だった業界の異変、大麻×シティカルチャーへの影響は? 

いくらクレジットカード大国アメリカでも、大麻はカードで買えなかったのね。いつもニコニコ現金払いが鉄則だったもんな。
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「これまで“大麻業界”は圧倒的に現金ベースでした」。近年、時代の前進的なカルチャーで世界規模で急成長中のビジネス、大麻。なのに、取引はいまだ時流に逆らう断固・現金主義だった。送金アプリなど現代人の買い物がどんどんデジタルに簡略化する昨今、遅れを取っていた大麻業界にも明るい兆しが。「大麻用クレジットカード」が登場した。

現金取引に終止符? 大麻用クレジットカード、登場。

 米国では、現在33州で医療用が、11州とコロンビア特別区(ワシントンD.C.)で嗜好用の大麻が合法的に購入可能だ。昨年の世界市場規模は約1兆4,500億円(138億ドル)、2025年末までには約7兆円(663億ドル)に達するとの予想。破竹の勢いで成長し膨大な金が動く「大麻」業界だが、驚くなかれ、合法な州でも大麻の購入に「クレジットカードでの支払い」は認められてこなかった。全米で初めてカリフォルニア州での医療用大麻が合法化されてから23年経ったいまも、取引は現金でおこなわれている。

「なんでもピッ」で済ませるカード社会の米国だが、大麻となると話は別らしい。クレジットカード二大巨頭のビザとマスターカードは、大麻購入の支払い方法として認めておらず、銀行も大麻関連企業のビジネス口座開設を拒否している。というのも、一部の州の州法で大麻は合法になったとはいえ、国全体の連邦法では未だ違法だから。米国の金融機関は連邦政府の監督下にあるため、たやすく大麻関連企業へサービスを提供できない。カード支払いが可能な大麻薬局も存在するが、こちらは完全に裏ルート*。カード会社にバレれば、罰金や口座凍結などの制裁が薬局に課せられるというリスクを負っている。

 この状況に、大麻関連企業もただただ黙っていたわけではない。以前紹介したスタートアップ「パラゴンコイン」 は仮想通貨トークンを発行、また、コロラド州のスタートアップ「キャンペイ」は大麻業界に特化した国内初のデビットカードでの決済アプリを開発。両社共に、現金取引を踏まない大麻決済方法を生み出してきた。

*クレジットカード会社の加盟店には、事業内容を取扱商品やサービスを提供するための業種コード(加盟店カテゴリコード)があるのだが、大麻関連企業にはこのコードの所持が認められていない。したがってクレジット支払いをおこなっている大麻関連企業は、故意的に別コードを偽装して使用している可能性がある。


(出典:Columbia Care Official Website

 この流れのなかで、今年6月についに全米初の“大麻専用クレジットカード”が登場。その名も「ア・カンナビス・クレジット・カード」。発行したのは、医療用大麻の会社「Columbia Care(コロンビア・ケア)」だ。コロンビア・ケアが展開する大麻薬局で使用可能で、店舗での購入だけでなく同社のデリバリー注文やオンラインショッピングにも対応している。いままで現金でしかおこなうことができなかった取引が、クレジットカードでも正式に可能となった。

 現在クレジットカードを使用できるのは、コロンビア・ケアに登録している患者当人と世話人や介護・介助者など関係者のみだが、「今後、大麻業界でクレジットカード支払いのオプションをより広く適用するため、他企業との提携も検討しています」とCEOのニコラス氏は前傾姿勢。昨年末に同社のニューヨーク店で試験的にカードを導入した際、クレジットカードの利用は現金払いよりも18パーセント多く、顧客のリピート率とデリバリーの利用率も増加したとのこと。今後はカードの利用を全米の店舗に拡大させ、年末までに15地域の全店舗での利用を可能にする予定だ。

現金主義のウィードデリバリー文化はどうなるよ?

 これから先、大麻のクレジットカード決済が一般化すれば、当然メリットも増える。大麻関連企業は多額の現金を保管する必要がないし、取引記録によりお金の流れが把握できるからビジネスの透明性も高まる。一方消費者は多額の現金を持ち歩く必要がなくなるし、現金が手元になくても楽々購入可能だ(ATMで引き下ろせばいい話なのだが、わざわざ手数料を支払うのもね)。

 でも、その便宜性の代わりに失われるものといったら…。いつもニコニコ現金払い、電話一本でバイクメッセンジャーがブツを届ける「デリバリー文化」もその一つだろう。「それじゃ、A4サイズの書類も入らないだろ?」という小ぶりなナップサックを背負い(中身は大麻)、ピストバイクにまたがったお兄ちゃんたちが自転車でしゅたたー。緑のデリバリーは、立派なシティのアングラカルチャーといえる。「別にどーでもいいよ、そんなの」と言うかもしれないが、4年ものあいだ大麻シーンを追ってきたヒープスとしては、なにやらグッとくるものがある。

 ブツを背負ったご機嫌な配達人と街角で出くわしたり、現金と引き換えにブツをささっと受け取る現場をアパートの玄関で目撃することも減っていくだろう。「俺は、僕は、私は、わしは、アタシは、“このデリバリーガイ”」という御用達の配達人がいる、地域密着型のデリバリーにしかない醍醐味というか、シティの面々がいて場景があった。

 一日100ドルほど稼げることから、カフェのバリスタなどパートタイムの仕事だけでは食っていけない若者たちの副業としてもウィードデリバリーは重要な役割を果たしていた。「カードでピッ」ができれば便利なのはごもっともだし、ここまでクレジットカードのメリットをひたすら書いておいてなんだが、オールドスクールな現金主義のデリバリー文化が徐々に消滅していく日がいつか来るかもしれないと思うと、大麻もここ数年でずいぶん現代の明るいところまでやってきたのだなあ、としみじみ。

Eyecatch Image by Haruka Shibata
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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